表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
131/273

122話:脅しから勇者が始まりそうです()

 時は翔矢とペネムエがショッピングモールにいた頃まで遡る。

 悠奈、真理、瑠々の3人はスポーツ施設で動画配信者とテニスをしていた。


 この動画配信者が、どれくらい人気なのかは悠奈は知らないが、テニスコートは全て貸切っていたので、それなりの知名度が無ければできない事だろうと思った。

 自分たちと、少しチャラい感じの3人組の動画配信者しか、いない空間に最初は少し不安だったが、今は普通にテニスをしているので、その不安は悠奈は完全に忘れてしまっていた。



 「せいっ!!」


 

 悠奈の大き目の声をともに、鋭いスマッシュが炸裂する。



 「いやー参ったなぁ、まさかJKに負けるなんて」



 決着が着くと、相手は参ったなーという感じで頭の裏を掻いている。

 その様子を見て、他の2人のメンバーは、JKに負けてダサいだのと、からかったり悠奈が強すぎるだけだのと話していた。



 「えへへ、ギリギリだったし、まぐれですよー」



 年上から褒められたのが、素直に嬉しかったのか、悠奈は照れているのを隠しきれないでいた。


 

 「真理ちゃん!! 瑠々ちゃん!! 見てくれた? ……えっ?」


 

 2人は自分の試合を見ていたものだと思い、得意気に後ろを振り向いた。

 しかし、そこにいたのは、気絶するように倒れている真理と瑠々だった。



 「2人とも、運動得意じゃないから……疲れちゃった?」



 そういう雰囲気ではないが、他に可能性が思いつかず、恐る恐る2人の元に歩み寄った。



 「お友達、疲れちゃったみたいだから、起こしたら悪いよ?

 他に誰もいないんだし、俺達と楽しい事しよっ?」



 悠奈は1人に後ろから取り押さえられてしまった。

 後の2人は、ニヤニヤと嫌らしい表情をしながら自分の元に迫って来る。



 (助けて……翔矢君……)


 

 恐怖で叫ぶこともできず、心の中で助けを求めたが、この場に翔矢が来る事はない。

 それは悠奈も潜在的には分かっているが、他にできる事もなかった。




 ***




 同時刻、普段は悠奈に黒ネコとして飼われている悪魔族のグミは、人間態で建物の屋根から屋根へとジャンプして、猛ダッシュで悠奈の元へ向かっていた。


 「ママさんにモフられてたら出遅れたニャ!!

 翔矢から、一応様子見てって頼まれてたのにニャ」


 一応、急いではいるが、チャラそうな大学生と遊ぶのが心配という程度の認識。

 そこまで危機感は持っていないので不安はそこまでなかった。

 それでもグミの中で、何か嫌な予感がしていた。


 「あれ? スポーツセンターって何処ニャ?」


 だが日ごろは、ただの飼い猫として生活しているグミには、六香穂市以外の土地勘は、皆無なのだった。




 ***




 「暴れるんじゃねぇ!!」


 恐怖を感じなが悠奈は必死に暴れ抵抗していた。

 いくら運動神経が良くても、年上で運動をしている男に取り押さえられては、簡単に逃げ出す事はできない。


 「占い師の女から貰った力で、こいつも眠らせようぜ?」


 「あっちの2人を眠らせただけで、かなり疲れたからな。

 この嬢ちゃんまで眠らせたら俺が楽しめなくなっちまう……」



 メンバーの提案を拒否した後、取り押さえている男は少し考えると何かを閃いた。



 「そうだ!! 君の事は返してあげよう」


 「え?」


 

 その言葉に悠奈の動きはピタッと止まった。



 「その代り、お寝んねしてる2人が、どんな目に会うかは知らないけどね」


 「ちなみに、その2人には、まだ何もしてないから安心してね。

 俺ら3人、満場一致で君と遊びたいって意見で一致したから。」



 そう言いながら、1人が悠奈のスコートをヒラリと捲る。

 スコートなので、中は見られてもいいようになっているが、反射的に、その男の顔面に蹴りを入れてしまった。



 「いてぇなぁ!!」


 「お友達が、どうなってもいいんだねぇ」



 3人は悠奈を開放し、真理と瑠々へと狙いを変えた。



 「待って……!!」



 その姿を見て、咄嗟に呼び止めてしまう。

 3人は、こうなる事が分かっていたかのように、ピタリと立ち止まる。



 「どうした?」


 

