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101話:呼び出しから参加が始まりそうです

 ミーンミンと蝉がうるさく鳴く中、、翔矢は高校2年の夏休み初日の朝を迎えた。


 「ふぁー」


 大きなあくびをしながら、特に用事がある訳でもないのに、学校があるのと同じ時間に起床した。


 「親父は……昨日遅く帰ってきて今日は休みだから、ほとんど寝てるだろうな」


 部屋着にい着替えながら、1日の日程を立て始める。長期休みは、いつもと違うリズムになりがちなので、毎回朝に日程を立てるのが翔矢のやり方だった。

 

 ましてや、今回の夏休みは、いつもの長期休暇とは訳が違うのだ。


 

 「ぺネちゃん……も昨日は遅くまで頑張ってたみたいだな」


 

 机を見ると、頭を伏せて寝ているペネムエがいる、1回起こして布団かマジックラウドに寝るように言った方がいい気もしたが、気持ちよさそうに寝ているので、このままにしておく事にした。


 

 「夏って言っても、毛布は掛けた方がいいかな?」



 押入れから毛布を取出し、ペネムエにそっとかけた。

 外は、夏日だが部屋はエアコンが効いていて涼しい、このまま寝かせては体が冷えてしまいそうだったからだ。




 「起きてるのは俺だけか……2人の朝と昼ごはん用意して、軽く出かけようかな」



 せっかくの夏休み初日なので、とりあえず近場に出かけようとしているタイミングで、スマホからピロリンと通知音が鳴った。



 「悠菜からか……珍しいな」



 通知は幼馴染の悠菜からのメッセージだった。


 悠菜とは学校では、そこそこ話すし仲もいいが、メッセージアプリでまで話す事は、ほとんどない。


 そのまま内容を確認すると、可愛らしいハムスターが泣き目で助けてと話しているスタンプだった。


 

 「なんじゃこりゃ?」



 

 

 *****






 「で? 夏休み初日の朝っぱらから、何がありやがったんだ?」



 翔矢は、悠菜に駅前の喫茶店に呼び出されていた。

 リールがバイトをしている喫茶店だが、彼女は天界から帰って来ていない。



 「えーっと、ご主人様、お嬢様、お待たせしました」



 店にいないリールの代わりに、注文した飲み物を運んできたのは、最近ここでバイトを始めた後輩の瑠々だった。


 瑠々は、2人の好みを理解してか、自然に翔矢にコーヒー、悠菜に抹茶ラテを給仕した。



 「瑠々ちゃんのメイド姿は、いつ見ても癒しだよぉ」


 悠菜は、翔矢と話している途中だったのも忘れて、瑠々のメイド姿に涙を流している。


 「そんなぁ、悠菜先輩の方が着てみたら似合いますって」


 瑠々も褒められてまんざらでもない様子でデレデレと照れている。



「私は恥ずかしいよぉ!!」


 

 「……帰っていいか?」


 悠菜と瑠々の身の無い会話に飽きてしまった翔矢は、席から立ちあがり、帰ろうとした。


 

 「ステイ!! ステイ!! 待ってよぉ!!」


 「じゃあ早く要件を言ってくれ……」


 

 本当に立ち去ろうと思っていた訳ではないが、悠菜に言われて席へ戻る。



 「まぁ、ここのコーヒー美味いから飲み終わるまではいるけどな。

 その間に話してくれ」



 落ち着いた口調で、コーヒーを1口、味わった。

 この喫茶店には、何度か来ているが、やはりここのコーヒーは格別だと思った。



 「実はテスト期間中に、真理ちゃんに動画投稿者さんの企画に応募させられたんですよ!!」



 悠奈は、自分のスマホを取り出すと、すぐに動画アプリを起動し1本の動画を再生した。


 他に客がいなくて暇なのか、さらっと瑠々も席に座り、一緒に見だした。


 その内容は、男子大学生と思わしき3人組がテニスコートで、次々とスゴ技を披露していくという物だった。



 (あぁ、テストのときの休み時間に、そんな話をしてたな)



 「で、この動画の後に視聴者参加企画の募集があったのですが……

 当選しやがりましたぁぁぁ」



 悠奈はテーブルに頭を付き、ドンドンバタバタと暴れ始めてしまった。



 「お前テニス部だし、別にいいじゃねぇか。

 顔出し嫌なら、適当なマスクでも付けていけよ」


 

 彼女の様子に呆れながらも、翔矢は、ここでコーヒーを飲み終えたので、そろそろ帰りたくなってきていた。



 しかし、瑠々は真剣な表情で話を聞いていた。



 「……いや、我は聞いた事がある、大学でテニスをする男に、ろくな者はおらぬと!!」


 「お前、世界中のテニスやってる奴に怒られろよ……」



 だが翔矢は、瑠々の話を真面目に聞いてはおらず、ただ聞き流すばかりだった。



 「うわーーーん!! 嫌だ!! 嫌だ!! 行きたくないーーー!!」



 翔矢の塩対応に、悠菜は再び駄々をこね始めた。



 「だから!! 俺に何をしてほしいんだよ」


 「グスン……3人で参加する企画だったから、翔矢君に女装して一緒に来てもらおうと思って……」



 イラ立ち始めた翔矢に、演技なのか本気なのか、悠菜は涙を拭いながら話を続けた。


 

 「行きたくないとか言いながら、やっぱり付いてこいって話かよ……」


 「真理ちゃんは、イケメンが絡むと止まらないんだよぉ!!」


 「止まらないのは、お前もだろ……

 おい!! 待て!! さっきなんて言った!?」



 翔矢は、気が進まないながらも悠菜に付いて行ってもいいと思っていた。

 しかし、先ほどの悠菜の言葉に、聞き捨てならない文言があった気がしたのだ。



 「えっ? 翔矢君にも一緒に来てもらおうって」


 いつの間にか、涙が乾いていた悠菜は、首を横に傾げ、何を聞き返しているのという表情をしている。


 「その前だ!! 恰好的な事を何か言ってただろ!?」


 「あぁ翔矢君も、少し自分に自信持ってもいい位は格好いい思うよ?」


 「そんなん言われても照れないからな?

