110話:声優から逆ナンが始まりそうです()
自分の大切な人の好みに合う水着を選び出し、店を出たペネムエは固まって思考停止していた。
(えっと、わたくしはどうすれば?)
その人が、自分の知らない金髪の美女と話していたのだ。
相手は、この買い物をデートと思ってないので、問い詰めるのもおかしい。
「なんだか……楽しそうですね……」
話し込んでいる姿が、楽しそうに見えたので、この場を立ち去るという最悪の選択肢を選びそうになる。
「あっ、ペネちゃん、ごめん!!
話してて気が付かなかった、こっちこっち!!」
立ち去る寸前だった彼女を引き留める声が聞こえた。
ペネムエは、ホッとした表情をしながら、駆け足で翔矢の元に向かった。
*
「ええっと……翔矢様、そちらの方は?」
その質問に答えたのは、翔矢でなく金髪の美女の方だった。
「初めまして、私は天道ユリアって言います。
普段は声優の仕事してまぁす」
「わたくしは、ペネムエと言います、えっと声優と言いますと?」
「そっかぁ、声優って仕事は他の世界に無いもんねぇ」
そう言いながらユリアは2人から少し距離をとった。
「え? まさか……ペネちゃん、ユリアさんを良く見てた方が良いかも!!」
「はい?」
ペネムエは首を傾げつつ、言われるままユリアの方をジッと見る。
視線を確認するとユリアは、体を三日月のように曲げながら、決めポーズのようにジャンと決めてセリフを叫んだ。
「月光を映す、深きオーシャン!! ポリクレンセント!!」
その姿をみたペネムエはパチパチと拍手をする。
「この前の話でポリキュアの仲間に加わった、ポリクレンセントの声そのままです!!
まさか声優様とは……」
「私が、そのポリクレンセントの声をやっています!!」
エッヘンと得意気に胸を張るユリア。
しかし、ペネムエは複雑そうな表情をしている。
「知ってはいましたが……やはりポリキュアは実在しないのですね……」
「あれ? ポリキュア好きって聞いてやから喜んでくれると思ったんだけど。
子供の夢を壊しちゃった?」
このペネムエの反応は予想外だったのかユリアは慌てた反応をする。
「すいません、俺は薄ら予想してた反応でした……」
翔矢とユリアの反応を見て、ペネムエはハッと我に返った。
「あっ……いえ、ポリクレンセントが好きすぎて、変な反応になってしまっただけです。
せっかくご本人にやって頂いたのに申し訳ありません」
ペネムエはペコリと頭を下げ謝罪をした後、話題を変えようと必死に頭を巡らせた。
「そっそう言えば翔矢様とユリア様は、お知り合いだったのでしょうか?
その……親しく話されているように見えましたが」
不安そうに尋ねた質問に答えたのは翔矢だった。
「いや、初めましてだったけど、色々あってね。
これからペネちゃんとも話すと思うけど」
「初めましてって……ひどいわ!!
あの時は、私の手を強く握りしめてくれたじゃない!!」
ユリアはワザとらしく涙を拭うような仕草をする。
「翔矢様!! それは本当ですか?」
「うん、まぁ、握手会に行ったからね、卓夫に連れられて。
こういう場合も初めましてっておかしいんですかね?」
今度は翔矢がユリアに質問する。
「おかしくないと思うけど、私たち、もう友達でしょ?
だから少しショックでした!!」
「難しいですね、すいません……」
「さっきから全く状況が呑み込めてないのですが、お二人は出会って数分で友達になられたのですか?」
「翔矢君がイケメンだったので、思わず声かけて頼んじゃいました!!」
「その気持ちは分かりますが……」
ユリアの言葉に、ペネムエの表情は曇ってしまった。
「ユリアさん……いい加減な事ばかり言わないで下さいよ。
ぺネちゃんも、変なところで話し合わせなくていいから」
2人の会話を聞いた翔矢は頭を抱えて困り果ててしまう。
「ごめんごめん、ペネムエちゃんとも、ゆっくりお話したいからスタスタに入ろうか?」
「そういえば、この前入ろうとして、行きそびれたんですよねスタスタ。
もうすぐ昼ですし、入りましょうか」
(今のは、話合わせたのではなく本心だったのですが……)
ペネムエの悲しげな表情に翔矢が気が付くことは無かった.
今回登場した天道ユリアは11話にも登場しております。
何年ぶりの登場やという……
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