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125話:海から待ちぼうけが始まりそうです()

 今日は、誰かにとっては待ちに待った海水浴の日。


 ペネムエと悠奈は、実質初の顔合わせとなる。 


 「わー可愛い!! 本当に、お人形さんみたい!!」


 「おっお褒めに預かり光栄でございます」



 六香穂海水浴場と書かれた無駄に大きな看板の前で待ち合わせをしていたのだが、悠奈はペネムエを見るなり目を輝かせ周りをキョロキョロしている。



 「翔矢君!! こんな可愛い子、どこで拾ってきたの?」


 「えっと……メッセージでも話したよな?

 親父の会社が、外国の会社とも取引することになって、そこの会社の娘さんを日本にいる間、預かる事になったんだ」


 

 これは、翔矢とペネムエが必死に考えた設定だ。



 「預かってるって……翔矢君の父上は、仕事で留守が多いはず……

 まさか、如何わしい事をしたり……」



 悠奈の目は不審者を見る目に変わっていた。



 「してないよ?」


 「まだ、して頂いておりません」


 「まだ?」


 「あっ、日本語は、覚えて間もないので不適切な表現があったかもしれません」


 (ぺネちゃんって、たまにヒヤッとする言葉を使うんだよな。

 氷使いだからか?)



 悠奈の質問に2人で否定したが、ペネムエの言い回しのせいで、疑念は高まったかもしれない。



 「ペネムエちゃん、この怖いお兄さんに嫌な事されたら、お姉さんに相談するんだよ?」


 「わたくしは、翔矢様から何をされたら嫌と思うのでしょうか?」


 「おぉ!! そういう事でしたか!!」



 ペネムエの反応に、悠奈はドヤ顔で何かを察した顔をしたが、翔矢は意味が分からないのか首を傾げている。



 「お待たせー!!」



 そんな3人の元に1足遅れてリールがやってきた。



 「おぉ!! メイドの店員さんがペネムエちゃんの、お友達だったとはビックリ!!

 夏休み中、毎日喫茶店に行っても、いないから心配しておりました!!」


 「悠奈ちゃん、来てくれてたのね、ちょっと夏休みで里帰りしてたのよ」


 「そうでしたか!! ん? フリーターさんなのに夏休みとは?」

 

 「えっと……」



 その質問に、リールは答える事が出来ず目が泳いでしまう。



 「人数そろったんだし、早く海行かないか?」



 その心境を察したのか、翔矢は助け舟を出した。



 「翔矢君が、美少女3人の水着姿を早く拝ませろとウルサイので行きますかぁ」


 「拝みたいのはお前の方だろ? 来たときからテンション高すぎて疲れるんだが……

 今日一日遊ぶのに、体力が持たないぞ?」


 「この健康優良児の悠奈様が、美少女の水着姿を前に、疲れますかっての!!」


 

 悠奈は得意気に胸を張った。



 「とか言って、この前、大学生の実況者だかとテニスに行った時は、疲れ果てて記憶ないんだろ?」


 「美少女成分が瑠々ちゃんしかなかったからかな?」


 「お前の体は、どういう仕組みで動いてるんだよ……」


 「あはは、真理ちゃんも、彼氏作るって張り切ってたのに寝落ちしたのがショックで、今日は休むって」


 「そっそうか……」



 なんだか話に気になる点はあったが、真理が不憫に思えたのか、翔矢は、これ以上何も聞くことはできなかった。



 「ちょっと、2人とも、何やってるの?

 早く行くわよ!!」


 

 そんな2人を、10メートルほど離れた場所からリールが大き目な声で呼んでいる。



 「はーい!!」


 「わるい、今いく」


 

 ハッとして、駆け足で追いつき、このまま海水浴場の脱衣所へと直行した。



 

 

 ***




 翔矢は水着に着替えると、見つけやすそうな場所で3人を待っていた。

 田舎の海水浴場と言っても、夏休みとなると、それなりに混雑する。

 

 都会の人が見たら『この田舎のどこに、こんなに人が隠れてたんだ』とか思うのかもしれない。



 (やっぱ、女子は着替えるのに時間かかるんだな……)



 同じタイミングで着替え始めたにも関わらず、待ち始めて、そろそろ10分くらいになりそうな気がする。



 「ヘイ、彼女!! 俺達と遊ばない?」



 その辺から、ナンパをしてるような声も、ちらほら聞こえてくる。

 知り合いであれば、すぐにでも助けようと思うが、声かけ程度のナンパなら知らない人までは助けようと思わない。



 「ってか、今回のメンバーマジ俺以外が女子……

 あぁいうのに絡まれてたら、俺が助けるしかないのか?」



 そんな不安が頭を過ったが、ペネムエはナンパされるには幼いし、リールと悠奈は性格的に自力でキッパリと断るのが想像できた。



 「しかし遅いな……」



 余計な心配をしながらボーっとしても、3人の姿は未だに見えない。



 「ヘイ!! イケメンのお兄さん!!

