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116話:決着から乱入が始まりそうです()

 翔矢の新しい力、コネクト・アクセルによる一撃。

 この速度は、ペネムエの所持する超高速の腕輪の速度を凌駕しており、その速度からの拳は、狼男を一撃でダウンさせた。


 

 「はぁ……はぁ……やったか?」



 激しい息切れを起こす翔矢が、普通なら絶対に言ってはいけないセリフを口走ってしまった。

 そのせいなのかは定かではないが、伸びきっている狼男の体が光始める。



 「まだ何かあるの?」



 警戒する翔矢だが、その体からは、すでに青いオーラは消えていて、また戦う体力は残っていなかった。

 ひとまず様子を見ると、狼男の左胸から、ガチャガチャのカプセルのような物が落ちて転がった。


 カプセルが体から離れると、狼男はサラリーマン風の中年男性の姿になった。



 「え? てっきりヤンキーとかが正体だと思ってたけど、おっさん?

 っていうか、これ、どうしようぺネちゃん……」


 翔矢は助けを求めるようにペネムエの方を見る。

 両足が折られているはずの彼女だが、かろうじて立っているのは、人間でなく天使だからだろう。


 

 「天界からフォローは、あると思いますが、このレベルはさすがに……」



 ショッピングモール内は、狼男が暴れた事と、今の激闘により悲惨な事態になっていた。

 監視カメラなどもあるので、翔矢の姿も映ってしまっているかもしれない。



 2人が頭を抱えていると、ドタドタと何十人も、こちらに駆け足で向かってくる音が聞こえた。



 「また敵?」


 

 警戒しながら、翔矢は何者が向かってくるのかと陰から覗き込むとヘルメットにレザースーツ、さらに銃のような武器を持った連中が10人ほど向かってきた。

 まるで、外国の特殊部隊のような恰好で、日本で普通に生活していれば、まず見ることの無いような集団だ。


 その集団の身にまとうレザースーツの左胸に描かれたエンブレムは、風車に北と書かれたデザインだった。



 それを確認すると翔矢はペネムエを隠そうと、必死になり抱きしめてしまう。



 「しょしょしょしょしょしょ翔矢様!?」



 立ててはいるものの、歩くことが間々ならないペネムエは、何者が向かってきたかは理解できていない。

 なので、急に翔矢に抱きしめられ、幸せそうな顔をしてパニック状態になっていた。



 「あっごめん……嫌かもだけど北風エネルギーの奴らが来た……

 ぺネちゃんは、動けないだろうし、俺も正直、もう1戦する体力は残ってなくて……

 たぶん今回の、あいつらの目的は狼男の方だと思うから隠れて様子を見よう」


 「ふぁぁおい!!」



 話は聞こえていて状況は理解したペネムエだが、頭の中は幸せホルモンが上回ってしまい、まともな返事は出来ていない。



 「ごめん、足痛かった?」


 その反応を、翔矢は足の痛みのせいだと思っている。


 「あっ足は大丈夫です!! アドレナリンドバドバですので!!」


 「そうなの? 無理はしないでね?」


 さすがに抱きしめるように隠すのはマズイと思い、力を抜いたが、ペネムエは気が付かず翔矢にギュッと抱きついていた。



 (ぺネちゃん……天使って言っても中学生くらいの女の子だもんな、あんな目に合わせた奴らが来たら、怖いよね……)



 という勘違いをした翔矢は、再びペネムエを抱きしめたのだった。



 

   


 ***




 翔矢とペネムエは、身を隠しながら、北風エネルギーの動きを見張る。

 先ほどまでの騒ぎで、店内に居た客は、ほとんど非難したようだが、それでも野次馬は少なくない。


 この状況をスマホで撮影している者までいた。


 「みなさん、お騒がせして申し訳ありません。

 我々は、北風エネルギー対人制圧部隊です」


 武装集団の中のリーダーらしき人物が、メガホンを使い挨拶を始めた。

 翔矢もペネムエも聞き覚えがあるような声だったが顔が隠れていて誰なのかは分からない。

 しかし、ペネムエは自分が北風エネルギーにさらわれた時にいた3人の中の誰かだろうとは感づいていた。



 (対人制圧部隊って……民間企業の部署じゃねぇだろ……)



