107話:遭遇から目撃が始まりそうです()
ゼウと健吾は人気のないシャッター街で数秒間、睨みあっていた。
「そんじゃあ、男と見つめ合ってる趣味はないんで、俺から行かせてもらうぜ!!」
【リアライズ】
健吾がそう唱えると、首から下げていたペンダントのような物が、ビームサーベルのような形状へと変形した。
「魔法の研究をしている組織との報告は受けていたが……ずいぶんと珍妙な物を開発したものだ」
「ったく、兄貴もドクターも、銀色のカワイ子ちゃんにペラペラと話すから、俺らの事、ほぼほぼバレてるじゃねぇか。
まぁ、俺には関係ないけどな!!」
そう言いながら、健吾は武器を振る、するとビームサーベルは、鞭のように伸びゼウへ向かっていく。
「まぁ、雷の速度で動く奴に簡単には当たらんわな……」
だが、その一撃は建物の外壁に焼き跡を付けるのみで、ゼウに当たる事は無かった。
「これは、相手が人間だからと手加減をしていたら、俺の命が無さそうだ。
もっとも貴様に、人間だからという気遣いが必要なのかは分からんがな」
ゼウは、回避は間に合った物の、頬に冷や汗が伝っている。
「おやおや、銀色のカワイ子ちゃんには、俺の正体はバレてないと思うが……
気が付く奴は気が付くんだなぁ」
健吾は、相変わらずおちゃらけた声色で話してはいるが表情は、鋭く変わっていた。
「ぼんやりと、人間でない何かを感じるだけだ、それが何なのか分かった訳ではない」
「じゃあ、バレる前に倒しちまうかね!!」
健吾は、人間の肉眼では負えないような速度で鞭を振るうが、ゼウも雷の速度で走り回避を続けている。
「この武器を使ってる間は、身体能力も向上してるんだが……
やっぱり魔力を直で注入する程じゃないか」
(この俺が回避に専念するしかできないとは……
このままでは、いずれ直撃する、ならば!!)
「へぇ……そういう危ない事しちゃう……
その怖い手なら痛覚も無いのかい?」
ゼウは、壁を焦がす程の熱を持つ鞭を雷鬼の右手でガッシリと掴んでいた。
健吾は、その様子に怯んだ様子だが、口では平静を装っていた。
「いや、残念だが痛覚は人並みに感じる……
だが、武器を掴んでしまえば、これ以上のダメージに怯える事もない」
「戦闘民族か何かかよ……俺らの価値観で考えてもダメそうだな」
「おしゃべりは、終わりだ、殺してしまっては厄介だから致命傷で勘弁してやる
【雷の鉄槌】」
健吾の視界から消えたゼウは、数舜の内に限界まで間合いを詰め、鞭を強く握ったままの右手に雷を纏わせ、健吾の顔面目掛けて殴り掛かる。
(やべぇ)
これには一瞬恐怖を感じた表情を見せたが、彼に攻撃が届くことは無かった。
「やはり、この武器が貴様の本気ではなかったという訳か……」
ゼウの拳は、フワフワと浮かぶ白銀のキューブの放つオーラに阻まれたのだ。
これ以上は、危険と判断しゼウは後ろに間合いを取り、鞭からも手を離した。
「仕方ない……命には代えられねぇし、今の本気で戦うとするか」
【魔装】
白銀のキューブを握ると、健吾の頭上には魔方陣が展開された。
魔方陣からは、ドス黒いモヤが家事現場の煙のように溢れて来る。
「おっ、結構溜まってたねぇ、やっぱりあいつの才能は桁違いだったか」
健吾は魔法人を見上げながら、スポーツの試合をテレビで見ているかのように感想を述べる。
「これは参ったな……安易に敵に本気を出せと言うもんじゃないな……」
あふれ出る靄を見上げるゼウは、恐怖を感じ、自然と足が後ろにすくんでしまう。
「その意見は俺も賛成だな、まぁ今回は、ここでお開きみたいだ。
次から気おつけな」
「そうさせてもらうか」
2人は、少し前から、この場に駆け足で近づいて来る人間の気配に気が付いていたのだ。
銀色のキューブは、健吾の手から離れ、フワフワと飛んでいき、靄と共に消え去って行った。
「こっちも、あんたらみたいな生物を公にするつもりは無いんだ。
この場は得意の雷でさっさと逃げな。」
「それは、お前の協力してる組織としての意見のようだな。
言葉に甘えて退散させてもらおう」
そう言い残しゼウは、この場を足し去ったのだった。
***
ゼウが立ち去った後も、健吾は、その場を動かずに、ここに向かってくる者を待ち構えていた。
「おのれ!! 奴らめ!! とうとう、この町まで攻めてきたのか!!
って健吾先輩?」
そう言いながら、騒がしく登場したのは、剣道部の後輩でもある阿部瑠々だった。
「おぉ瑠々じゃねぇか、いつもみたいに厨二病ごっこか?」
「厨二病ごっこではない!! 確かに邪悪な気配を感じたのだ!!
勇者の魂を持つ我には分かる!!」
馬鹿にしたような態度を取る健吾に、瑠々は頬を膨らませ怒っている。
「悪い、悪い。お詫びに俺の部屋で遊んで行くか?」
「……さっき感じた邪悪な気配よりも邪悪な誘いを受けてる気がします」
瑠々は、さすがに健吾に家にまでは行かなかったが、帰り道は2人で並び歩いたのだった。
***
この場での一部始終を、占い師の双葉サヤは、建物の上から観察していた。
「喧嘩っぱやい電気野郎の他に、あんな奴らまでいるんですか……
やっぱり、ちゃんとした能力者を生まないと、目的は厳しいですね。
気が進みませんが、お姉ちゃんに頼んで、ダーリンを仲間にしてもらいますか……」
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