 返事をしたのは、1人だが、3人は同じような嫌らしく醜い表情をしていた。



 「真理ちゃんと瑠々ちゃんには……何もしないで……下さい」


 「じゃあ、君は、どうするんだ?」


 「あなた達の……言う通りにします……」



 悠奈の目には悔しさから涙が溢れだしている。

 そこには、普段の彼女の明るさは、消えてしまっていた。



 「最初から、そう言ってれば、すぐに気持ちよくなれたんだよ!!」


 

 3人の手が、自分に伸びて、あと数瞬で触れそうだが、もう抵抗する気は無くなっていた。

 

 

 (真理ちゃんは失恋したけど好きな人がいる。

 瑠々ちゃんは……まだ小さいから……2人は私が守らなきゃいけないんだ……)



 覚悟は決めたが、目は開けられず閉じてしまう。

 だが少し時間が経っても、自分の体に何かが振れる感覚は全くなかった。

 不思議に思い、片目を少しだけ開けると、3人は、何者かに手刀を喰らったように倒れこんでいた。



 「最低な男どもだが、お蔭で我が目覚める事ができた。

 聖剣は手元にない……という事は、世界が積むのには間に合ったか。

 こいつらの行いは、結果として全ての世界を救うチャンスをくれた訳だ。

 力も失ったようだし、魔法に関する記憶を奪うだけで勘弁してやるか」



 そう独り言をブツブツ言っていたのは阿部瑠々だった。

 瑠々は3人の額に順番に右手を当てる。

 すると、彼女の右手に何かが流れこむのが見えた。



 「瑠々……ちゃん?」



 異様な光景に悠奈は立ち尽くす事しかできない。



 「見られてしまったか……

 悪いけど、悠菜先輩からも、怖い記憶だけは消させてもらうよ?

 その方が、傷にもならないであろう」



 瑠々は普段では考えられない動きで悠奈の元により、彼女の額にも右手を当てた。

 悠奈の意識は遠のき、そのまま気絶してしまった。



 「お前!! 悠ニャに何をしてるぅ!!」



 そんな場面で、ようやく到着したグミが瑠々に高速で飛び蹴りを仕掛けたが、瑠々は軽く回避した。



 「この世界には悪魔族まで来ているのか……」


 「ニャーの不意打ちを交わすとは、お前、この世界の人間じゃニャイな?」


 「無意味な対決は避けたい……とりあえず誤解は解かせてもらおうか」



 瑠々は右手をグミに向けると、先ほどまでの出来事が、頭に流れ込んでくる。



 「なるほど、悠ニャを護ってくれたのニャ、襲い掛かって悪かったのニャ。

 って魔法? 天使ですら、この世界で魔法は使えニャいのに……お前何者ニャ?」

 

 「我は勇者アーベル、全ての世界を救うために、この子の体に魂を移した。

 だが、今は正体がバレる訳にはいかない、悪魔族は対価で契約できるんだったな。

 悠菜先輩を助けた事と、これで、我の正体の口留めと、この場の後始末を頼めないか?」



 アーベルを名乗る瑠々は、グミにガチャガチャのカプセルのような物を投げ渡した。



 「これは何ニャ?」


 「この男どもが悪用した能力が入っていたモノだ。

 中身は空だが、珍しい代物だし、対価にはなるだろう?」


 「分かったニャ、お前の事は誰にも言わないし、この場はニャーが片づけとくニャ」


 「助かる……我も、この世界に長居はできぬよう……だ」



 そう言い残し、瑠々も眠るように気絶してしまったのだった。



 「魂の雰囲気が変わった? 憑依系の魔法? いや……少し違うニャ」



 倒れた瑠々を抱えながら、グミは6人を休憩所まで運び、この場を誤魔化す細工を進めた。

 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練って執筆しております。


 少しでも続きが気になったらブクマ登録して頂けると励みになります。


 下の星から評価も、面白いと感じたら、入れてくださると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