表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
104/285

95話:テスト直前から悩みが始まりそうです()

 雑賀鈴との一戦があった日の翌日、翔矢は何事も無かったかのように登校した。

  

 「はよー」


 いつもように、誰に対してという訳でもない挨拶を、教室全体にすると、まばらに挨拶が帰って来る。

 今日から期末テストが始まるので、ほとんどの生徒は参考書を開いたりして、最終確認をしたりしている。


 (昨日は色々あったけど、テスト勉強はいつもより集中してやったし、まぁ大丈夫かな)


 などと、他の生徒より若干、お気楽ムードの翔矢は考えていたが、中にはさらに余裕のある者もいる。


 

 「真理ちゃん!! 見て見て!! ワイチューブですごいテニス上手な大学生の動画上がってる!!」


 一ノ瀬悠菜は、隣の席で必死に教科書を熟読する真理に、自分のスマホの見せようとしている。

 しかし、真理は悠菜を無視して教科書を読み続けている。


 「どうしたの? 真理ちゃん!! 真理ちゃん!!」


 それでも、悠菜は真理の気持ちに気が付く事が出来ない。

 やがて真理の怒りは限界を超えてしまった……



 「ズオスゥ!!」


 

 真理の鉄拳が、悠菜の顔面に直撃し、彼女痛みで声を上げ顔を抑えている。

 これには、勉強をしていたクラスの何人かからは視線を浴びてしまった。



 「痛いよぉ!! 真理ちゃん……何するのぉ……」


 「テスト前だろうがぁ!!」


 そして、真理の怒号でクラスの全員の視線が2人に向けられた。

 だが、その全員が恐怖で静まりかえってしまっている。


 「え? でも真理ちゃん授業でてるでしょ?」


 ここまで来ても悠菜は首を傾げている。

 成績がトップの悠菜にとって、学校の定期テスト程度なら授業さえ聞いていれば問題ないのだ。


 それを他人も同じだと思っているのだからタチが悪い。


 「はぁ……頭のいい馬鹿とは、あんたのことだ……」


 ここまで来ると真理も、怒る気を無くしてしまい、仕方なく悠菜が見せたがっている動画を視聴する事にした。


 「ウチ、野球部のマネージャーだからテニスの動画とか見ても分からないけど……」


 テスト勉強の追い込みを邪魔された上に、動画の内容に興味がなかった真理は、怒りは収まったものの不機嫌そうな顔をしている。

 だが、動画を少し見ただけで、彼女の機嫌は急上昇する事となる。


 「すっ……すごい!!」


 「でしょぅ?」


 動画の内容は、男子大学生のテニスサークルらしきメンバーが、テニスコートの端に置かれたビー玉を、テニスのサーブで弾き飛ばすという者だった。

 メンバーの1人は、それを百発百中でやってのけているのだ。


 しかし、真理がすごいと言ったのはそこではない。


 「すごいイケメン!!」


 真理は大学生のテニスの技ではなく、顔立ちに反応していたのだ。


 「ん? あぁ確かにカッコいいかもね」


 だが、悠菜はそこまで興味は示さなかった。


 「いやいやいや、街歩いてたら振り向くレベルのイケメンでしょうが!!

 ほら、コメント欄も『かっこいい』とか『抱いて』とかばっかりだよ!!

 異常なのは、あ・ん・た!!」


 真理は悠菜を、鋭く指さした。


 「いやぁー照れますなー」


 それでも人とずれてる悠菜は、頭をかいて照れるばかりだ。


 

 2人が話している間でも、動画は再生されたままで、ちょうど終わりの挨拶のシーンが流れ始めた。


 


 『はい!! それじゃあチャンネル登録高評価、お願いします!!』


 

 本来ならば、ここで動画は終わりなのだろうが、数秒の 空白の後に続きがあった。




 『おっと、まだ見てくれている人もいるかな?』

 

 『いや、シークバー見れば終わってないの分かるでしょうが!!』 


 『そりゃそうか!! という訳で、視聴者さんの中から俺らと一緒にテニスしたいって方を募集しやーす!!』


 『参加希望の方は、コメントよろしくちゃーん』


 

 

