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100話:パンケーキからカップラーメンが始まりそうです

 「うーん……」



 翔矢の部屋で、彼の勉強机を借りて、書類を眺めているペネムエ。

 声が漏れてしまう程に頭を抱えていた。


 

 「文明調査の為の食事代、タピオカミルクティー660円……」



 今、眺めているのは日本のどこかに派遣されている天使の提出した領収書だった。



 「これ、経費出していいんですかね? わたくしには決めかねます……」



 悩んだ末、保留とかかれた箱に、入れておく事にした。



 「次は……文明調査の為の、天井ガチャ代が5万円……

 ガチャガチャって、あのスーパーに置いてあるカプセル出てくる奴ですか?

 高いのでも1回500円くらいだったはず……それを5万円分? 分かりません……これも保留で……」



 ペネムエが、今までに仕分けた領収書を、チラリと見ると、ほとんどが保留の箱に入れていた事に気が付いた。



 「つっ次で領収書の確認は1回止めましょうか……

 領収書……苦手です」


 

 うまく仕訳が出来ないペネムエは、次で1回中断することに決めた。 



 「文明調査の為にネットゲームの配信を行う機材が……15万円!?」


 ペネムエは金額に驚き目をゴシゴシと擦った。


 「ゲームって、翔矢様がたまに遊ばれてる、あれですよね?

 こんなに高いはずがありません」



 ペネムエは、部屋のテレビに繋がれている黒いゲーム機を見た後、もう一度領収書を見直した。



 「きっと見間違え……ん?」



 ペネムエが、もう一度、領収書を見直すと、確かに自分の身間違えだった。

 だが、それは思っていた見間違いとは、別の間違い方だったのだ。




 「150万円!? 車ですか? 車配信なんですか?」



 配信と言ってもゲームに使う物が、そこまでの金額をするのが信じられなかった。



 

 「これは、さすがに却下です!! 却下です!!」



 今回の領収書の仕分けで、初めて却下と書かれたボックスに投下された。



 「ふぅー」


 

 大した事はしていないのだが、ペネムエは、大きな仕事をやり遂げたような気分になった。

 



 ガチャ



 「あっ、翔矢様、お帰りなさいませ!! ……それは?」



 さっきまでは、鬼の形相で、領収書とにらめっこしていて気が付かなかっただろうが、1段落した今は、部屋に戻って来た翔矢にも、すぐに気が付く事が出来た。


 そして翔矢の手には、お皿にドンと乗った生クリームに、ハチミツたっぷりのパンケーキ、お盆には紅茶とコーヒーも乗っているのが見えた。



 「ただいま!! 少し前に帰って来てたんだけど、ペネちゃん忙しそうだったから、台所でおやつ作ってみたんだぁ」



 そう言いながら、ペネムエが使っていた勉強机とは別の、部屋に置いてある机にお盆をドンと置いた。



 「それは、ご迷惑をおかけしました」



 ペネムエはペコリと頭を下げながら、自分の分のパンケーキと紅茶を取った。

 お盆には紅茶とコーヒーが置いてあったが、ペネムエが紅茶を取るのは、いつもの流れのようになっていた。




 「いいよ、忙しいの分かってたし……順調?」



 翔矢は聞きにくそうにしながらも訊ねた、勉強机の上の惨状を見れば、聞かなくても分かったのだが……



 「正直、慣れるまでは大変そうですね、本で読んだ知識だけで解決できないのは、苦手です……

 あっ頂きます!! パク」



 パンケーキは、翔矢が張り切りすぎた事もあって、5段重ねになっているのだが、ペネムエはパクパクと口に運んでいく。



 「べっ別に急がなくてもいいからね……」



 ペネムエの様子に驚かされながら、翔矢も一緒にパンケーキを食べた。


 

 「あっ、あのさぁ、やっぱり天界の仕事って忙しい?」



 様子を見てれば、聞かなくても分かる事なのだが、話さなければ間が持たないような気持になってしまう。



 「正直、リールに命を狙われていた方が楽でしたねぇ」


 「えっ?」



 意外な回答に、翔矢は固まってしまった。



 「冗談を言ってみたのですが……不快だったでしょうか?」


 「いや……ペネちゃんも冗談とか言うんだなって、驚いただけだよ」


 「わたくしだって、言う時は言わせて頂きますよ!!」


 「ははは、ごめんね」



 なんだか取り繕った感じになってしまったが、翔矢はペネムエが冗談を言ってくれたのが嬉しく感じた。


 

