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144話:決着から条件が始まりそうです()

 「なに?」


 

 ペネムエを居合斬りで一刀両断にするためソルを振った蓮。

 だがその刃はペネムエに届く事は無かった。



 「これは……」



 刃を止めていたのは銀色のスライムのような物体。

 それが盾のような形に変化し攻撃を受けペネムエを護ったのだ。


 この場にいる全員が何が起こったのか理解が追い付いていなかった。



 「蓮、周りを見たまえ!!」



 このドクターの呼びかけで周りを見たのは名指しされた蓮だけでない。

 翔矢もペネムエも見渡した。

 そこにあったのは、辺り一面銀色の液体がが意思を持ったようにブヨブヨと動いている異様な光景だった。



 「これは……魔物か?」


 「メタリカルスライム……であれば可愛らしい目があるはずです」


 「これはただの液体金属だよ!!

 恐らく宮本翔矢が新たに手に入れた力の正体だ。

 自分の体を金属のように硬化させつつ、一定範囲内の金属を支配する能力のようだぁ!!

 この辺の資材は金属ばかりだったからね、それがとりあえず液体金属に変化し、そこの銀髪を護ったんだろう」



 この状況をハイテンションで分析したドクター。

 液体金属に近づき、スマホで何枚も撮影している。



 「高度な分析力……北風エネルギーは科学で魔法をそこまで解明できるのですか……」



 ドクターの分析力に圧倒されるペネムエ。

 だが何故か漣は呆れていた。



 「敵が自分の力に気が付いていない状況で解説する必要があったのか?」


 「あっ!!」


 「……そっか!!」



 ドクターの“しまった”という反応の数秒後に翔矢も気が付いた。



 「金属を自由に……こういう事か?」



 翔矢は自分の右手に纏うように液体金属を集めた。

 やがて液体金属はロボットの手のような形に固まった。



 「翔矢様、かっこいいです!!」


 「だろ!?」



 ペネムエは目を輝かせ翔矢も得意気にしている。



 「それがどうした? 体が金属のように重くなっている状態で武装しても身動きが取れなくなるだけだぞ?」


 「それは……こうするんだよ!!

 唸れ鉄の拳【ロケット・ナックル】」 



 翔矢が重い右手を何とか振ると鉄で出来た右手は漣の元へと真っすぐ向かって飛んでいった。

 その速度は、上手い人が投げたドッチボールの球くらいはあった。



 「ぐっ……」



 ソルの刃でその拳を受け止めたが、斬れる事は無く、漣の体はどんどん押されて行った。



 「ふむふむ、かなりの量の鉄が凝縮されて作られているようだ。

 さっきの抜刀でそるの魔力を相当消耗してしまったし斬るのは無理だろうねぇ」



 相変わらず、焦る事は無く、ただただハイテンションで分析を続けるドクター。



 「あんたらがペネちゃんを、どう思おうが勝手だ!!

 だけど俺にとっては、もう大事な家族だ!!

 出会う前には戻れない!! だから……俺にとっての平和を守るんだ!!」



 翔矢の心に反応するように、鉄の拳の勢いはどんどんと強くなっていく。



 「俺が……俺たちが守るのは“この世界の平和”だ!!

 そんな個人単位のちっぽけなモノになど負けはしない!!」



 漣の耳にドクターの“斬る事はできない”という警告は聞こえてたはずだ。

 それでも彼は翔矢の攻撃に必死でくらいついた。

 2人の魔力のエネルギーはどんどんと強くなった。



 「おぉ!! 確かに僕の開発したシステムは使用者の心に反応するようには作ってあるが……

 ここまでのエネルギーへと変換されるとは素晴らしい!!

 僕の発明が天才すぎるのか漣の心の強さか……

 そして鈴君や宮本翔矢が手に入れた“大魔王マモン”とか言うやつの異物……

 これまた同じく使用者の心にはんのうするようだねぇ!!」



 目と鼻の先で、何が起こるかもわからない莫大なエネルギーが発生しているが、ドクターのテンションは変わらない。

 この現象に心を奪われ身の危険など全く気にしていない。


 だがペネムエと鈴は違った。

 2人にとって大事な人の身が危険にさらされている。

 それだけで体が勝手に動いた。



 「翔矢様!! 引いてください!! これ以上は危険です!!」


 「今、ここで倒さないと……こいつらは俺たちの平和をまた奪いに来る!!」



 必死に翔矢を引っ張り攻撃を止めさせようとするが、翔矢の目は、いつもの優しい目では無かった。

 自分の為に戦ってくれていると分かっているペネムエですら恐怖を感じてしまう程に血走っていた。


 

 「蓮!! 今回はもう引こうよ!!

 銀髪は氷のバリアで私たちを瓦礫から守ってくれたんだよ?

