128話:焼きそばから誘いが始まりそうです()
浜辺に設置した椅子に眠るように座ってしまった悠奈。
まぁこれはユリアとの悪ノリで、人気のある探偵漫画のマネをしているだけだと判明したので、翔矢とペネムエは彼女の推理を聞く事にした。
「探偵さん、犯人が分かったというのは本当でございますか?」
ペネムエは目を輝かせ、悠奈に質問をする。
その質問の後で、視線はチラチラと翔矢を向いた。
「えっ? 俺もやるの?」
ペネムエだけでなく、寝ているフリをしている悠奈まで首をブンブンと縦に振った。
「えっと……被害者っていうかリール姿は最初から見えないんだ。
1人で遊びいっただけじゃないっすか?」
「翔矢様……43点です」
「何が!?」
点数の理由は分からないが、悠奈もといユリアの推理ショーは続いた。
「そう我々は、とんでもない思い過ごしをしていました」
「ユリア様、それは恐らく他の番組のセリフです」
「えっ!? うそ?
ゴホン、リールちゃんは逸れたのではありません。
遊びどころでは無くなっただけです」
ここでテントの中で水着に蝶ネクタイという少し珍妙な状態だったユリアが出てきた。
「リールちゃんならあそこにいるよ?」
そう言ってユリアが指差したのは海だった。
翔矢とペネムエ、そして寝たふりを止めた悠奈が、その方向を見ると、リールが海を泳いでいた。
「あいつ……準備運動はしたんだろうな」
「翔矢様……それ所ではありません。
お子様が流されているのを救助しているようです」
「ペネムエちゃんすごい!!
あんな遠いのに良く見えるね?
マサイ族みたい!!」
「マサイ?」
そんな事を話しているうちに、リールがどんどんと岸の方に近づいてくる。
どうやら無事に1人で救出できたようだ。
数分で岸に着き、女の子も大泣きはしているが無事だったようだ。
「はぁ……はぁ……
魔法なしで泳ぐのは流石に疲れるわね」
「リール、お疲れ様でした。
タオルどうぞ」
「ありがと」
ペネムエからタオルを受けとリールは濡れた髪をワシャワシャと吹き始める。
その後、女の子の親御さんらしき人が、大慌てで駆けつけてリールに何度もお礼を述べた。
女の子も、何とか泣き止み、最後には『お姉ちゃんありがとう』と自分で、お礼を伝えていた。。
「さてと、最初は何して遊ぶ?」
「お前、切り替え早いな……」
親子を見送った直後、リールは何事もいなかったように振る舞っている。
翔矢は呆れてしまい、すぐに遊びの案は出て来なかった。
「リールちゃん、泳いだばっかで、お腹空いたでしょ?
ここの海の家の焼きそば、すっごくおいしいんだよ!!」
「そういえば、そろそろ、おやつの時間ね!!
焼きそばは、食べた事ないから、ぜひ頂きたいわ!!」
「私も、朝ご飯食べる暇、なかったのよねぇ」
「それでは、先に、おやつを頂きましょう!!」
翔矢が、話に入る暇もなく女性陣が、海の家の方へ向かってしまった。
「朝10時の、おやつで焼きそば?
まぁ今日は、とことん付き合うとしますか!!」
とはいえ悪い気はしなかったので、すぐに女性陣の後を追った。
***
少し歩いて海の家に到着した一行。
中は比較的、空いていてすぐに座る事が出来た。
「すぐに座れてよかったね!!」
悠奈は席に着くなりピョンピョン跳ねて喜びを表現している。
「まだ10時を回ったばかりだからな。
そうそう利用する時間じゃないだろ」
なんて事を、少し話しているうちに店員の男がやってきた。
「いらっしゃいませ……って翔矢の兄貴じゃないっすか!!
たくさんの美女を引き連れてどうしたんすか?」
その店員は、モヒカンヘアーがトレードマーク、というか本体に近いモヒカンだった。
翔矢の事を兄貴と呼ぶが、3年の先輩だ。
「見ての通り友達と遊びに来たんですけど、男子が集まらなかったんすよね
モヒカン先輩はバイトっすか?」
「知っての通り、野球部は夏の大会、予選敗退でしたからね。
まぁ高校最後の夏の思い出で、こういうのも有りだと思ったんすよ」
初めて会ったときは、彼の名前と髪型のインパクトに驚いたが、今となっては普通に会話ができるようになっていた。
極度の女好きの健吾よりも、まともなのではないかと今では思っている。
「海の家のバイトって定番のようで募集とか意外と見ないですもんね」
「翔矢君、バイト探してたの?」
「ウチの喫茶店でよかったら、多分雇ってくれると思うわよ?」
「いや、ウチの高校バイト禁止じゃないよなー。
って軽い感じで見てるだけだから、人に紹介してもらう程じゃないかなー」
ここで一旦、モヒカンは注文を取り、厨房へ向かった。
その後、数分で人数分の焼きそばを持って戻って来た。
「お待たせしましたー」
「あれ? 1つ多くないですか?」
だが、その焼きそばが多いことにペネムエは気がついた。
「姉さん、これは俺の分です。
お客さんも、まだいない……
というか俺のバイトは準備がメインだったから、後少しで終わりなんすよね」
と言いながら、モヒカンは誰よりも早く焼きそばを口にした。
「モヒカン先輩……中学生にも姉さんって」
「翔矢の兄貴の妹分なら姉さんです。
年下だろうが経緯を払うべき相手には敬意を払います。
逆に年上でも敬意を払う必要のない相手には払いません!!」
モヒカンは何故か得意気にしている。
「ちなみにモヒカン先輩と同じ年の健吾先輩には?」
「あんな女子に声かけまくる奴に敬意は払えないっすねぇ」
この回答には、かつて被害を受けた悠菜とペネムエも首を縦に振った。
「まぁ敬意とか抜きに、ペ姉さんはガチの姉さんになる可能性ありますからね」
「それ、どういう意味っすか?」
「それは、どういう意味でしょうか?」
だが翔矢にもペネムエにも、この意味はピンと来なかった。
(このモヒカンって人、髪型の割りに鋭いわね)
しかし、悠菜・リール・ユリアの3人には何故か伝わったようで同じような事を考えていた。
「そうだ!! モヒカン君、バイト終わりなら私たちと一緒に遊ばない?」
「えっ、俺なんかがご一緒していいんすか?」
「さっきから翔矢君が、水着美女に囲まれて、ヤリにくいってウルサイのよー」
面白がっているのか本当に翔矢に気を使っているのかは誰にも分からないが、ユリアはモヒカンを誘っている。
「まぁ言い方はあれですけど、みんなが良ければ俺は男子が増えた方が遊びやすいですかね」
「わたくしは翔矢様に従います」
「ペネムエがいいなら、私もいいかなぁ」
「登山の時は、楽しかったし私もオッケー」
「ありがとうございます!!」
女性陣の許可が出たので、ここからはモヒカンが仲間に加わったのだった。
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