108話:情報番組から初デートが始まりそうです()
翔矢とペネムエは、ゼウと連絡がつかないまま、その事をすっかり忘れ、翌朝を迎えてた。
今、2人はテレビを見ながら朝食を食べている。
「夏休みというのは、普段学校に行っている間にやっているテレビが見られて楽しいですね」
「あぁ確かに、いつもは『目が覚めちゃったテレビ』の占い見たら学校に行くからね。
『得シタネ』は、俺も祝日に起きれたら見るくらいかな」
そんな話をしながら、朝の情報番組を見ていた。
「夏休み本番を向かえ、各地の海水浴場は、多くの人で賑わっています」
テレビでは、どこかの海水浴場の様子が映し出され、砂浜が確認できないくらいの人だかりが報じられていた。
「うわぁ、都会はヤバいな……人ばっかりで遊ぶスペース無いじゃん」
「海では、どのような遊びをなさるんですか?」
「泳いだり、ボート乗ったり、砂浜でバレーとかかな?
俺も、そんなに海で遊んだ事ある訳じゃないけどね。
ペネちゃん、海で遊んでみたい?」
「危険な海で遊ぶという概念があまりないのでピンと来ないですね……
しかしノーマジカルの海であれば、人喰いワカメも人喰いヒトデもいないので、深い所に行かなければ安全でしょうか?」
「まぁ毎年事故は起こるけど、怯えるほど危なくはないかな?
……ってか異世界のワカメって人間を喰うの? こわっ!!」
「せっかくですし、その……翔矢様と海で遊んでみたいです。
この世界の水着という物も可愛いらしいですし」「
ペネムエは顔を耳まで、真っ赤にしている。
「水着かぁ、ぺネちゃんの服はデザインを変えれるだけだから、海では使えないのか」
「です!! です!! 是非とも翔矢様に選んで頂きとうございます!!」
「えっ? 俺が?」
ペネムエの、いつも以上に丁寧な口調での強い提案に翔矢は、少し怯んだような表情になってしまった。
2人が水着の話をしているのを察知したかのように、テレビの場面は水着の女性へのインタビューへと切り替わった。
『そうなんですよ、この水着は彼氏が選んでくれて……』
「かっかれれれの彼氏!?」
そのインタビューに反応したペネムエの挙動は、さらに騒がしくなる。
「女の子の水着は、だいたい同性の友達と選ぶか、恋人同士で決めるんだよ、知らんけど」
「わたくしの同性の友達はリールしかいませんが……」
「まだ、こっちに帰って来てないもんね」
「そうなのですが、翔矢様、リールのいつもの服を覚えていらっしゃいますか?」
「あぁ……」
リールとは、最近はバイトの服装であるメイド服で会う事が多かったが、彼女が天界から着てきた服は、それはそれは露出の多い姿だったのを思い出した。
「まぁ選び方は置いといて、とりあえず店に行ってみようか?」
「よろしいのですか?」
ペネムエの目はキラキラと輝いている。
「うん、今日は用事もないし、最近堅い話をする事が多かったからね。
たまには、遊びがてら出かけよ」
「よっしゃー!!」
ペネムエは、すごい勢いでガッツポーズをした。
その様子に、翔矢は唖然として声が出ず固まってしまった。
「こっこれは、はしたない真似を……」
我に返ったペネムエは、また顔を赤くして、俯いている。
「いや、喜んでくれるのは、俺も嬉しいけどね!!
さっそく、出かけようか?」
「はい!!」
***
こうして買い物へと出かけた2人は、電車に乗っている。
夏休み中という事もあり、電車内は田舎の電車にしては混んでいて、ちょっと席を探さなければ座れないくらいだった。
(どどどどどうしましょう?
よくよく考えたら、これは噂に聞くデートなのでは!?
わたくしなどが、こんな幸せな経験をして、明日無事に生きられるのでしょうか?)
翔矢と並んで、座席に座り、そんな事を考えていた。
いつもは、魔法のブレスレットで他の人間から姿がみえないようにしているが、今回は買い物なので、誰からも姿が見えるようにしている。
(やっぱり、到着まで姿を隠しておくべきでした……
少し注目されています……)
彼女の容姿は、どうみても日本人ではないし、外国人としても珍しい髪の色だ。
今までも何度か姿を隠さずに出歩いた事はあったが、そのたびに注目を浴びてしまったのだ。
(わたくしなどとデートしていると思われては、翔矢様が女性の趣味を疑われたりしないでしょうか?)
自分に自信が極端に無いペネムエは、そんな心配までしていた。
「ペネちゃん、やっぱり悠菜から返信来ないや」
「えっ? えっ? なんでございますか?」
「あっ、ペネちゃん俺の話、聞いてなかったでしょ?」
「無視訳ありません……」
「ペネちゃん電車に乗るの初めてだもんね。
アニメとかだと、初めて電車に乗るとハシャギまくったりするんだけど、ペネちゃんは、そういう所は大人だよね」
「からかわないでください!! と言いたい所ですが、翔矢様は、マジックラウドに乗った際は、はしゃいでおられましたね」
「グサッ、俺の方が、子供でした……」
ペネムエの指摘に翔矢は、ガクッと肩を落とす。
「えっえっと、悠菜様から返信がと、おっしゃっていましたか?」
「そうそう、やっぱ選んでくれる人がいた方が楽かと思って。
悠菜ならペネちゃんの事、気に入ると思ったし、来てくれば良かったんだけどね」
「そう……ですね。
夏休みですし何か、用事があるのでしょう」
ペネムエの心が、何かに捕まれるような悲しさに襲われたが、翔矢に覚られまいと必死にこらえる。
「そういや、大学生の動画投稿者の人の企画に参加させられるって言ってたな。
あれ今日だったっけ」
(翔矢様は、デートとは思ってくれてないんだ……
でも……いつか……いつか、少しでも意識して下さると嬉しいです)
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