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111話:パンケーキから嫉妬が始まりそうです()

 3人は、同じ駅ビルに入っているコーヒーチェーン店スタスタに入る。

 夏休み中とはいえ平日なので、思ったよりは待つことなく席に着くことができた。


 そこで3人は、各々の注文したパンケーキを食べながら話を進める。


 「なるほど、ユリア様は天使だったのですね」


 イチゴのソースがたっぷり掛けられたパンケーキをモグモグ食べながらペネムエはユリアの話に頷く。


 「正確には人間と天使のハーフね。

 パパが人間で、ママが天使なの、だから小さい時しか天界に行った事は無いんだ」



 ユリアもマスカットのソースが掛かったパンケーキを食べながら話を続ける。



 「んで、俺とペネちゃんが一緒に歩いてるの見かけて、俺に声かけて来たんだって。

 うわっ、良く分からないで頼んだけど、これ美味いな」



 翔矢は、良く知らずに頼んだマカダニアンナッツのパンケーキを食べながら付け足す。



 「ファンの子が、私の事を声優回の天使って言ってくれてるのよ」


 「文字通り半分正解っすよね、うわ、ソースめっちゃ垂れてくる……」


 「そう!! それが問題よ!! ファンの子を騙してるみたいで申し訳なくて。

 確かに、慣れてないと食べにくいよね、ホイッ」



 パンケーキを食べるのに苦戦している翔矢の口元に付いたソースを、ユリアは向かいの席から手を伸ばしナフキンで拭いてくる。



 「うわっ、自分で拭けますから!!」


 「男子高校生が大好きなものでつい!!」


 流石の翔矢も顔を真っ赤にし照れてながら、自分で口を拭く。

 この様子にペネムエは眉間にシワを寄せながら、気を紛らわす為にパンケーキを夢中で食べていた。



 「それで、何故翔矢様と友達になりたいと?」



 しかし、ペネムエの機嫌は直らず、口にパンケーキは残っていないのに頬は膨れている。



 「翔矢君とだけじゃなくて、ペネムエちゃんとも友達になりたかったんだけど……

 何か私、嫌われてる?」


 「あ……ペネちゃん、他の天使と、あまり関わりたくない感じらしくて」



 ペネムエの不機嫌の理由を完全に勘違いしてしまっている翔矢は、的外れなフォローを入れる。

 この勘違いに、知り合ったばかりのユリアが気づいたかは定かでない。



 「そうなんだ、残念。

 

 私、知り合いに天使とかいないし、知り合い全員に正体を隠してるっていう状態だった訳なのよ。

 それって、誰も本当の私を知らないみたいで、仲良くしてくれてる人はいても、友達って言いきれなくて……」



 ずっと明るい表情だったユリアの顔が、少し曇り始めた。



 「まぁ友達なってで友達になるとか、小学生でも中々無い気がしますけど、俺は別にいいですよ?」


 

 翔矢の視線は自分のパンケーキをジッと見ていたが、返事はハッキリとしていた。



 「翔矢様!! いいのですか?」


 「ここ最近、色々あったけど、ユリアさんは悪い人じゃなさそうだしね。

 友達になったから何するとかは、良くわからないけど」


 「確かにユリア様は世界を何度も救っておられますし、警戒する必要は無さそうですが……」



 ペネムエは、嫉妬なのか警戒なのか自分でも分からないが、何だか引っかかる物を感じていた。



 「いや、私って言うか、演じたキャラだけど……」


 そう言い呆れながらも、パンケーキを食べるユリア。


 

 「役作りで世界を救ったりはしていないのですか?」


 「役作りで救う世界とは?」



 その後は、他愛もない話をして、3人はパンケーキを食べ終えた。

 結局、ペネムエがユリアの友達になるかは、保留となり、2人の関係は友達の友達という事で話はまとまった。



 「おっと楽しくお喋りしたら、もうこんな時間!!」



 ユリアは時計を見るや否や、バタバタと片づけを始める。



 「用事ですか?」



 ユリアの様子に釣られるように、翔矢も片づけ始めた。



 「これからアプリゲームの企画でネットの生配信があるのよ。

 ミーチューブで見れるから、よかったら見てね!!」


 「へぇ、そういう放送を、こんな田舎から中継?

