第六話 ハンターカード※
光りはすぐに消えた。
光りが消えたハンターカードは、さっきみたいな真っ白ではなく、銅の色に変化していた。
「おめでとう。これで、君もハンターだよ」
「……ありがとうございます」
どうやら、ハンターの試験には合格したようだ。カードを手に取り、確認する。
アキラ=カシキ(年齢 17歳/性別 男)
レベル 1
HP 289
MP ーーー(測定不可能)
【職業】 未定
【スキル】 固定スキルあり
記載されているのはそれだけだ。
簡素って言えば簡素だけど、どの世界でもこんなものだ。詳しい情報を載せたりしない。前に行ったことがある異世界では、HPもMPも記載されていなかった。
もし、詳しく知りたいのなら、【ステータス】を開けばいいのだ。
にしても、十七歳って……
俺が初めて、異世界に渡った歳だ。まぁ、それ以後、成長が止まったから、そう書かれても仕方ないと思うが。
MP測定不可能で、銅色か……
「その色に不満かい?」
俺の顔を覗き込みながら、カンナは尋ねる。
カンナは俺の考えが読めるのか?
そう疑ってしまうほど、彼女はさっきから俺の考えを読んでいる。
スキルや魔法を使っている気配は感じないが……。だとしたら、そんなに不満そうな顔をしていたのか?
まぁ、どっちにしろ、こっちから訊くわけにもいかないしな……。わざわざ、墓穴を掘る必要もない。とりあえず、無難に否定しとこう。
「いえ……」
「また敬語になってる、アキラ君」
プクゥーと頬を膨らませ、カンナは抗議する。
「悪い」
「まぁそこが、アキラ君の良いところなんだけどね。……それで、アキラ君はこのカードのこと知ってる?」
良いところって、会ったばかりだろ。
突っ込みそうになるが、我慢して話を先に進める。
「いや、知らない。教えてくれないか?」
「分かった。特別に、ギルマスの僕から教えてあげよう」
満面な笑みを浮かべ、カンナは説明しだした。
「まず、今の君はハンター見習い。仮免だと思ってね。何故なら、君は職業を選んでないからさ」
「職業?」
「そう。職業だよ。未定になってるでしょ。じゃ、職業の欄をタップしてみて」
カンナに言われた通り、職業の欄をタップしてみた。すると、色々な職業がズラリと出てきた。
冒険者。
魔導師。
大賢者。
魔法剣士。
魔物使い。
マスター。
勇者……etc.
有名なものから、これは何だと思うものまで色々あった。
マスターって何だ? 冒険者って、ハンターの事じゃないのか?
「分からない職業があれば、その項目をタップしてみて」
因みにマスターをタップしてみると、説明文が出て……出てこない。
「出てこないけど、壊れてるのか?」
「出てこない? どれどれ」
カンナは俺の横に移動すると、手元のハンターカードを覗き込む。
花の匂いがした。
カンナからか。にしても、近い。男としてはラッキーかもしれないが、目のやり場に困る。っていうか、こんなに引っ付く意味あるのか!!
「……君は逸材だね。才能からいえば、僕を遥かに超えてるよ。魔力測定不可能って……絶句だよ。さすがの僕も、嫉妬しちゃうな。
説明文が出ないのは、その職業になる資格を修得していないからだよ。ほらっ、文字が他のものとは違って薄いでしょ」
カンナは指差す。確かに、その文字は他のに比べて薄かった。グレーだ。
「修得出来るようになったら、黒文字になるよ」
……なるほど。そういうことか。
「今書かれている職業のレベルが一定に達すると、別の職業が現れたりするから、小まめにチェックしといた方がいいよ」
そういうシステムか。
無難なものは、魔導師か……大賢者も捨てがたい。冒険者も興味がある。勇者はないな。う~ん、悩む。
「今すぐ決める必要はないよ。じっくり決めたらいい。あっ、でも、二、三日中に決めてね。その時に、カードの説明をするから」
「……分かった」
答える俺の顔は、完全に引きつっていた。
満面な笑みを浮かべ、アドバイスをしてくれるのは嬉しいが、更に引っ付いてくる必要あるか? そろそろ、腕を退けてくれ!
「しょうがないなぁ~~。これ以上は嫌われるか」
小さな声でカンナは残念そうに呟くと、やっと腕を解き、向かい側のソファーに戻った。
「アキラ君、おかわりいる?」
「いや、もういい。気持ちだけで。カンナのおかげで、色々知ることが出来た。感謝する」
「たいしたことしてないよ。僕は仕事をしただけ。大げさだな、アキラ君は(そういうところも……)」
「カンナ、最後に訊きたいことがあるんだけど、魔石やドロップアイテムって、ここで換金出来たよな」
大事なこと忘れるところだった。危ない、危ない。
「さっきの魔物の? ここで換金する?」
「いや、場所さえ教えてくれたら、直接出向く。これからも利用するから」
折角の好意だが、断る。
「じゃ、案内してあげる」
にっこり笑うギルマスに、俺は再度断る勇気はなかった。
とりあえず、魔石が五個で銀貨が六枚。ドロップアイテム、牙と毛皮が銀貨三枚。計、銀貨九枚になった。
お待たせしました(〃⌒ー⌒〃)ゞ
それでは、次回をお楽しみに(*^▽^)/★*☆♪