134話:思い出の写真から涙が始まりそうです()
バーベキューが終わった後も、一行は日が暮れるまで遊んだ。
長い時間遊んでいたのに楽しい時間は、あっという間で一瞬に感じられた。
「本日は、お誘いいただき、ありがとうございましたー!!」
当初、参加する予定はなかったモヒカンは深々と頭を下げた。
「こちらこそボート押してくれたりして、頼もしかったよぉ」
ユリアの言葉にモヒカンの顔は真っ赤になった。
すでに全員、水着から服に着替えているが、水着のままだったら体まで赤くなっているのが見えていたかもしれない。
「また、みんなで遊びたいなぁ」
「その時は、料理は外食にしましょうね?」
「リールちゃん酷い!!」
「そうですよリール!! 悠奈様は、調理の場に踏み入れないように監視すれば済みます」
「ペネムエちゃんは、もっと酷い!!」
悠奈以外は笑いが堪えきれなくなり高笑いする。
「ってか遅くなったけど、みんな帰り大丈夫か?」
「自分は1人で問題ないっす!!」
「おっおう」
女性陣に気を使った翔矢だったが、それに真っ先に返事をしたのはモヒカンだった。
一応翔矢は突っ込まずに返事をする。
「私は、お父さん迎えに来てくれるって!!」
「私は、あれがあるから大丈夫」
「あれですね」
「あれって何!?」
ユリアが言っているのは、自宅までワープ出来る鍵の事だと翔矢は察したが、悠奈は興味を持ってしまった。
さすがに、これは説明する訳にはいけない。
ここは強引に話を進めるしかないと翔矢は判断した。
「リールはどうすんだ?」
「まぁボッチで帰るしかないわね」
「送ってくぞ?」
「そう? ありがと、バイトしてる喫茶店の2階に部屋を借りてるの」
「わたくしも、この世界でのリールの家は知らなかったので楽しみです!!」
「え? ウチに寄ってくの? 別にいいけど遊ぶ物とか何もないわよ?」
家に上がられるのが嫌なわけではないが、何となく身構えてしまうリール。
「ぺネちゃん、今日は遅くなるし、帰りは1人になっちゃうから、また今度にしなさい」
「え? 翔矢様はリールの家に入りたくないのですか?」
「やっぱり私が、この世界に最初に来た理由を根に持ってたり……」
1人暮らしの女性の家に上がりこむのはマズイというか、入るという概念が無いが故の発言だったのだが、そうは受け取ってもらえなかったようだ。
特にリールは残念そうにしている。
「えっと……文化の違いか?
日本人? いや外国人も? 恋人以外の異性の家ってか部屋には、あまり入らないぞ?
小学校の頃とかなら、まぁあるけど」
「友達同士でもダメなのは少し寂しいですね」
「ってか、私は、あんたの部屋に入った事ある気が……」
「わたくしは寝床を共にしておりますが?」
「まぁ絶対ダメって訳じゃないから……
今日は遅いから送るだけ。
そんなに言うなら今度行けたら行くわ」
絶対に行かないというのも失礼な空気になってしまったので、日本人の伝家の宝刀でお茶を濁す事にした翔矢。
「ちょっと!! それ絶対に遊びに来ない時に使う奴じゃない!!」
「なんで、それは知ってるんだよ!?
ってか、なんでリールは俺を家に招きたがる?」
「リールは、ずっと人間の友達を欲しがっていましたからね。
嬉しいんだと思いますよ」
代わりに答えたペネムエの回答が図星だったのかリールの顔は赤くなった。
「べっ別に、今まで天界の任務が中心で、人間と触れ合う機会が無かっただけよ!!
遊ぶ物とか、持て成すものを用意しとくから、夏休み中に絶対に来なさい!!」
「あっユリアさんに今日の写真送ろうっと」
翔矢は誤魔化すようにスマホを取り出す。
話し込んでいる内に、悠奈とユリアは帰ってしまったので、送りそびれたのは嘘ではない。
こういう事は、気が付いたときにやっておかないと忘れる可能性が高いのだ。
「ちょっとぉ!!」
最初は誤魔化そうとしているだけかと思ったが、翔矢はスマホの操作に集中しだした。
こうなった現代人は、話しかけても反応は上の空だ。
リールは頬を膨らませ不機嫌になる。
「まぁまぁリール、それだけ1人暮らしの異性の家に行くのはハードルが高いのでしょう」
「そういうものかしら? 1人だと寂しいから、泊まってってくれても……ごめん」
ペネムエの翔矢への気持ちを考えると、さすがにその要求はマズイ。
リールの顔はブルーハワイのように青ざめる。
「何に謝ってるのですか?」
「何って……そういえば、あんたユリアさんが翔矢にアタックしてるときも、思ったより取り乱してなかったわね?