 あっ今流行りのリモートで参加とかですか?」



 「ん? 東京のスタジオでだよ? 面白い物見せてあげる!!」



 「はい?」

 「???」



 ペネムエと翔矢は目を見合わせ首を傾げる。




 ***




 ユリアに案内されるまま、3人は人のいない非常階段の所まで歩いて来た。


 「ここなら誰も見てないよね?」


 ガサゴソと自分のカバンを漁り、中から鍵のようなものを取り出した。


 【インスタント・ゲート・オープン】


 そう唱えながら鍵を前に掲げると、前の空間がグニャグニャとゆがみ始める。


 「おぉ」


 「これって……」


 まだ何が起こっているかは聞かされていないが、翔矢もペネムエも驚きを見せる。



 「何となくは予想できたかな? 東京の私の家に繋がってるんだ、3カ所まで登録できるから、私が生まれた、ここにもいつでも来れるようにしてるの。

 最後の1カ所は……ナ・イ・ショ」


 

 「すごい……こんな田舎と東京を一瞬で行き来できるんすね!!」



 東京にあこがれを持つ翔矢は、今日一番の目の輝きを見せる。



「すごいでしょ? 友達になった印に翔矢君にもあげるよ」


 

 ユリアは、カバンからもう一つ同じ鍵を取り出して手渡して来た。


 

 「え? いいんすか?」


 「2つ持っててもしょうがないからね」


 ユリアはウィンクをして見せた後、話を続ける。


 「1つは、私の東京の家が登録してあるから、好きに使っていいよ?」


 「自由に東京に遊びに行けるんですね!!」


 「それももちろんOKだけど、私のベットとかも好きにモゾモゾしていいよ」


 「いや……しま……せんよ?」


 「半分冗談よ!! 本当に可愛いなぁ君は


 鍵の残りの2か所の登録は好きに使うといいよ。

 登録の仕方は……って時間がヤバい!! 後でメッセージで教えるね!!」



 ユリアは大慌てで、歪んだ時空の中へと消えて行った。

 その様子を翔矢はボーっと見つめる。

 

 「すげぇ物もらっちゃった……ペネちゃんは持ってる?」


 「いえ……持ってたら便利ですけどね」



 質問に答えるペネムエの表情は、何故か作ったような笑顔だった。



 (持ってない……というより、そんな道具は聞いた事も無いのですよね……

 移動魔法は存在しますが、誰にでも扱える道具で、ここまで小型……

 ほとんど天界に、いた事のないユリア様が、何故こんな物を……)



 今度は難しい顔をしながら考えたが、その答えは出なかった。



 「あれ? ってか俺、有名人に友達認定されちゃった!?」


 「今更ですか?」


 

 慌てふためく、その声にペネムエは我に返り、あきれた笑顔を見せる。


 

 「あはは、フレンドリーな人だったから意識してなくて。

 卓夫が知ったらどんな顔するかな……」



 ふと幼馴染で、ユリアの握手会に誘って来たほどのファンである、大久保卓夫の姿が頭に浮かんだ。



 「今日は、これからどうしましょう?」


 「そうだな……せっかくだから少し店覗いたり、ゲーセンで遊んだりしてみる?」



 その提案には、ペネムエは、さっきの翔矢以上の目の輝きを見せた。



 「喜んでお供します!!」



 この時、2人は天道ユリアという天使の事を、そこまで深く考えてはいなかった。

 彼女の目的を知れば、のんきに遊ぼうともしなかったかもしれない。



 (今は……わたくしにとってのデートを楽しませて頂きましょう)



 2人の買い物は、まだ続くのであった。

 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練って執筆しております。


 少しでも続きが気になったらブクマ登録して頂けると励みになります。


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