 “いずれ”倒すにしても、後回しにしようよ!!」


 

 鈴も同じく漣に呼び掛けるが彼の表情もまた険しいままだった。



 「今、蓮が戦えなくなったら……

 私欲にまみれた能力者とか、本当に危ない奴が出てきたらどうするの!!」



 普段はボソボソと話す鈴だが、今回ばかりはハッキリと大きな声で呼びかけている。

 それでも連は、この鉄の拳さえ振り払えば、力がある限りペネムエに斬りかかっていくだろう。


 それを翔矢も感覚で分かっているので、攻撃を緩めようとはしない。

 この戦いは、どちらかが倒れるまで終わらないだろう。



 「漣のわからずや!! こうなったら……」



 鈴はクラッシュ・ダマーを構えて翔矢の方に視線を移した。

 今の翔矢はロケット・ナックルと漣に集中していて、彼女の動きに気が付かない。



 「まさか……やめて下さい!!

 翔矢様だけは傷付けないで……」



 ペネムエが鈴を止めようと動こうとした瞬間、彼女の頭に自分が傷つくたびに悲しそうな表情になる翔矢の事が浮かんだ。

 翔矢は今も、自分の為に怒って戦ってくれている。

 自分を犠牲に大事な人を護る、そんな方法では、本当の意味では誰も救われない。

 それを今のペネムエは知っていた。


 だが今この状況を打開する策は浮かばない。

 とりあえずは、武器を構え動く鈴を止めるしかない。



 ペネムエが思考している間に鈴は既に事を起こしていた。

 これは間に合わなかったという訳ではない。


 鈴の狙いは翔矢ではなく漣の持つソルと衝突しているロケット・ナックルだった。

 クラッシュ・ダマーのハンマーを振りかざすと、金属の衝突音と共に、ロケット・ナックルは砕け散った。



 「鈴……」



 宙を舞う砕け散った鉄の球を見ながら漣は正気に戻った。



 「この2人は……倒すのは最後で良いと思う」



 その隙を見逃さず鈴は漣に抱き着いた。

 彼を止めるためか、体が勝手に動いたのかは自分にも分からない。



 「僕も、今日の所は引くのが得策だと思うよ。

 少なくとも……この場では彼に勝ち目は無さそうだからね」



 ドクターは最初こそ、いつものハイテンションだったが、二言目は余裕がなくなっていた。

 鈴が粉砕し無数の鉄の球となったロケット・ナックルは、気が付くと全て銃弾の形に変化していた。

 その銃弾は3人を取り囲むように浮かんでおり今のも向かってきそうだ。



 「これは……」


 「いつのまに……」



 目の前のロケット・ナックルに集中していた漣も、それを破壊して安心していた鈴もこれには気が付かなかった。



 「今日は降参しないかい?」


 「鉄を操る能力……鉄だらけのこの場では無敵の能力という訳か……」


 「砕いてもキリがなさそうね」



 北風エネルギーの意見は、この場は撤退でまとまった。

 しかし翔矢から殺気は消えていなかった。



 「翔矢様……」



 ペネムエは翔矢のTシャツの袖をギュッと握ったまま動けない。

 いつも優しい翔矢が、ここまでの殺気を放っている。

 これは自分の為てあり、自分のせい。

 その複雑な気持ちのせいで、これ以上何もできなかった。



 「こいつらは強い、今仕留めておかないと点々次も勝てる保証はない。

 今だって鉄が大量にあるから追いつめることが出来ただけだ!!」



 もう、いつこの無数の銃弾が北風エネルギに向かって放たれてもおかしくはない。

 漣と鈴は武器を構えるが、この数への対処は流石に不可能だろう。



 「翔矢様……今の平和を守るために戦うって仰いましたよね?

 だったら、これ以上は止めましょう?」


 「なんで?」



 殺気は消えていないが、一瞬だけいつもの翔矢に戻った気がした。



 「ここで彼らを倒してしまうと、東京で起こっている事件に対応できる者がいなくなってしまいます。

 それに……どんな理由であれ、翔矢様が怖い顔しているの……見たくありません」



 今にも泣きだしそうなペネムエの表情に気が付き、翔矢は、ようやく正気に戻った。



 「ペネちゃん……」



 深呼吸をした翔矢は、漣と鈴の方に顔を向けた。



 「だったら……条件が一つ」



 その言葉に2人は息を飲んだ。



 「こっから、スカイタワーって、どうやって行けば近い?」



 「「はっ?」」



 漣と鈴は拍子抜けし、ドクターは大爆笑。

 安心してしまったからか、ペネムエも堪えきれなくなりクスクスと噴き出してしまったのだった。

 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練って執筆しております。


 少しでも続きが気になったらブクマ登録して頂けると励みになります。


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