126話:水着から自信喪失が始まりそうです()
「ここをキャンプ地とする!!」
砂浜にブルーシートやパラソル、さらにはテントを設置し、出来上がった拠点を見て悠奈は得意気に胸を張っている。
「設置したのは、ほとんどぺネちゃんだけどね。
俺もテントとか張った事ないから、人の事は言えないが」
「まぁ、他の世界に言った場合は野宿も珍しくありませんので」
翔矢に褒められたペネムエは照れながら答える。
「野宿って、ペネムエちゃん、どこの国から来たの?」
「えっと、国でキャンプが流行ってましたので」
「あぁ、日本でも最近流行ってるよね!!」
悠奈の質問を何とか誤魔化したペネムエを見て翔矢はホッと胸をなでおろした。
「ってかユリアさんは何でテントとか持って来たんですか?」
浜辺でテントを張っているのは自分たちのグループだけで、正直浮いている。
そんなテントを持って来たのはユリアだったのだ。
「私もハマってるのよ。
前に女子高生がキャンプをするアニメのキャラを演じてね。
試しにやってみたら、楽しくて遠出するときはテントを持ち歩くようにしているわ」
「テントって軽いんですね!!
もっと、よっこいしょーって感じだと思ってました」
「これは1人用だし、そもそも外で使う物だからね。
持ち歩きやすいように、出来てるんじゃないかな?」
悠菜とユリアは、この短時間で、すっかり打ち解けたようで、まるで姉妹のように見える。
「ところで、さっきから気になってるんだが……」
「「なに? 翔矢君?」」
翔矢の問いかけに悠菜とユリアは同時に返事をした。
ピッタリと揃った声は、周りの雑音のせいか、どっちがどの声か判断が付かないくらいだった。
「ペネちゃんは、なんで着替えるときに使うタオルで体がグルグル巻きなの?」
浜辺に到着したときから、悠菜は黄色のワンピース型の水着。
ユリアは黒のビキニを着用している。
しかし、ペネムエはタオルでグルグル巻きで着ている水着が見えない。
「あぁ翔矢君、女の子に、そういう事聞いちゃう?」
「やっぱり、鈍感男はダメですねぇ」
悠奈とユリアは、事情を察せない翔矢を馬鹿にするような目で見ている。
ペネムエは、下を向くばかりで何も話てくれない。
「ん? 分かった!!
ぺネちゃんは水着を忘れたんだ!!」
「違いますよ!!」
自信満々で答えた翔矢に、今まで黙ってたペネムエが、大声を出して否定した。
その勢いで、巻いていたタオルは、ドサッと落ちて、ようやくペネムエの水着姿が露わになった。
一応、翔矢のリクエストで選んだ物だが、実物はこの瞬間初めて見る事ができた。
それはリクエスト通り、薄目のピンク色で、上はキャミソール型でヘソの上までくらいの長さ。
下は、ヒラヒラのミニスカートが付いたデザインになっている。
「なんだ、可愛いじゃん!!」
思わず翔矢の口から感想が漏れてしまう。
その言葉に、ペネムエは顔を赤くし、体育座りでうずくまってしまう。
「あっごめん、セクハラだった?」
この質問にペネムエは、うずくまったまま首を横に振った。
「えっと、俺は似合ってると思うし、そんな隠さなくても良いと思うんだけど……」
「本当ですか?」
ペネムエは、ようやく頭だけは上げた。
しかし、その視界に悠菜とユリアが入った瞬間、再び体を丸めてしまう。
「やっぱり無理です!! わたくしに構わず遊んでください!!」
「……ペネちゃん、本当にどうした?」
いつも何をするにも、この世界の文化を楽しんでいたペネムエが、全く動かない。
昨日までは、楽しみにしていたようなので、心辺りもまるでない。
「ってか2人は、何か知ってるんだよね?」
ペネムエが答えようとしないので、悠菜とユリアに聞いて見る。
しかし、2人も翔矢から目線を反らすばかりだ。
「私たちから言うのも……」
「ちょっと恥ずかしいかなぁ……」
「何なんだ? 仕方ない、とりあえず先にゴムボートでも膨らませておくか」
翔矢は持参したゴムボートをバックから取り出し、足踏みポンプでシュポシュポと膨らまし始めた。
悠菜は、その様子を確認すると、まだうずくまったままのペネムエに近寄り小声で話しかける。
「その水着、翔矢君が選んでくれたんでしょ?
