140話:高速から拘束が始まりそうです
「さすがぺネちゃん、敵の隙を付く素晴らしい戦術だ」
「恐れ入ります翔矢様」
ペネムエが蓮のソルの鞘を凍らせて抜けなくしたのを遠目にだが確認して感心する翔矢。
その言葉にペネムエはデレデレと顔を赤くしていた。
「これで勝ったつもりか? 戻れソル」
蓮の言葉に反応してソルはネクタイピンの中に吸い込まれた。
「まさか……」
嫌な予感がしたペネムエはゴクリと息を飲む。
【リアライズ】
その呪文を唱えると再び、鬼殺剣ソルは姿を現す。
「こうして一度戻してしまえば元通りだ」
「あの……そうは見えないのですが?」
「なに? ドクター!! どうなっている?」
蓮は一度収納して出し直せば元の状態に戻ると考えたようだが、実際にやってみると凍ったままで出現した。
彼は問い詰めると同時にドクターをギロリと睨みつける。
「それは、あくまで持ち歩くための機能だよ
一瞬でリカバリーなんて技術、現代では不可能だ!!」
「くっ……なんという事だ」
蓮は落胆し肩を落とした。
「あの……こちらとしては戦いたくないので、終わりにして頂けるとありがたいのですが」
ペネムエは見かねてしまったのか、憐れむように声をかけた。
「いや……まだ終わりではない!!」
蓮は、鞘に収まったままのソルを振り回し、再びペネムエに襲い掛かる。
「なっ……」
ブリューナクで何とか受け止めたものの、彼の剣の技術は本物であり、徐々に押され初めていた。
***
「ぺネちゃん押されるとか、あのおっさん本当に人間かよ」
鈴の攻撃をかわし続けながら、翔矢はペネムエの様子を時折観察していた。
「おっさんは酷い……蓮はまだ29歳」
「君と1周り離れてるんですが?」
「そう言われるとそうね……」
鈴は考え込み手が止まってしまった。
「君は、恋人にするなら、歳の差はどれくらいまで大丈夫?」
「え? あんま考えたことないけど上も下も5歳くらいかな?」
「やっぱり、それくらいの人が多いのかな?
貴重な意見、ありがとう」
鈴が神妙な顔つきになりながらも攻撃を再開する。
「お礼を言いながら攻撃するなよ!!」
振り下ろされたハンマーを交わしながらも不満はキッチリ伝える翔矢。
(上も下も5歳まで……人間換算なら、わたくしは恋人対象!!
あっ……でもユリア様も入ってしまいます)
蓮の攻撃を受けながらも、翔矢の言葉をハッキリと聞いていたペネムエは、戦闘中にも関わらず浮かれた気分になっていた。
「どうした? 動きが鈍っているぞ?」
その隙を蓮は見逃す事無く、ペネムエの腹に一撃を加える。
ソルは鞘から抜けなくなっているものの、打撃としては強烈な一撃だった。
「くっ……」
体勢はギリギリで保ったが、余裕は全くなくなってしまう。
「ぺネちゃん!! くっそ、やっぱり氷使いだと東京の暑さで戦うのはキツイのか?」
ペネムエの動きが鈍くなったのは、自分のせいだとは微塵も考えない翔矢。
だが、彼も余力がある訳ではない。
「あのおっさんとタイマンで戦うのは厳しそうだ……
何とか加勢しないと……」
「考えが口に出ているけど、君は蓮どころか私にも勝てないわよ?」
「あぁ正直、女の子を殴れないとか言い訳を無しにしても厳しいな」
「降参して武器を渡すなら見逃してあげるけど」
「それは助かるけど、ぺネちゃんはどうなるの?」
「あれは人類の脅威だもの、確実に始末するわ」
「だったら降参はできねぇな」
翔矢は鈴から距離を取り、赤メリに埋め込まれた青い魔法石に手を触れた。
「新しい力を見せてやるぜ!!」
「翔矢様!! あれは体への負担が……」
「シフィンが、10秒くらいなら極度の過労で済むって言ってたし大丈夫!!
あれで殴られるよりはダメージは少ないはず」
少し距離のあるペネムエと声を張り会話をしながら、右手にはめている赤メリを左手の平に押し当てる。
すると上空に魔法陣が浮かび、中にはユニコーン達が自由に駆け回る世界が写っている。
【コネクト:アクセル】
その魔法陣がゆっくりと下がりやがて消滅すると、青いオーラが翔矢の体を包んだ。
「消えた……?」
鈴は青いオーラ姿の翔矢の姿を一瞬だけ確認したが、すぐに視界からは消えてしまっていた。
「いえ……超高速で動いているだけ、落ち着けば居場所は分かるわ!!」
クラッシュダマーの玉を、出来るだけ早く飛ばしたが、翔矢には当たらず壁にクレーターが出来るのみだった。
「くっ……」
「危なっ!! 見えない速度で動いてるのに何で反応できるんだよ!!」
と言っている翔矢の声は聞こえるのだが、以前姿は鈴の目では確認できなかった。
「時間が無いから、さっさと終わらせてやるぜ」
「そんな速さで動けても、殴れないなら怖くわ……」
そこまで言いかけた所で、鈴は自分が身動きが取れなくなってきている事に気が付いた。
資材置き場にあった紐で体が巻きつけられているのだ。
「この……やめ……」
抵抗しようとしても、すでに女の力ではどうもできないくらいに縛られてしまっている。
「そろそろ時間切れか……まぁ充分だろ!!」
「お前……顔面殴られた方がマシだったわ」
「あっ……ごめん」
アクセルを解除して、彼女の事を落ち着いて見ると、大人向けのビデオでしか見ないような結び方になっていた。
翔矢自身も、なんでこんな結び方になったのかは分からない。
制限時間を気にして、無我夢中で結んでいたら、こうなってしまっていたのだ。
「まぁスカートじゃないし隊服だしいいわ」
「いいの? じゃあ俺、あっち行くから!! 本当にごめん!!」
「あっ、そういう意味じゃない!!」
鈴がそう叫んだ頃には、翔矢は蓮と交戦中のペネムエの元に向かってしまっていた。
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