 このような参加者を募るコメントが流れると、動画は本当に終了となった。



 「悠菜!! 応募して!! 今すぐ!!」


 真理は目を輝かせながら、悠菜の肩をがっちりと掴んでグラグラと揺らしている。


 「えーーーこの人たち、どこでやるのかも分からないしぃ」


 最初に動画を見ていたのは悠菜だが、さすがに企画参加には乗り気ではないようだ。


 「じゃぁ、私が応募する!!」


 真理は悠菜の肩から手を離すと、自分のスマホを取り出すと、すぐに動画サイトから、今まで見ていた動画を開いた。


 「……この人たち、県内じゃん!! 3駅くらいで行けるじゃん!!」


 真理は、動画概要欄を見てテンションが最高潮に達する。

 あと数分でテストを受ける高校生とは思えない程だ。


 「うそーん!!」


 この田舎県で、地域が一致すると思っていなかった悠菜は、すこぶる驚いている。


 「悠菜はテニス部だし、勉強にもなるって!!

 それに相手は、顔良し、顔面良し、ルックス良しだし!!」


 そう叫びながら、投稿主3人が映っているサムネを突き付けられ、悠菜はため息を憑いた。


 「動画だから仕方ないけど、顔しか良しじゃないじゃん!!

 まぁ、応募だけならしてみていいよ」


 「よっしゃー!!」


 このチャンネルの視聴者は大勢いる。

 いくら、開催が田舎だと言っても、かなりの競争率が予想されるので、どうせ当たらないだらうと悠菜は考えていた。


 (さすがに、当選しなかったら諦めてくれるよねー)


 

 

 

 *





 悠菜と真理の会話は、テスト勉強で普段より静かな教室の中では響いていた。

 最初のテストの歴史の教科書を開いていた翔矢は、心に他の生徒よりも余裕があったので、その会話が聞こえていた。


 

 (真理は、本当にイケメンとかの話には喰いつくよな……)


 

 真理とは、そこまで話す仲ではないが、それでもイケメンが好きと言う印象はかなり強かった。


 

 (ん?)



 ふと歴史の教科書から目を離し、悠菜と真理がいる方に目が行くと、2人の会話を近距離でマジマジとペネムエが眺めているのが見えた。

 ペネムエの姿は、命を救った事のある相手以外に姿を見えなくするブレスレットの効果で、翔矢以外には気配すら感じられない。

 彼女は、特にスマホの画面を真剣にのぞき込んでいるようだ。



 (ペネちゃんも年頃の女の子だしなぁ……イケメンとかには興味あるのかな?)


 

 そう思った翔矢の気持ちは、嫉妬というよりも、妹を可愛がっていた兄が、妹の恋愛事情を知ったような気持ちに近いかもしれない。



 

 ここで教室の扉がガラガラと開き、教師が入って来た。


 「よーし!! 英語のテストを始めるぞぉ、机の上の物をしまえー」


 教師の1声で、生徒たちは、すぐに机の上を片付けたが、翔矢は頭が真っ白になっていた。


 (英語……だと?)


 試験の日程を勘違いしていた翔矢は、英語のテストを受ける心構えができていなかったのであった。




 

 *




 テストが始まると、ペネムエは、する事も無いので教室を出て行った。

 授業であれば、聞いているのだが、テストは受けることができない。


 教室にいても、翔矢の気を散らしてしまうと思ったからだ。


 

 「ダメです……先ほど悠菜様と真理様の見ていた動画の男性……

 かなりイケメンという評価の顔立ちらしいですが……

 

 翔矢様の、つま先程度の顔立ちにしか見えません!!」


 

 翔矢のいる教室から、少し離れた廊下でペネムエは叫んでいた。



 天使であっても、A君よりB君の方がカッコいいというような感覚は存在する。

 しかし、今のペネムエは翔矢以外の異性のカッコよさが、みんな同一で、しかも低く見えるようになってしまっていたのだ。


 

 「翔矢様が全異世界で1番カッコいいのは間違いないのですが……

 流石に、万人受けする顔立ちの方と、大久保卓夫様も同じくらいに見えるというのは、いかがなものでしょう?


 リールが、ノーマジカルに戻ってきたら相談してみましょう……」


 

 ペネムエは、ちょっとだけ悩みが増えたのだった。

 ここまで読んで下さりありがとうございます。




 ストーリは一生懸命練って執筆しております。




 少しでも続きが気になったらブクマ登録して頂けると励みになります。




 下の星から評価も、面白いと感じたら、入れてくださると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