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113話:告白から狼男が始まりそうです()

 翔矢とペネムエは、ゾンビゲームで遊んだ後も、30分ほどをゲームセンターで過ごし、2人とも満足した表情で中から出てきた。

 特にペネムエは幸せに満ちた表情をしている。


 「翔矢様!! ありがとうございます!! これは家宝にします!!」



 手の平サイズのリスのキーチェーンをジッと見つめニコニコしている。



 「気に入ってもらえて嬉しいけど、俺のUFOキャッチャーの腕だと、小さいのしか取れなくてごめんね。

 卓夫がいたら、もっとデカい縫いぐるみとか取れたと思うけど……」



 あの後は、UFOキャッチャーのコーナーを中心に見たのだが、翔矢の腕で獲得できたのは、このリスの縫いぐるみを取るのが精いっぱいだったのだ。



 「これくらいの大きさなら、ポーチにも付けられますし、それに……

 翔矢様が取って下さった事に意味がありますので……」



 ペネムエは、自分の口から発した言葉に顔を赤くしてしまう。

 今まで、何度も同じような事はあったが、翔矢はワザとじゃないかと疑ってしまう程、聞き逃していた。

 今回もそうなるだろうと、思っていたのだが何故か、今日だけは違った。



 「え? 俺が取った事にって?」


 「あっ……それは……」



 いつものペネムエなら適当に誤魔化していたかもしれない。

 しかし、この時、彼女の頭には、愛する人の唇を奪った双葉サヤの顔が浮かんだのだ。



 (このまま誰かに……奪われてしまうくらいなら……叶わないと分かっても……)

 


 話しながら歩いている内に、荷物を預けていたコインロッカーの前に辿り付く。

 翔矢は、カバンの中から鍵を探している。

 

 

 今このスペースには誰もいない、それも彼女の背中を押すことになったのかもしれない。



 「迷惑かもしれませんが、困らせてしまうかもしれませんが、伝えさせて下さい。

 わたくしは翔矢様の事が……」



 そこまで口にしたところで、建物の中がやたら騒がしくなってしまった。



 「なんの騒ぎだろ?」



 翔矢はロッカーを開ける前に、声のする方に掛けて行ってしまう


 

 「あっ……」



 その姿を何かを失ったように見つめたが、外の様子がただ事でない気がしたので、すぐに後を追った。



 「翔矢様!! 何が……」


 

 そう聞くまでもなく、一目見て状況を理解した。

 狼男のような姿の生物が、ショッピングモールで暴れていたのだ。



 「御無事ですか?」


 「俺はね、夏休みだから何かのイベントだと思ったけど」


 「どう見ても本物……しかし魔物ではなく人間のようですね」


 「人間? まさかサヤが配ってた魔力の効果で?」


 「……その可能性は高いかと」



 そう思うと、サヤに、気持ちを伝える機会すら奪われた気分になってしまった。



 「まだ、大きな怪我をした人はいないと思う、早いうちに止めよう」


 「はっはいい!!」



 翔矢の言葉で我に返ったペネムエは、ポーチから武器を取り出そうとしたが、いつも首から下げているポーチが無い。



 「すいません……コインロッカーの中です……」


 「えっ? 預けちゃってたの?」



 ペネムエに開けそびれたコインロッカーの鍵を受け取るとすぐに、戻って行く。



 「とりあえず俺が戦わないと……おい!! 狼男!!」



 その呼びかけに狼男はギロリと翔矢を睨んだ。



 「相手になってやるよ、そういうの使えるの、お前だけじゃないからな?」



 いつもポケットに入れている、赤メリを取り出そうとした翔矢だったが、ここで重要なミスに気が付いた。



 「あっ……赤メリ壊れてた、それ以前に盗まれてたんだ……」



 あははと誤魔化した表情で、狼男と目を合わせる。



 「……月見たら変身できたんですか?」



 何故か口から出てきた言葉の後に一瞬だけ沈黙が流れた。



 「やば……」



 急いで逃げようとしたが、狼男は、人間でないスピードで、翔矢を追いかけ殴り倒した。



 「おちょくりやがって、ガキが!!」



 狼男は顔をグリグリと踏んできた。




 

 ***




 その頃、コインロッカーを開けようとしているペネムエは、今は戦う力がない翔矢も一緒に来ていると思い込んでいた。



 「翔矢様、ロッカーの番号何番でしたっけ?」



 しかし、その問いに答える者はいない。



 「翔矢様?」



 振り向くと、翔矢の姿は無かった、まさかと思い狼男の様子を見ると、翔矢が痛めつけられていた。

 それでも、感情を抑え、コインロッカーに戻ろうとするが、狼男と目が合ってしまった。



 「あっ……」



 狼男はペネムエに狙いを定め、高速で向かってくる。

 その攻撃を、何とか回避は出来たが、翔矢に取ってもらったリスのキーチェーンは手を離れ転がってしまう。


 これでパニックを起こしてしまい、必死にキーチェーンを追ってしまった。



 「よかった……」



 すぐにリスのキーチェーンは拾えたのだが、ドーンと言う重い音が聞こえた。



 「あっ……」



 振り向くと、勢い余った狼男の攻撃で、コインロッカーが倒れてしまったのだ。

 これでは、魔法のポーチが取り出せない。

 それでも、この場で狼男に対抗できるのは自分だけだ。



 「これだけ暴れまわって何が目的ですか?」


 「目的なんてあるかよ!! 占い師の女がくれた力で、何もかも壊してぇだけだ」


 