いや……別に私は翔矢を異性として、どうこうって思いは無いけどさ」
「そういう気使いでしたか。
えっと……上手く言えないですが……
翔矢様は、わたくしの一番大切な方です。
なので翔矢様には、一番大切だと思った方と幸せに暮らして頂きたいのです」
そのペネムエの表情は、特に無理をしてるような印象は、少なくともリールは感じられなかった。
「痛い!! 何をするのですか、リール!!」
そんな態度のペネムエの額に、リールは強めのデコピンをお見舞いする。
「あんた、良い子すぎよ!!
本当に、欲しいって思ったものは力ずくでも手に入れようとしいないとダメよ」
「リール……初恋もまだなのに、素晴らしいアドバイスありがとうございます!!」
「一言余計よ!! まぁ……本当だけどさ。
私はいつか白馬に乗った王子様が迎えに来てくれるからいいの!!」
リールの顔はいたって真剣だ。
「ロマンチックで素敵な考えだと思いますよ」
そんな親友の妄想をペネムエは決して否定はしない。
「とにかく!! そんな他人に譲ってもいいみたいな考えは絶対に止めなさい!!」
「もちろん、翔矢様に選んで頂く努力は惜しまないつもりですよ?
でも、やっぱり、翔矢様には一番大切だと思った相手と一緒にいて欲しいのです。
他人に譲るというよりは、翔矢様の意思を一番に考える自分でありたいので」
「まぁ私から、これ以言う事は無いけどね。
私にとっても翔矢は友達だけど、あんたとは親友だからね。
私は2人とも幸せになって欲しいから」
「わたくしもリールが大好きですよ!!」
「そんな恥ずかしい事をハッキリと……
ってかそれ、翔矢に言いなさいよ」
リールの顔は、自分の髪よりも赤く染まっていた。
「ごめん、悠奈にも写真送ってたら、時間かかった」
このタイミングで、ようやく翔矢は今日の写真を2人に送り終えたようだ。
「いえ、リールと話し込んでいたので待ってませんよ」
「へぇ、ってかリール顔が赤くない?
なんの話をしてたんだ?」
「これは……日焼けしたのよ!!
女子会に入ってこようとするな!!」
リールは赤い顔のまま、翔矢を怒鳴り散らした。
「ご……ごめん」
2人だけでも女子会と言うのかの疑問が頭を過ったが、口に出すのを躊躇するくらいの勢いだった。
「まぁ、どうしてもって気になるならペネムエに聞いて見なさい?」
「止めとくかな」
そこまで本気で気になった訳でなくく、リールの先ほどの勢いも凄かったので聞くことはしなかった。
ここで聞かれなかった事にペネムエが、ちょっぴりだけ残念そうな表情をしたのは、翔矢は知らない。
***
魔法の鍵で一瞬で東京の自宅まで帰宅したユリアは、水着を洗濯カゴに入れたりして片付けをしていた。
「せっかく新しい水着だったけど、翔矢君あんまりメロメロになってくれなかったな……
いえ、リールちゃんみたいな、おっぱいお化けがいたから?
でも、翔矢君は小さい方が良いって言ってたっけ?」
自分の今日着ていた水着を眺めながら、ユリアはブツブツと文句を呟いている。
このタイミングでポケットに入れていたスマホから『ピロン』という通知音が5回連続で鳴った。
「ん?」
連続での通知が気になったので、すぐにスマホを確認した。
「あっ翔矢君から!! 写真送ってくれたんだ!!
マメで良い子だなぁ!!」
送られて来た写真を1枚1枚確認しながらリールは満面の笑みを浮かべる。
「今日は楽しかったなぁ……
みんなで焼きそば食べて、ゴムボートに乗って、バーベキューして……」
しかし次第にユリアの表情は曇っていく。
「その後は……スイカ割りして、ビーチバレーもしたなぁ……」
写真を眺めているユリアの目からは、ボロボロと涙が溢れて来る。
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
やがてユリアは立つことすら出来なくなり座り込んでしまった。
「それは誰に謝っているのだ?」
そんな彼女に闇が話しかけてくる。
「誰にって……しょう……」
ユリアが答え終える前に闇の手がユリアの額に触れる。
「ずいぶんと楽しんできたようだな。
天界に殺された哀れな妹のことなど頭から消えてしまったか?」
「そんな訳ない!!」
ユリアは強く否定し闇の手を振り払う。
「そうよ!! 翔矢君もペネムエちゃんも天界を滅ぼすのに使えるから近づいただけ!!
仲良くなるために一緒に楽しんだ!! なので文句ないですよね!?」
「そう良い子だ、天界は君の可愛い妹を殺したんだ。
だから、天使も絶滅して当然だろ?」
「はい……大魔王デモン様」
闇の問いかけにユリアは震える声で返事をした。
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