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9話:ゼリーから熱弁が始まりそうです

 翔矢とペネムエが寝具を入れ替えた後、再び目を覚ますと午後になっていた。


 今は来客があり、翔矢は玄関の前にいる。


 事故で助けた女の子と母親がお礼に来たのだ。


「いえいえ、こちらこそわざわざありがとうございます」


 挨拶を済ませて2人を見送るとリビングに戻る。


 「この前の女の子でございますか?」


 リビングではペネムエが椅子に座ってくつろいでいる。


 「そうそう。今日来るって聞いてたんだけど、マジックラウドさんが気持ち良すぎて危うく寝過ごすとこだったよ。危ない危ない」


 「わたくしも、たまに普通の寝具で寝ると気持ち良くて寝過ごしてしまいます」


 ぺネムエは、少し照れた表情で話す。


 人間も天使も寝心地のいい寝具には勝てないらしい。


 「それはそうと、その箱は何でございますか?」


 ペネムエは、翔矢が持ってきた大きめの箱に目をやり質問する。


 「あぁ、例の事故で助けた女の子の、お母さんがお礼にって」


 「なるほど、ナットゥーでございますか? ナットゥーでございますか?」


 ペネムエは目をキラキラさせて箱を見つめる。


 「こういう、お礼で納豆はないと思う」


 そう言いながら、翔矢は箱の包装をビリビリと破り開封した。


 「これはゼリーだな」


 お礼の品はゼリーの詰め合わせだった。


 葡萄、桃など果物系からコーヒーゼリーまで何種類か入っている。


 「ゼリー? ほかの世界も、同じ名前の食べ物を食べたことがあります。ゼラチンというので、なんやかんやして色々な味が作れて、プルプルした触感がたまらないんですよね」


 「すんごいザックリした説明だけど多分同じだな。異世界なのに同じ名前で同じものが存在するってなんか不思議だな」


 「色々な世界で商売しながら渡り歩く方もいるので、そういう人たちが広めていて同じ名前なのかもしれませんね」


 そういう商売もあるのかと思ったが、特に気にしないことにした。


 「どれかゼリー食べてみる?」


 「よろしいのですか?」


 「もちろん!!」


 ペネムエは少し迷った後、桃のゼリーを選んで手に取った。


 「これはピチピチの実のゼリーでございますね」


 その名前は近いが少し違う。


 その名前だと何かの漫画に出てきそうな名前である。


 「こっちだとピーチ、もしくは桃って名前だな」


 「ふむふむ、やはり何でもかんでも同じ名前ではないのですね。

 ピチピチの実、もといピーチといえばこんな話があります。


 『昔鬼に支配されている世界がありました。その世界の人々は鬼に手も足も出ませんでした。

 その頃別の世界で勇者が魔王との相打ちで命を落としました。

 女神はその勇者を鬼に支配された世界に転生させることにしたのです。

 

 しかし当時は転生の技術が進んでおらず肉体を修復して元の姿で異世界に送ることは不可能でした


 女神は肉体を0から作成し勇者の魂を入れた赤ん坊を手元にあったピチピチの実(桃)に入れて川に流したのです』」


 「おい待て……その桃、川で洗濯してる婆さんに拾われたり、生まれた赤ん坊が犬・猿・キジを仲間にしたりしないだろうな?」


 「よく分かりましたね。その通りでございます」


 ぺネムエは目を丸くして驚いている。


 「勇者が転生するくだりはないけど、桃から生まれた子供が鬼を退治するっていう、こっちじゃ有名な昔話があるんだ」


 「本当に色々一致しますね」


 ぺネムエはフムフムという感じでうなずく。


 「それはそうと、ゼリー食べてみてくれ」


 「そうでした!! いただきます」


 ペネムエはゼリーのフタをペリペリと剥がしてゼリーを見つめて動きが固まった。


 「なっ……なんなんですかこれは?」


 ペネムエが体をプルプル震わせながら話しているが、何が起こったのか翔矢には分からない。


 「なっ……何が?」


 「ゼリーの……ゼリーの中に果実が埋まってるじゃないですかーーー」


 確かにペネムエの開けたゼリーは、中にスライスされた桃の入っているタイプのゼリーだった。


 だがそれに対して普段クールな口調のペネちゃんが取り乱す理由が分からない。


 「なんでゼリーの中に、こんなデカデカとした果実を入れるんですか?

 こんなの、ほとんど果物じゃないですか?

 わたくしはゼリーのプルプルとした触感が好きなんですよ!!

 こんな果実で埋め尽くされたゼリーを食べるくらいなら、最初から果物を食べればいいじゃないですか!!

 何のためのゼリーなんなんですか?」


 と物凄い勢いで熱弁をしだした。


 言ってることは翔矢も納得できるが、訴えの内容に対してペネムエの熱量がすごい。


 「コホン。失礼いたしました。取り乱してしまいました」


 「少しびっくりしたけど大丈夫だよ。でもペネちゃんもすごい熱くなるんだな」


 「天使は食べなくても生きていけるので、食事は嗜好品のような物なので人間よりこだわりがあ強いのです」


 納得できたような気もするが、ペネムエ自身の性格というかこだわりなのだろうと翔矢は思った。


 「ゼリー他のにする? コーヒーゼリーとかならゼリーオンリーだけど」


 「……いえ袖触れ合うも何かの縁と言いますしこのまま頂きます」


 『袖触れ合うも何かの縁』の使い方が間違っている気がしないでもないが、あれだけ熱弁したのにも関わらず果実入りゼリーをペネムエは食べてくれた。


 「これは……これでおいしいとおもいます」


 一口食べてペネムエは感想を述べたが、やはりゼリーだけのほうが好みだったのか、文句を言った手前、素直においしいと言えないのか翔矢には分からなかった。



読んでくださった方ありがとうございます。

ここまでキャラ紹介もかねてほのぼのやってきましたが、次回から2章突入。

ようやく敵の天使も出てきますよー

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