103話:土下座から衝撃の事実が始まりそうです()
「本当に、すいませんでしたぁ!!」
翔矢は、ペネムエ・ゼウとともに帰宅し、自分の部屋でゼウに頭を下げていた。
「気にするな、俺も紛らわしい事をしたからな」
翔矢の謝罪に、ゼウも頭を下げた。
その話にソワソワしながら、ペネムエが入って来た。
「えぇっと御2人の話をまとめますと、ゼウ様はノーマジカルに来てすぐに、占い師のような格好の女性が、ノーマジカルの人間に魔力を注いでいるのを見かけ問いただしていた。
そこに居合わせた、翔矢様が、ゼウ様を魔法の力を得た人間と思い、女性が襲われていると勘違いして、攻撃を仕掛けてしまったと……」
「その通りでございます……」
何故かペネムエのような丁寧な口調になり、再び頭を深く下げた。
「奴の顔は覚えた、次に見かけたら問いただすさ……
それより、君の武器を壊してしまったな……」
「まぁ、これ無かったら俺なんて、魔法相手じゃ戦力外になるんで、困らないって言ったらウソですけど、俺の早とちりのせいだから気にしないでください」
口では、そう言っている翔矢だが、赤メリを見つめる眼差しは寂しげだった。
「その武器の代わりと言っては何だが、何かあれば、これからは俺も力を貸そう。
幸いノーマジカルでも、雷鬼の力は使えるみたいだしな」
そう言いながら、ゼウは翔矢に金色の魔法石を差し出した。
特に説明はされなかったが、通信用の魔法石だと察して、そのまま受け取った。
「それは助かります」
「ゼウ様は、ノーマジカルに、魔法を使った事件の捜査にいらしたのですか?」
「いや……ノーマジカルの事件や北風エネルギーについて聞かされてはいるが、別件だ、
アイリーン様に、この世界で、ある調査を頼まれてな」
「アイリーン様……」
「ペネちゃん?」
アイリーンという名前を聞いた瞬間、ペネムエの顔色が悪くなったのが翔矢の目にも分かった。
「あっいえ、大丈夫ですのでご心配なく……」
口ではそう言っていても、明らかに大丈夫そうではない。
しかし翔矢も、それ以上の追及はできなかった。
「気持ちは分かるが、あまり警戒はしないで欲しい……
これ以上何かをするつもりなら、アイリーン様も最初から君をA級に昇格させてはいないさ」
「そう……ですよね」
ゼウの話に一応の納得をしたのか、ペネムエの表情は、先ほどよりは柔らかくなった。
しかし、今度は翔矢の顔が険しい物になった。
「ちょっと待って!! まさか、そのアイリーンって奴、ペネちゃんの事を!!」
興奮し立ち上がりながら、大きな声を出す翔矢だったが、それ以上話す前に、ゼウは話を遮るように口を開いた。
「君の想像は、恐らく当たっている。
だが、それは天使の問題だ、人間の君の感情で、どうなる問題ではない」
「だからって!!」
それでも翔矢の興奮は収まる様子は無い。
そんな彼の手を、ペネムエはギュッと握った。
「ペネちゃん?」
その顔を見ると、涙を堪えているのが分かる。
「わたくしのために、怒って下さりありがとうございます……
でも、わたくしは今、ちゃんとここにいますから……」
「うっうん」
その言葉と表情で、翔矢の中の怒りはスゥっと収まった。
「余計な心配をさせる話をしてしまったな……
そのアイリーン様から依頼された調査について、ペネムエに話しておきたい事がある」
そう言いながら、ゼウは翔矢と目を合わせた。
席を外してほしいのだと察した翔矢は、立ち上がり部屋を出ようと立ち上がる。
「そう言えば、飲み物も出して無かったですね。
レモネードでいいですか」
「何でもいいが、ずいぶんとピンポイントなメニューを出して来たな……」
「なんか頭に浮かびました、ちょっと用意してきます」
*
翔矢が部屋を出ていき、ペネムエとゼウの2人になると、若干気まずい空気になる。
「それで、わたくしに話とは?」
「少し話しにくいんだが……アイリーン様とは昇格試験で戦っただろう?」
「はい」
「その時、アイリーン様は君の記憶を覗いたんだ。
主に君がノーマジカルに派遣された理由についてだ」
ペネムエは一瞬考えたが、隠し通す事は不可能だと判断し、自分から打ち明ける事にした。
「マキシムという世界に君臨した、大魔王ベルゼブ。
彼を打ち倒す為に、女神アテナ様は、ノーマジカルの人間を転生させる計画を立てました。
しかし天使が人間の命を故意に奪うという事に反対した女神アルマ様が、転生を阻止するためにわたくしを派遣したのです」
「聞いた通りだな、俺はマキシムからの全天使撤退命令が出るまで、マキシムに派遣されていたんだ、任務は文明調査だったがな」
これには、ペネムエも驚きの表情を隠しきれなかった。
「正義感の強い天使が、大魔王ベルゼブに挑み、命を落とす事を避けるための撤退命令と聞いています。
ベルゼブに挑むことを、いくら禁止したとしても、人間の為に立ち向かおうとする天使は少なくないでしょうから」
ペネムエは、少し寂しそうな目をしていた。
自分の親友であるリールも一歩間違えば、大魔王ベルゼブに挑んでいたからだ。
「それがそもそも妙な話なんだ」
「と言いますと?」
「俺は、この前のA級天使昇格試験を受けるまで、そのマキシムで文明の調査を行っていた」
「えっ?」
「そしてマキシムは、少なくとも俺が派遣されている間は、平和な世界だったんだ」
ペネムエは、驚きの余り、何もいう事ができなかった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。
ストーリは一生懸命練って執筆しております。
少しでも続きが気になったらブクマ登録して頂けると励みになります。
下の星から評価も、面白いと感じたら、入れてくださると嬉しいです。




