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131話:友達からゴメンなさいが始まりっそうです()

 ゴムボートでの騒動を終えると、昼食の準備を始めるのに丁度いい時間になっていた。

 この海水浴場は、バーベキューが可能なので、最初から、ぞのつもりで道具を借りる予約をしていたのだ。


 

 「ここって材料は持参しなきゃっすよね?

 自分までご一緒していいんすか?」


 「私も飛び入り参加だから申し訳ないなぁ。

 まさかバーベキューの用意をしていたなんて……」


 

 モヒカンとユリアは、今日思いがけず合流した形なので少し遠慮気味にしている。


 

 「いやぁ全然大丈夫ですよぉ!!

 お二人とも遠慮なさらず!!」


 「いや、確かにその通りなんだが、何故に悠菜がドヤ顔するんだ?

 材料は俺とリールが持って来たんだが……」


 「だってさ私料理の腕は致命的だけどさ、この材料が元々4人で食べる予定だったとは思えないんだよね?」

 

 

 悠菜の指さした先には、大量の肉と野菜が積み上げられていた。



 「それは……我が家の余ってた材料を持ってきたら、こうなりまして」

 「私は、喫茶店のマスターに、余った材料が無いか聞いたら、こうなりました」


 

 用意した立場ではあるが、翔矢とリールは、少し反省しているような表情を見せた。



 「という事なので、みんなで遠慮なく食べましょう!!

 目指せ、フードロスゼロ!!」


 

 悠菜は大きく右手を挙げて張り切っている。



 「悠菜、張り切ってる所を悪いがお前は料理禁止な!!」


 「そんなぁ!!」


 

 悠奈はガックリと肩を落とした。


 

 「あら? せっかくだし一緒にやればいいじゃない?」


 「ユリアさん、ありがとうございます!!」



 悠奈の料理の腕を知らないユリアは、首を傾げている。



 「あのぉ、アニメとかで料理の腕が壊滅的なキャラっているじゃないですか?」」


 「えぇ私も、そういう役を演じた事はあるわよ」


 「悠奈は、まさしく、そのタイプなんです!!」


 「え? あんなの現実で起こる訳ないでしょ?」


 

 あくまで作り話の中での出来事なので、ユリアは信じていない。



 「仕方ない……食べ物を粗末にするのは気が引けますが、野菜斬るのを悠奈とユリアさんに、お願いします。

 ユリアさんがヤバいと判断した地点で、悠奈は何もするな!!」



 翔矢は悠奈の目をギロリと睨む。



 「嫌だなぁ、さすがの私も野菜斬るだけなら平気だよ?」


 「私は普通に料理できるけど、なんかフラグに思えてきた……

 一応、ガッチリ監視しておくわ」



 別に役割分担を考えていた訳ではないのだが、悠奈とユリアが野菜担当となった。



 「肉は俺やるか、まぁ下ごしらえできてるし串に刺すくらいだが」


 「この人数分は、1人だと大変じゃない?

 私も手伝うわ、これでも喫茶店で働いてるから、料理はだいたいできるし」


 「そうか? 助かる」


 

 リールはこの瞬間、ハッとした。

 自分に出来そうな仕事だったので手を挙げたが、親友がベタ惚れしている男と2人きりはマズイ。

 最低でも、もう一人、誰か来てくれなければ、リールは耐え切れる自身は無かった。



 「翔矢様!! 荷物の中から、お鍋が出てきたのですが何に使うのですか?」


 「あぁ、忘れてた、せっかくだから鍋で米を炊いたらおいしいと思って持って来たんだった」


 「なるほど、異世界での野営で、この方法でライスを炊いた事がありますので、わたくしにお任せ下さい!!」



 ペネムエは、自信に満ちた表情でドンと胸を張った。



 「そう? じゃあぺネちゃんにお願いしようかな」



 翔矢の返事も聞かないうちに、ペネムエはテキパキと準備を始める。



 (ペネムエ!! あんた宮本翔矢と一緒じゃなくていいの?)