 そんな事を翔矢は考えていたのだが、いまは身をひそめ、彼らの話に耳を傾ける。



 「このたび、我々が開発していた……肉体労働補助用のスーツが悪意のある者の手に渡ってしまい、今回のような事態を引き起こしてしまいました」


 

 武装集団が一斉に頭を下げる。

 しかし、あの狼男の力は双葉サヤが与えた力だと翔矢とペネムエは気が付いている。

 かなり苦しい言い訳ではあるが、自分たちの開発している商品という事にして魔法と言うものが実在するのを隠すつもりだろう。


 もっとも、真実を語った方が嘘くさくなるし、何より北風エネルギーが双葉サヤに辿り付いているかは定かでない。


 

 「このショッピングモールの補修は、北風エネルギーが全力を尽くし行います。

 怪我をされている方も、管轄の病院にて無償で治療させて頂きます。

 ただし……今回の事件の動画などは、公開しないよう、お願いいたします」



 最後の一言だけが、妙に緊張感のある言い方だった。

 北風エネルギーにとっても、それだけ魔法の存在は隠したいのだろう。

 このSNS時代に、どこまで効果があるかは分からないが、この警告は翔矢とペネムエにとっても好都合だ。


 偽イセカイザーのように顔だけでも隠せれば、誤魔化せたかもしれないが、素顔丸出しで戦闘した翔矢が出回れば、どうなるか分かったものではない。


 北風エネルギーの説明が終わると、けが人は手際よく誘導されていった。

 歩けない人も少なくないように見えたが、このような事態を想定していたかのように大量の担架が用意されていた。

 狼男となって暴れまわっていた男も、けが人と一緒に連れていかれてしまった。


 

 「ふぅ……なんとかバレないで済んだのかな?」



 北風エネルギーが撤退するのを見計らい、翔矢は、コインロッカーのあるスペースから顔を出す。

 翔矢は、狼男の体内から出ていたガチャガチャのカプセルのような物を探したが見つからなかった。

 やはり北風エネルギーに回収されたのだろう。


 

 「ぺネちゃん、ごめん。

 やっぱりカプセル持って行かれちゃったみたい」



 立ったまま、身動きが取れないでいるペネムエの元に、駆け足で戻りながら、その事を報告する。



 「そうですか、北風エネルギーも基本的には、この世界を守る為に動いているはず。

 悪用されるような事は無いでしょうし、命に係わるような怪我人が出なかっただけ良しとしましょうか」


 「そっそうだねぇ……」


 ペネムエは安心したような口調だが、翔矢はグチャグチャになったショッピングモールから目を反らすようにした。


 「翔矢様のお怪我は大丈夫ですか?」


 「俺? まぁあちこち斬られてヒリヒリするけど平気平気!!

 ってぺネちゃんの足の方が一大事でしょ? 歩け……ないよね?」


 「正直立っているのがやっとです、ポーションなど色々使っても歩けるまでに2、3日はかかるかと……」



 ペネムエは申し訳なさそうに下を向く。



 「そっか、まぁ俺らが北風エネルギーに治療してもらう訳にもいかないしな……」



 そう言いながら、翔矢はしゃがんでペネムエに背中を向けた。


 

 「はっはい?」


 「どうやって帰るかは置いといて、今はこの建物から早くでないと。

 あいつら、また戻ってくる可能性もゼロじゃないし……

 あっでも、その足じゃ、おんぶも危ないかな?」



 翔矢は、しゃがんだまま、考え込んでしまった。



 「いえ、平気です!! 折れたのは足首のあたりですので、大きく揺れなければ問題ないかと!!」



 ペネムエは明らかにテンションが上がってしまった。

 足が折れている状態で、ここまでテンションが上がる人物は、そういないだろう。


 しかし翔矢は、思ったより元気そうで良かったと安心するだけで、特には気にしなかった。



 「そっそれでは失礼します!!」


 「うん、痛かったら、すぐ言ってね」


 「はい!! お手数おかけします!!」



 ペネムエは、幸せに満ちた表情だったが、おぶっている翔矢が、その笑顔を見る事はなかった。

 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練って執筆しております。


 少しでも続きが気になったらブクマ登録して頂けると励みになります。


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