 お前や真理が、その大学生をイケメンって言ってるからって妬いてる訳でもないからな?

 俺に変な格好で参加しろって言ってたろ!!」


 

 翔矢の口調は、さらに強くなり机をドンと叩いた。



 「変な格好? あぁ!! 翔矢君の女装は変じゃないよ?

 ほらぁ去年の文化祭の時に、男女逆転喫茶で女装した時とか、可愛すぎて他の学校の生徒からナンパされてたじゃん」


 「そうなのか?」


 悠菜の話に、瑠々が興味を持ったのか乗り出してきた。


 「そうだよ!! ほら、その時の写真!!」


 悠菜は、素早くスマホを取り出し瑠々に見せた。

 そこには、メイド服に金髪ロングのカツラをかぶった翔矢の姿が映っていた。



 「おい!! なんで、んな写真が、すぐに出て来るんだよ!!」



 驚いた翔矢は、目にも止まらぬスピードで悠菜のスマホを取り上げた。



 「ちょっと!! 女子のスマホを力ずくで奪うなんて最低だよ!!」


 「盗撮も最低だけどな!!」



 と言いつつも、最低と言われたのが少し刺さったのか、スマホはそのまま返却した。



 「なんだぁ、翔矢先輩もメイド服、着た事あったんじゃないですかぁ」


 「文化祭って、そういうとこあるし、流れとノリでな」


 「でも正直、その辺の女子よりも可愛いと思いますよ?」


 「別に、嬉しくねぇよ!! あと付いて行くにしても女装なんかしないからな!!」


 「だって、女の子3人で参加してって書いてあったんだよぉ!!」



 悠菜は、またまた泣き出してしまった。



 「じゃあ、瑠々でも連れていけ!!」

 

 翔矢も、再び不機嫌になり席を立ちあがった。


 「それは……つまり勇者の魂を持つ我に、悠菜先輩を護れという事だな!! 任された!!」


 「……そういう事でいいや」



 勢いで言ってしまった事だったが、本人が乗り気だったので、止める理由はなかった。



 「え? 瑠々ちゃん来てくれるの? やったーーー!!」


 瑠々の事を気に入っている悠菜も、また両手を挙げ機嫌を直したのだった。



 (なんか丸く収まった……)



 思っていた展開と違ったが、翔矢もとりあえず機嫌を直したのだった。




 

 

 *****






 その頃、テニスサークルの大学生3人組は、町中にいた。


 「ヘイ彼女!! 僕とお茶しない?」


 「急いでるので……」

  

 今時、誰も使わないような文言でナンパをしていたが、女性からは当然のように逃げられてしまった。


 「誠、お前は顔だけで、本当にナンパヘタだなぁ」


 「うるさいなぁ、お前らだって1回も成功してねぇじゃん!!」


 「まぁ、遊びで上げた動画で、現役JK釣れたしいいんじゃね?」


 「でも、こんなんで、俺らまともにJKを頂けるんだろうか?」



 その言葉で、3人は静まり帰ってしまった。



 「じゃあさ、気休めにあそこの占い師に見てもらおうぜ!!」


 

 1人が指さすと、数十メートル先に、露店の占い師が見えた。


 

 「お前、占いなんて信じるのかよ」


 「ノリだよノリ、占いとかJKも好きだろうし話のタネにもなるだろ」


 そんな会話をしながら3人は占い師の元に行った。


 

 *



 「いらっしゃいませーーー!!」


 

 (((かっかわいい)))


 

 3人が露店に付くと彼女は、占い師と思えない満面の笑みで明るい挨拶をした。

 それこそ女子高生位の年頃で、容姿はかわいくも美人でもあり、3人はすぐに心を打ちぬかれてしまった。


 

 「占ってもらおうと思ったんだけど……俺らと遊ばない?」


 

 3人の中の1人が、震える声でナンパを始めた。

 成功した事は無いがナンパするという行為には慣れていた彼らだが、彼女の容姿の前に緊張が隠せなかった。



 「良いですよ?」


 「えっ? 本当に?」


 初めて成功した上に、アイドル以上のルックスの彼女が、OKをしたことに彼らは人生1番のテンションになっていた。


 「えぇ、ただし、あなた方の考えてる遊びとは違うと思います」


 そう言うと、占い師は水晶玉に両手をかざした。



 するとドス黒い光が3人の中に入っていき、3人は意識が朦朧とした。



 「東京では大事になっちゃいましたからね、今回の力はノーマルを3等分したので、『遊び』レベルです」



  

 *




 「何だったんだ? 今の……」


 数十秒ほどが過ぎて3人の意識は戻ったが、そこにいた占い師は、露店ごと消えてしまっていた。

 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練って執筆しております。


 少しでも続きが気になったらブクマ登録して頂けると励みになります。


 下の星から評価も、面白いと感じたら、入れてくださると嬉しいです。

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