 「それで思い出したけど、リールって、まだこっちの世界に来れないの?」


 「そのようですね、能力者と戦いになる可能性も考えると、リールがいてくれると頼もしいのですが……」


 ペネムエはパンケーキを頬張りながらも、神妙な顔をしている。



 「でもペネちゃんも強くなったんでしょ? 何とかならないかな?」


 「強くなったと言っても、ノーマジカルで魔法は使えませんし、神槍ブリューナクの力を人間に向ける訳にも行きませんので」



 「ってなると、万が一の時は、俺が『赤メリ』で戦うのが1番安全って感じかな」



 翔矢は、ポケットに入れっぱなしにしている赤いメリケンサックを取り出した。  

 


 「赤メリとは?」



 ペネムエは、キョトンと首を横に傾げた。



 「銀の鎧の騎士から、これもらった時は、箱の形だったけど、もう面影無くなっちゃったし、正式名称のマモンキューブって言うのも違和感あってさ。

 しかも、北風エネルギーの女の子も、マモンキューブの武器持ってたから、オリジナルの名前を付けようと思って、赤いメリケンサックだから赤メリ!!

 変かな?」


 

 「分かりやすくて、いいと思いますよ」



 翔矢の口調は恥ずかしそうではあるが、明るい物だった。

 しかし、その明るさは、何か無理をしているのだとペネムエは感じていた。



 (やっぱり、戦いたい訳は無いですよね……

 力を手に入れてしまった責任感でしょうか? どうか、この六香穂で事件が起こりませんように)



 ペネムエは、祈る事しかできなかった。


 

 


 

 *****






 その日の夜も、ペネムエは勉強机を借りて仕事を続けていた。


 (ぺネちゃん大変そうだな……そろそろ寝ようと思ってたけど俺も宿題進めちゃおうかな)


 「あっ、気を使わせてしまい申し訳ありません。

 暗い中でも書類が見えるメガネがありますので、翔矢様はお休みになってください」



 翔矢の心の声が聞こえてしまったのか、ペネムエは返事をしてきた。

 そしてペネムエは魔法のポーチから、この世界で付けていても違和感がないようなメガネを取り出して、掛けて見せた。


 

 「おぉ!! ぺネちゃん頭がいいから、やっぱりメガネ似合うね!!」



 こんな事を言われれば、大抵の者は、その発言は頭が悪いとか思いそうだが、彼女の場合は違った。



 「そ、そそソラシソーですかね?」


 

 体中を真っ赤に染めて照れてしまったのだ。



 (どどどうしましょう? これからは24時間365日、メガネを掛けておくべきでしょうか?)



 と、嬉しさのあまり思考が訳の分からない事になってしまっていたのだ。



 「それはそうと、まだ仕事頑張るの?」


 「そう……ですね、翔矢様と一緒の夏休みを過ごしたいので、出来る限りは終わらせたいです!!」


 

 この言葉は、場合によっては告白とも取れる事に、ペネムエは言った後に気が付いてしまった。



 「あっ、そそそ、そこまで深い意味はあったりなかったりなかったりでございます!!」


 「???」


 

 ペネムエは、パニック状態になってしまい、とんでもない口調になってしまったが、翔矢は何故彼女がパニックになっている理由が分からなかった。


 

 「無理はしないでって言いたいけど忙しそうだもんね……」


 

 書類の山を見つめながら翔矢は自分の事のように途方に暮れてしまった。



 「そうだ!! 気にしないで続けながら、ちょっと待っててね!!」



 そう言い残して翔矢は部屋から出ていってしまった。

 ペネムエは気になりながらも、言われた通りに作業を進めていった。


 すると数分後、翔矢は戻ってきた。



 「それは?」



 翔矢は手にカップラーメンを持っていたが、初見のペネムエには、それが何なのかピンと来なかった。



 「ちょうど、お腹空く時間でしょ? カップラーメンだけど、よかったら食べて!!」


 「ありがとうございます!!

 ラーメンは何度か頂きましたが、これは雰囲気が違いますね。

 いただきます!!」


 

 ペネムエは行儀よく手を合わせた後で、麺をすすった。



 「おっ美味しいです!! なんだか夜中に食べたり、たまに食べると、とてつもなく美味しく感じられそうな味ですね!!」


 「喜んでもらえて嬉しいよ」


 こんなに喜んでカップラーメンを食べるのは、日本にいる中ではペネムエくらいだろうと、思うくらいにペネムエは嬉しそうにすすった。


 「じゃぁ俺は寝るから、おやすみー」


 「お休みなさいませ!! このメガネがありますので電気は消しておきますね」


 ペネムエは、立ち上がって電気を消した後、暗闇の中でカップラーメンをすするのだった。


 「これは、さぞ名のある職人さんの手打ちに違いありません!!」


 (まぁ有名メーカーって意味では、名のあるかもしれないけど……)


 ベットの中で睡魔が襲う中、翔矢は心の中でツッコミを入れたのだとか……

 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練って執筆しております。


 少しでも続きが気になったらブクマ登録して頂けると励みになります。


 下の星から評価も、面白いと感じたら、入れてくださると嬉しいです。

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