137話:地下鉄から迷子が始まりそうです()
ユリアの部屋を後にした翔矢・ペネムエ・リールの3人。
目的地の東京スカイタワーと都立博物館は幸い最寄駅が同じだった。
ユリアの住むアパートの近くの駅から乗り継ぎも無かったので、東京初体験の翔矢も迷うことなく、駅に到着する事が出来た。
「電車の中、真っ暗でしたね。
景色とか楽しみたかったのですが」
「地下鉄だからね、まぁ俺も初めて乗ったんだけど」
「どっちも、駅を出たらすぐあるって言ってたわね」
事前にユリアから簡単な道順を聞いていたので3人はキョロキョロと出口を探す。
「「「あった!!」」」
出口はすぐに発見したのだが、3人はそれぞれ別方向を指差していた。
「リールは少し方向音痴ですからね……出口はこっちです」
「は? 上に上る階段はこれでしょ?」
「ははは、2人とも、やっぱり天使なんだな、こっちに出口って書いてるよ?」
全員が自分の指差してる方向こそが出口だと主張する。
しかし、基本的に仲は良いので、口論にはならない。
「何かお困りでしょうか?」
ペネムエとリールが、海外からの観光客にでも見えたのか、駅員が声を掛けてきてくれた。
「えっと、スカイタワーと都立博物館に行きてぇんだども」
「翔矢様……訛ってますよ?」
「あんた、普段は標準語でしょうが……」
駅員に尋ねた翔矢の口調は、緊張のせいなのか酷い東北訛りになってしまった。
しかし、駅員はしっかり聞き取れたようだった。
「スカイタワーでしたら18番出口、都立博物館は23番出口からが近いですよ」
「ありがとうござい……18番?」
「え? 23番?」
なぜ駅の出口が、そんなに多いのかと疑問に思ったが、ここは堪えて駅員に礼を言った。
「ふっ結論から言うと、俺達の指差した出口は全てハズレだったという訳だ」
「そんな意味深な雰囲気で言われてもねぇ」
「意味深な翔矢様も素敵です!!」
「まぁね!!」
出口が分かった事で多少は心の余裕ができた。
しかし、リールはある疑問が確信に変わっていた。
(マズイ……翔矢が東京に来た途端にポンコツに……
ペネムエは、基本しっかりしてるけど、翔矢の前だとデレデレでだらしないのよね。
この2人で大丈夫かな?)
親友の恋路を応援しようと、自分は1人で行動する事にしたが、今の2人を大都会に放つのが不安になってきたリール。
そんな彼女に追いうちが加わってしまう。
「こっから別行動になるけど、都会だからな。
リールはナンパとか気をつけろよ!!」
「うん……心配してくれて、ありがと。
あんたたちも、くれぐれも気を付けてね」
「2人でいれば、ナンパは大丈夫だろ?」
「そうじゃなくて……まぁいいわ」
これ以上は何も言う気が起きなかったリール。
とりあえず3時間後に待ち合わせをして、ここから別行動となった。
***
「おっスカイタワー見えた!!」
翔矢とペネムエが、駅員から聞いた通り18番出口から外に出るとたくさんのビルが見えた。
どれも地元では見ないような高さだが、やはりスカイタワーは一際高い。
「わぁぁぁ、あれがスカイタワーですか!!
情報番組などで見た事がありましたが近くで見ると圧巻です」
「俺も、もちろん初めてだなぁ、634mあるんだっけ」
「100m走とかでも疲れますのに」
「それな!!」
2人はそんな会話をしながら、目の前に見えている東京スカイタワーへ向かったのだが。
「あれ?」
「おかしいですね……」
確かに東京スカイタワーは見えているのに、中々距離は縮まらない。
それどころか、どんどん人気の無い所に来てしまっている。
「確かにスカイタワーの方を見て向かってるはずなのに」
「翔矢様、少し周りを見て見てください」
「ん? これって……」
急に深刻なトーンで話すペネムエに言われた通り、見渡してみると、ここには工事の資材などが置かれたりしている。
だが問題はそこではない。
その資材に新円の穴がいくつも開いているのだ。
この光景に2人は覚えがあった。
「えぇ、以前にSNSで見つけた東京での奇妙な殺人事件。
その現場に迷い込んでしまったようです」
「マジか……どうする?」
「放って置くことはできませんが、事件は1週間も前。
見知らぬ土地で犯人を特定できるとは思えません。
簡単な調査だけするのが得策ですかね」
「そっか、俺がいても邪魔になるだけだし、スマホでスカイタワーへの道を調べておくかな」
「よろしくお願いいたします!!」
ボロボロだが座れそうなベンチがあったので翔矢は座ってスマホを確認した。
(リールにも教えた方が良いのかな?
いや、こういうのはペネちゃんの方が得意だよな?
この場所も説明できないし事後報告でいいか)
メッセージアプリを開こうとする手を止めて地図アプリを開いた。
東京スカイタワーは超メジャーな観光地なのですぐに調べる事ができた。
「あぁ目の前に見えるからって闇雲に進んでもダメか。
結構曲がるところあったんだな。
って言っても大きい道だから何とかなるか?」
もう迷わないと誓った翔矢は、道順をしっかり確認した。
スマホの画面に集中していると聞きなれない声が聞こえた。
「犯人は現場に戻るという事か?」
「ん?」
声の方を見ると3人組がペネムエの方に向かっていた。
1人はスーツ姿の20代後半くらいの男。
もう1人は白衣を着た同じく20代後半くらいの男。
最後の1人は、翔矢もペネムエも見覚えがあった。
「あなたは……」
「雑賀鈴!!」
彼女がいるという事は、残りの2人も北風エネルギーの社員だろう。
「ヘイヘイ!! 2人とも画面越しでは話したことはあるが……
ちゃんと顔を合わせるのは初めてだね?
私は北風エネルギーの技術開発担当、みんなからドクターと呼ばれているよ」
白衣の男の自己紹介で翔矢も思い出した。
「ペネちゃんに酷い事した奴……」
翔矢は怒りで無意識に赤メリをバックから取り出していた。
「ドクターの研究は人類の希望だ。
失う訳には行かない!!
【リアライズ】」
スーツの男の声に反応し、彼のネクタイピンが日本刀へと変わった。
「あんたも、モニター越しで話したな。
見た所、リーダーか?」
「俺は蓮、対ウィザリアン研究の主任をしている。
この世界の人間だろうが、人類の敵に容赦はしない!!」
蓮は鞘から日本刀を抜き翔矢に襲い掛かる。
「ペネちゃんは敵じゃないっての!!
【コネクト:ファイター】」
翔矢の体を赤いオーラが包み込む。
「翔矢様!!」
ペネムエも加勢しようと槍を構えるが、目の前に巨大なけん玉の玉が落ちてきた。
反射的に後ろに飛び交わした。
攻撃の主は見なくても分かる。
「今度こそ、あなたは倒すわ!!」
「雑賀……鈴!!」
鈴は以前の敗北を晴らすためけん玉を振るい、ペネムエは彼女に愛する者を傷付けられたのを思い出す。
「さて、思わぬ戦闘だが貴重なデータが取れそうだ“あれ”の開発もあと1歩だからね」
ドクターは、2組の戦闘を笑顔でスマホで撮影していた。
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