 

 リールは心の中で叫んだが、声には出せなかった。



 「俺っちはテーブルのセッティング……だけじゃ時間が余るっすね。

 そうだ!! バイトの前にイワシを釣ったんで捌いて御馳走するっす!!」


 

 モヒカンは、どこからかバケツを持って来た。

 中にはイワシがギュウギュウに入っている。



 「すげぇ、モヒカン先輩、生きた魚なんて捌けるんすね」



 翔矢は興味津々にバケツを覗き込んだ。

 


 「俺っちも普段から自炊してるんすよね」


 「それは自炊と言うか自給自足ですね」



 こうして6人は役割が決まり、それぞれの作業に取り掛かった。




 ***




 そして作業開始から数十秒後、事件は起こった。


 

 「ちょっと、悠奈ちゃん!! ストップ!! ストップ!!」



 野菜を斬ろうとしている悠奈をユリアは全力で止めている。



 「おぉ、やっぱり声優さんって声の通りがいいんですね」



 ユリアは、ただ事でない慌てようだが、悠奈はマイペースに返事をして、言われた通り手を止めた。



 「そう、やっぱり仕事柄、常に声はお腹から……

 って、そんな話はいいのよ!!

 どうして、包丁を両手で2本持ってるの?」


 「両手でやれば、2倍速くできると思いまして!!」


 「できません!!」



 そんな事で揉めていると、翔矢が様子を見に来た。



 「翔矢君、この子、私の想像を超えてたわ。

 助けて……」


 

 ユリアは泣き目で翔矢に助けを求めた。


 

 「うん、思ったより順調そうで良かった

 悠奈、怪我はするなよ? いや……させるなよ?」


 「御意、ユリアお姉さまの指示に従います」


 「よろしい!!」



 翔矢は、それだけ言い残し去っていった。



 「いや……私にこの子の面倒を見ろと?」



 ユリアは茫然と立ち空くすのみだった。



 「ユリアお姉さま、持ち方はこうでいいですか?」


 「……人に向けないで?」



 彼女の苦労は続きそうだった。




 ***



 悠奈の様子を見終えた翔矢は、自分の持ち場に戻った。



 「ユリアさん、何か叫んでたけど大丈夫だった?」


 「おう、思ったより順調そうだった。

 切り終わってた野菜は持って来たから、串焼きの間に適当に挟んで刺そう」

 

 「了解」



 2人は際良く、肉と野菜を串に刺していく。



 (やばい……親友がベタ惚れしている相手と2人きりで作業は、やっぱり気まずい。

 いや……その前に、宮本翔矢と共通の話題とか無いわね。

 まぁ話したい事は、あるんだけど……)



 リールは翔矢をチラチラと見ながらも、粛々と作業を進めている。

 その沈黙を破ったのは翔矢の方だった。



 「やっぱ2人になると話す事って思い付かないな。

 作業は進むが、さっきまでの遊んでたテンションとは離れてっちまうな」


 「そう? さっき私の胸の感想は流暢な日本語で語ってくれたじゃない?」


 「心の声だったし、それこそ遊びのテンションで、ついな。

 我ながらキモイ事を言ってしまったし、無理して俺と絡まなくていいぞ?」



 リールが翔矢と話したかったのは、そんな事ではない。

 彼女は頭を抱えたくなったが、今は両手が塞がってしまっている。



 「まっまぁ気にしてないっていうか、席決めたの私だし。

 ゴムボートに、あの人数で乗ろうって言ったのも満場一致……

 いいえ、あなたが一番反対してたわね」


 「後々気まずくなったりするの嫌だしな」


 「あはは実際、今は少し気まずいわね」


 「友達同士だからって共通の話題も無いからな」



 その翔矢の言葉で、今まで休まず動いていたリールの手は止まる。



 「え? 私たちって友達なの?」


 「何となく、そう言われる気がしてた。

 それでも否定されるとショックな程度には俺は友達だと思ってるけどな」


 「否定しない!! しない!! 嬉しいわよ!?

 たださ、私がこの世界に来たのは、元々あなたの抹殺よ?

 その……殺そうとしてゴメンなさい。

 ペネムエには謝ったけど、あなたに直接は謝ってなかったわね」


 「殺そうとしてゴメンって謝られるのは中々できない経験だな。

 まぁ事情が事情だし水に流そうぜ。

 そのマキシムって世界だっけ?

 ゼウが最近までいたらしいけど平和だったらしいしな。

 とりあえず命を狙われる心配は無いからな」



 翔矢はサラッと言ってしまったが、その事実をリールを初めて知った。



 「え? え? え?」



 驚きで何も話すことができない。



 (どういうこと? それじゃあ私が見たマキシムは?

 いえ、とりあえず平和に越したことはないんだけど……

 じゃあ私が、こいつを殺そうとしたのってただの……)



 彼女は思い悩んだが、隣で特に気にせず自分の事を友達と言ってくれた翔矢を見ると、気持ち打ち明ける事は出来なかった。

 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練って執筆しております。


 少しでも続きが気になったらブクマ登録して頂けると励みになります。


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