ちゃんと見せてあげないと、もったいないよ?」
「わたくしの、水着姿など、見せては翔矢様のお目汚しになってしまいます……」
「その翔矢君が、可愛いって言ってくれてたじゃん?」
「翔矢様は、お優しいですからね……」
「好きな人が、可愛いって言ってくれたんだから自信持ちなよ?」
「悠奈様やユリア様の、水着を見た後で、わたくしの水着姿など……
えっ? 今なんとおっしゃいました?」
「? 好きな人が褒めてくれたんだから自信持ちなって言ったけど?」
「なっなっなぜ、わたくしの気持ちが分かったのですか?
思考が読めるのですか? マズいです!!」
「何もマズくないよ? むしろ、なんでバレテないと思ったのかな?」
「翔矢様にはバレてないと思いますので……
えっと、申し訳ありません……」
ペネムエは、聞き取れるかどうかギリギリの声で謝罪し、またまた体を丸めてしまった。
「なんで謝ってるの?」
「だって……悠奈様は幼いころから翔矢様と仲がよろしいのですよね?」
「そうだけど、一緒にいすぎて恋愛感情とか本当に皆無なんだよねー。
まぁ明らかに悪そうな女の人に引っかかっちゃうとかは、嫌な気分になるだろうけどねぇ」
「なんで、そこで私を見るのかな?」
その悠奈の視線はユリアの方に向いていた。
「ごめんなさい、そんなつもりは無いんですけど女の勘ですかね?」
「そんなつもり、あるじゃない……
お姉さんピエン」
ユリアは涙を拭くような仕草をしたが、明らかに演技だ。
「まぁ、私も好きな相手にはアピって何ぼだと思うわよ?
多少不純だろうが、女の武器だって使うべきよ?」
「わたくしに、ユリア様のような、たわわな武器はありません」
ペネムエの視線は、ユリアの胸元に集中している。
「あなたとは、友達になれると思ったけど辛気臭くて面倒ね……
じゃあ、こうしましょう?
今からペネムエちゃんは、翔矢君に水着姿を見せびらかして来て下さい」
「……その自信というか勇気が無いのですが」
ペネムエの反応に構わずユリアは話を続ける。
「制限時間は……早く遊びたいから3分!!
もし、それまでに見せびらかす事ができなかったら……」
「どうするおつもりですか?」
「私が翔矢君に抱きついて愛の告白をします!!」
それを聞いた悠奈は全てを察したような顔をした。
「翔矢君も男の子ですからねぇ。
そんな恰好で抱きつかれたら勢いでOKしちゃうかもですねぇ」
「えっと……ユリア様、本気ですか?」
「1分経過!!」
「いっ行って参ります!!」
ペネムエは猛ダッシュで、ボートを膨らませている最中の翔矢の元へ駆けていった。
その姿をユリアはニヤニヤと見つめ、悠奈は頑張れとエールを送りながら手を振っている。
「えっと先ほどは無意識とはいえ、悪い女人で反応してしまい申し訳ありませんでした」
悠奈は90度を超える角度で頭を下げた。
「ふふふ、いいのよ。
もしかしたら本当に悪い事を考えているかもしれないし」
「またまたご冗談を!!」
「悠奈ちゃんは、本当に翔矢君が他の女の子とくっついても平気なの?」
「私は可愛い子の味方ですので」
「あなた、色々と本物なのね……」
最初は強がっているのかと思ったが、その様子から、すべてが本気だとユリアは感じたのだった。
「そういえばユリアさん……
さっきからリールちゃんの姿が見えないんですけど……」
「えっ? 待ち合わせのときに一緒にいて……
あれ? そういえばテントを張ってた時からいなかった気が……」
翔矢とペネムエの事が気になりつつも、2人はリールを探し始めた。
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