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130話:後悔から胸の好みが始まりそうです()

 (やってしまった……)



 ゴムボートに乗り揺られながらリールは後悔していた。

 今、自分が水着姿でしがみついている相手は、親友がベタ惚れしている男だ。

 そんな男から、自分がしがみついてるせいで、興奮してしまってるという苦情を受けたのだ。


 

 (そりゃぁ、こいつだって男だから、キモイとは思わないし……

 天使は、人間の命を最優先だから、この体勢もしかたがないことだし……)



 自分に言い訳をしながらも、心の中はもやもやしたままだった。



 (こんなの、ペネムエにバレたら……

 泣かれる? 絶交? 殺される?

 長い付き合いだけど、どんな反応されるのか想像もつかないわ!!)



 考えれば考えるほど、頭がパンクしそうになったが、本人の気持ちは本人にしか分からない。

 ここは、ペネムエの様子を確認する事にした。



 「ぺネちゃん、悪いけど体をあまり揺らさないようにできる?

 ちょっと、色々とマズイことになりそうなんだけど……」


 「申し訳ありません、わたくしの背丈では景色が見にくくて……

 所で何がマズイのでしょうか? 言ってみてください」


 「やっぱり、何でもないです……」



 波の音や周りの騒音に紛れてはいるが、翔矢とペネムエが、そんな会話をしているのが聞こえた。



 (よし!! ペネムエは宮本翔矢の膝の上でテンションが上がりまくっている。

 これなら、私に気が付く事は無いわ!!)



 しかし、その安心は数分で崩れ去ってしまった。

 ペネムエの前に座っている悠奈が余計な事を口にしたのだ。



 「あはは、翔矢君も男の子だからね。

 水着の美少女にサンドイッチされて興奮してるんだよ!!」


 「悠奈、余計な事を言うなよ!!」



 ペネムエはハッとして顔を真っ赤に染めたが、すぐに正気を取り戻した。



 「ん? サンドイッチ?」


 

 厳しい体制ではあったが、何とか後ろを振り向くと、リールと目が合った。

 リールの目は、なんだか乾いた目をしている気がした。



 (終わった……後で氷漬けにされるわ……)



 気が付かれたと思い恐怖を感じたが、この場では特に何事もなく収まった。



 

 

 ***



 

 「ふぅ、翔矢の兄貴に姉さん方、乗り心地いかがでしたか?」



 30分近く、ゴムボートは一度も転覆する事無く航海を終えた。

 モヒカンは、その間は泳ぎっぱなしだった訳だが、疲れを一切見せずに笑顔だ。



 「ユリアさんのボディチェックをしてて忙しかったです!!」


 「悠奈ちゃんが色々触って来て、何も考えられなかったわ……」


 「大変有意義な時間を過ごさせて頂きました」


 「俺は下手したら訴えられるのでノーコメント。

 モヒカン先輩の泳ぎっぷりは、素晴らしかったです」


 「私は……命の危険を感じてたわ……」



 特に意識していた訳ではないが、ゴムボートで先頭に乗っていた順に感想を述べて行った。



 「え? リール姉さん、命の危険ってそんなに揺れてたっすか?

 申し訳なかったっす!!」



 リールの感想を気にしたモヒカンはペコペコと頭を下げている。

 これは勘違いなので本当であれば元気なところを見せて、平気だとアピールする所だが彼女にその余裕は無かった。


 

 「あっいえ、こっちの話よ。

 大丈夫……気にしないでちょうだい」



 このトーンは明らかに、大丈夫な人間のトーンではなかった。

 悠菜も心配そうに駆け寄った。


 

 「私はそんなに揺れてないと思ったけど、リールちゃん船酔い?」


 「ごめん、本当に大丈夫よ、揺れには強いから船酔いではないわ」


 「そっかー、リールちゃんみたいな美人さんだと揺れるのはおっぱいだけかぁ!!」



 この悠菜の一言で、顔を赤くしたのは、リールではなく翔矢だった。

 その変化に、ユリアはすぐに気が付いていた。



 「あああ!! 翔矢君、リールちゃんのおっぱいを背中で堪能して興奮したんだ!!

 私だってFカップあるんだけど……物足りないですか? ってかリールちゃんって何カップ?」


 「水着選んだときは、確か店員がHとか言ってたわね」


 

 ユリアは興奮した様子でリールの胸を指さした。

 その指摘にリールは何故か普通に答えてしまった。



 「Hカップかですかぁ!! 海外の人は大きいですなぁ!!」



 悠菜はリールの胸をマジマジと見つめる。



 「悠奈ちゃん……悪いけど流石に恥ずかしいわ!!」


 

 これにはリールも両手で自分の胸を隠した。



 「お前は、なんで男の俺より興奮してんだ?」


 「翔矢君!! そういう発言はジェンダー的な何とかが出来てないよ!!」


 「わっ悪かった……」


 「あの……翔矢様は、お胸の大きい方が好みでしょうか?」



 ペネムエは自分の胸に手を当てながら、気まずそうに尋ねる。



 「えっと……」


 「正直に答えて頂いた方が参考になります!!」



 中々答えを言わない翔矢にペネムエは近寄って詰めよって来る。



 「男子って大きいのが好きなイメージだけど、実際どうなのか聞く機会は無いもんね!!」


 「そう言われると、イメージでしかないかもね? どうなの?」


 「正直、大きいと不便な事の方が多いし、これで男子の評価まで低かったら踏んだり蹴ったりね……」



 ペネムエの質問に、他の3人も興味を示した。



 「これは逆セクハラと言うのでは?

 男子の意見が聞きたいなら、モヒカン先輩、先に答えてください」


 「俺っすか? 俺は大きい方が好きっすけど、リール姉さんのサイズは想定してないっすね。

 ユリア姉さんくらいだと最高っす!!」


 「あら、ありがとう!! 後でチェキくらいなら一緒に撮ってあげるわ!!」


 「なんだろう、何とも思ってない相手からでも、そう言われるとショックね……」


 

 ユリアは素直に喜び、リールは肩を落としていた。

 そんなリールの頭を悠菜は撫でて励ましている。


 

 「モヒカン様の意見など、どうでも良いのです!!

 翔矢様は、どんなお胸が好きなのですか?」



 「ペネちゃん、そんな失礼な事、言うタイプだっけ?

 えっと、あんまり考えた事ないけど……」


 

 翔矢は考え込みながら、女性陣をチラチラと見た。

 普通なら、あまり宜しくないが向こうから回答を迫られているので仕方がないと自分に言い聞かせる。



 「えっと俺は小さい方がいいかも?」



 この答えにペネムエは、翔矢が見えない所でガッツポーズをした。



 「「「なんか胸の好みじゃなくて人柄的なので選ばれた気がする!!」」」



 ペネムエ以外の3人は、声を合わせて不満を漏らしたが、翔矢は聞こえないふりをして、次の遊びの準備をした。

 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練って執筆しております。


 少しでも続きが気になったらブクマ登録して頂けると励みになります。


 下の星から評価も、面白いと感じたら、入れてくださると嬉しいです。

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