 狼男は体制を直しながら、質問に答えた。


 

 (占い師……やはり、あの女、やたらに力を配っていたのですね)


 

 「お前こそ何なんだ? この姿なら分かる、その匂い……人間じゃないな?」


 「答える理由は、ありませんね!!」



 リスのキーチェーンを、しっかりポケットにしまい、ブレスレットに手を当てた。



 「今は、これしか使えませんが、やるしかないです」

 【超高速】



 ペネムエの速度は、何段階も強化される。

 速度では狼男を上回っている自身はあった。



 (動きを見る限り、グミ様のような、上級悪魔クラスの身体能力は無い。

 恐らくは、亜人くらいの身体能力なはず……

 ならば、この速度で首を蹴れば、確実に気絶させられる)



 超高速からの回し蹴りが狼男に炸裂するかと思われたが、この作戦は失敗してしまった。



 「へへへ、確かに早かったが、野生の勘ってやつか?

 ヤバいのがすぐに分かったぜ」



 ペネムエの足はガッチリと掴まれてしまった。



 「そんな……」


 「この厄介な脚は、悪戯できないようにしないとな!!」



 バキッという鈍い音と共にペネムエの悲鳴が響く。


 

 「しかし、スカートで足技とは、ロリの癖にいやらしい女だ。

 それとも人間じゃないから、そういう感覚は無いのか?」


 ペネムエの足を掴み、宙刷りにすると、狼男はいやらしい目でニヤニヤする。

 ハッとして手で押さえても、体勢的にスカートの中は隠しきれていない。



 「これだけの強さで、やる事がせこいですね」



 精いっぱいの強がりだが、これは相手を刺激する事にしかならない。



 「言ってくれるなぁ、こっちは、そういう部分も野生化してるんだよぉ!!」



 狼男は右手でペネムエの両脚を掴み、左手でスカートを引き裂いた。



 「以前にも似たような事がありました、どなたも考える事が同じですね。

 ワンパターンで面白みがないです」



 「面白みかぁ、そっちは、可愛げがねぇなぁ!!」



 再び狼男の左手がペネムエに迫る。



 (わたくしが、こうして手を出されている間は、他の人間に危害が及ぶ事は無い。

 であれば、たとえ体が汚されようとも、解決策が見つかるまで耐えててみせ……)



 人間を守る為に自分はどんな目に合っても構わない。

 いつも彼女が考えていた事だし、常に覚悟はしていることだ。



 (あれ?)



 しかし、敵の手がゆっくりと迫って来るにつれ、悲しみが心を支配してくる。



 (いや……あの方以外に……触れられたくない……)


 

 悲しみは恐怖に変わり、声となり溢れてしまう。



 「嫌だ!! 助けて!!」



 足の骨が折れているのも忘れ、ジタバタ暴れるが、解放される事は無かった。



 「やっと、可愛げが出てきたなぁ」



 「助けて!! いや!!」


 

 それでもひたすらに暴れ続けるペネムエ。



 「この状況で誰が助けに来るんだよ?」



 ニヤニヤと嫌らしく笑う狼男は、完全に油断し背後から迫ってきている者に気が付かなかった。



 「俺だよ!!」

 【コネクト・ファイター】



 背後から、赤いオーラを纏った翔矢が、力いっぱいのタックルを喰らわせた。

 その衝撃で、ペネムエは宙に跳んでしまった。



 「きゃっ」



 足が折れ、受け身も取れない状況で、地面が迫って来る。

 しかし、心は安心しきっていた。



 「ごめん、遅くなっちゃった!!」



 宙を舞っていたペネムエを、翔矢はお姫様抱っこのようにキャッチする。



 「いえ、わたくしの業界ではご褒美です!!」


 「あれ? 思ったより余裕あった?」



 さっきまでの恐怖と絶望に満ちた表情のペネムエを見ていない翔矢は、拍子抜けしてしまう。

 自分の腕の中にいるペネムエは、喜びに満ちた表情で、顔を赤くしているのだ。



 「余裕はないです、足が折られ、魔法のポーチも倒れたロッカーの下敷きです」


 「普通に大ピンチ!! なんで安心しきってるの!?」


 慌てふためきながら、ペネムエをゆっくり下ろし、狼男の方をジッと睨み付ける。

 そのタイミングで狼男は、体勢を直し立ち上がった。


 「小僧め!! せっかくこれからお楽しみだったんだがなぁ」


 狼男も翔矢を睨み返す。


 「楽しまれてたまるか!! これさえあれば負けないからな?」


 翔矢の右手には、行方不明になったはずの赤メリが装着されていた。

 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練って執筆しております。


 少しでも続きが気になったらブクマ登録して頂けると励みになります。


 下の星から評価も、面白いと感じたら、入れてくださると嬉しいです。

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