 私と一緒に遊ばない?」


 「はっ?」



 待ちぼうけをしている翔矢に、金髪でポニーテールの美女が声を掛けてきた。

 まさか、自分が逆ナンされるなど夢にも思わなかった翔矢はフリーズしてしまう。



 「あれ? 私、滑っちゃった?」


 

 その声を聴いた瞬間、翔矢はピンときた。



 「もしかして、ユリアさん?」


 「えっ、知らない人だと思ってたの?」


 「すいません……

 髪型が、いつもと違ってたのと、最初に掛けてきた声も違った気がしたので」


 「君は、人を髪型で判断してるのかい?

 声は……昨日、収録が忙しかったから、キャラの声が残ってたかなぁ?」



 ユリアは何かを誤魔化すように、頭の裏を掻く。



 「声って、残るもんなんですか?」


 「私は、地声を忘れるタイプの声優ね。

 今日は、オフだから久しぶりにのんびりしようと思ったんだけど、田舎でも夏の海は混むのね」


 「のんびり?」



 その言葉に違和感を覚えた翔矢は首を傾げる。



 「私何か変な事、言ったかな?」


 「いや……のんびりする人の格好ではないなって……」



 ボソッと一言だけ話した翔矢は、ユリアから目を反らした。

 彼女の服装は、一般的な男子高校生には少し刺激が強めの黒い水着だったのだ。


 

 

 「これねぇ、前に出てたアニメのブルーレイの映像特典で、買い物企画やった時に買ったのよね。

 先輩の声優さんが選んでくれたんだけど、似合ってないかな?」




 寂しそうな目で年上の女性に見つめられると、なんだかグザッとくる物があった。



 

 「いや似合ってても、目のやり場に困るんすよね」


 「思春期の男の子みたいな事を言って可愛いなぁ」


 「実際に思春期の男の子ですからね」


 「私は、男子高校生が好きなので、男子高校生からの視線は光栄だよ?

 翔矢君のなら尚更!!」


 「それファンの人が聞いたら、どう思うでしょうか?」


 「ふふふ、調子が戻って来たみたいね!!」


 「そういえば……話すときは目を見るんで、目のやり場に困らないからですかね?」



 この後も、2人で少しだけ話していると、ようやくペネムエ・リール・悠奈が、こちらに向かって来るのが見えた。



 「おまたせぇ!!」



 まだ距離はあるが、悠奈は手を振りながら、大声を出している。

 さすがの翔矢も少し恥ずかしくなった。



 「あっ!! 翔矢君が待たされすぎて美女をナンパしてる!!」


 「うわぁ……あんたも、そういう事をするんだ……」


 「翔矢様……やはり年上が好みなのですね……」



 ユリアと話している現場を目撃した、3人は、それぞれ反応を示したが、全員が冷たい視線を送っている。



 「いや、ナンパではない!! ってかぺネちゃんは知ってるでしょ?

 ユリアさんだよ!?」


 「ユリア様? 申し訳ありません、髪型が違ったので気が付きませんでした」



 美女の正体が、ユリアだと気が付くと、ペネムエはペコリと頭を下げた。



 「私の、ポニーテールって認識疎外の効果でもあるのかな?」



 ユリアは自分の髪をスゥっと撫でてみる。



 「ユリア……あぁ!! 思い出したわ!!

 アテナ様が推してる……確か声優さんね?

 前に頼まれて、サイン入りの写真集を買いに行ったわ!!」


 「へぇ!! 翔矢君、声優さんに握手でもお願いしてたの?」



 リールは、ユリアの事を思い出し、簡単に挨拶をした。

 悠奈は、彼女の事を知らないようだが、かなりの興味を示していた。



 「えっと……」



 ペネムエとの関係の説明は事前に話し合って決めていたものの、ユリアとの遭遇は想定外。

 翔矢は言葉に詰まってしまう。



 「私がガラの悪いヤンキーに絡まれてた時に、助けてくれたのよー」


 「そっそうなんだ、ちょうど中学の時の知り合いだったから!!」


 「翔矢君、地元のヤンキーには顔が利くもんね!!」


 

 自分の黒歴史を掘り起こしてしまったが、この場を納める事に成功したので、ホッと一安心をした。



 「それじゃあ、さっそく海で遊ぼー!!」


 

 悠菜は、大きく右手を挙げて張り切っている。



 「すでに“さっそく”とは言えないけどな」


 「申し訳ありません、それは、わたくしのせいで……」



 ペネムエが何かを言いたそうにしていたが、いい出す前に全員が海に向かてしまったので、急いで後を追いかけていった。

  

 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練って執筆しております。


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