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第七話 ヒツジ亭



 カンナに書いてもらった地図を頼りに、街中を歩く。



 ギルドを出て中央の広場を通り抜けた先、一本奥に入った細い路地沿いに、一軒の三階建ての家屋があった。

 見上げると、羊をかたどった風見鶏が、風の力でカラン、カランと音をたてながら回っている。



「ここで合ってるよな?」



 看板はどこにもない。でも、目印の羊の風見鶏はあるしな。とりあえず、開けてみるか。



「…………失礼します」



 不用心なことにドアが開いていた。覗いてみるが、店内は薄暗くて、まだ開店前のようだ。一応声を掛けてみるが、誰も居ないのか返答もない。留守か。



「誰も居ないのに、入れないしな。出直すか」



 ドアを閉めた時だ。明るい女性の声がした。



「うちに、何か用?」



 声をした方を見ると、籠を手にした二十代前半の女性が立っていた。



「勝手に覗いてすまない。カンナの紹介で来たんだが、ヒツジ亭であってるか?」

「カンナの紹介!? 珍しいわね。貴方、あの子の知り合い?」

「いや、今日初めて会ったばかりだ」



 俺の台詞に、女性は目を丸くする。



「ほんとに!? よっぽど、気に入られたようね。あ~~でも、ここを紹介した理由は分かるわ。だって、貴方、とても綺麗な顔をしてるもの」

「……ただの女顔なだけだ」



 顔のことを言われるのは、今でも不愉快だ。

 それこそ、今は然程言われないが、まだ魔法使いになる前、十代の前半までは、俺にとって誰にも知られたくない黒歴史だ。この顔のせいで、どんだけ嫌な思いをしてきたことか。思い出したくもない。



「不愉快にさせたみたいね。ごめんなさい。立ち話もなんだから、入って。ワンちゃんも一緒に」



 女性は俺とルセを店内に招き入れた。籠をテーブルに置き、二階へと案内する。



 ルセも一緒で一安心。



「一階は食堂だと聞いたが」

「そう。まだ開店前だけどね。ここを使って」



 女性はドアノブを回し、ドアを開けた。

 室内は質素だが、家具は手入れされ、整理整頓されてるし、清潔に保たれている。広さもほどほどで、六畳ほどの広さだ。窓辺には花が飾られている。



「気に入ってもらえたかしら。一応、シャワーとトイレは付いてるから、自由に使って」



 清潔な部屋にシャワー、トイレ付き。元日本人にとって、ありがたい宿屋だ。夜は五月蝿ウルサいかもしれないが、そんなのどうにでもなる。



「気に入った! で、代金は幾らだ?」

「一週間で、銀貨二枚。前払いでお願い出来るかしら」



 一週間単位? それが、この世界の普通なのか? まぁ、今回はいいが。



「分かった。俺はアキラ=カシキ。とりあえず、一週間頼む」



 俺は早速、鞄から銀貨二枚を取り出し渡した。



「こちらこそ宜しくね、アキラ君。私はチセ=フォード。一応、このヒツジ亭の主人をしているわ。何か不便な点があったら、遠慮なく言ってね」



 そう言い残し、チセは仕事に戻った。



 俺は備え付けのテーブルにリュックを置くと、窓を開けた。心地良い風が入って来る。



「何か飲むか? ルセ」



 一応、小さいけど、備え付けのキッチンが付いている。



「水でいいです」

「ほんとは、カコアが飲みたいんだろ?」



 俺がさっき、カンナの所でカコアを飲んでた時、ヨダレ垂らしそうになってたもんな。



 笑いながら、俺はリュックの中からココアの粉末を取り出す。まぁ、カコアじゃないけど、味はほぼ同じだ。

 それから、魔石を一個取り出した。それを、水を入れた小鍋の中に放り込む。途端に、ブクブクと水が沸騰する。



「すっ、凄いです!! アキラ様が開発した魔法具ですか!?」

「まぁね」



 この魔石には、ファイヤーの魔法を練り込んでいる。俺お手製の、即席炭だ。

 普段は、普通の魔石と同じで熱くもない。だから、持ち運びも安全。これ一個で、お風呂のお湯ぐらいは簡単に沸かせる。魔石が壊れない限り、何度でも練り込めるしな。



 魔石の代えは、この世界じゃ簡単に手にはいるだろう。

 だからといって、魔石目的のためだけに魔物を狩るつもりは毛頭ない。当然だ。魔物も生きているのだからーー。甘いのかもしれないが……



 俺はルセが飲みやすいように、口が広いスープ皿にカコアを淹れた。勿論、自分の分も淹れる。インスタント最高!!



「……それじゃ、落ち着いたところで、この世界のことを詳しく聞かせてもらおうかな、ルセ」





 お待たせしました(〃⌒ー⌒〃)ゞ


 楽しんで頂けると嬉しいです。


 それでは、次回をお楽しみに(*^▽^)/★*☆♪

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