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第五話 今流行りのアレか?



「やっぱり、君、魔術師だったんだぁ~~」



 甘ったるい、幼いさが残る少女の声が、俺とルセを呼び止めた。振り返ると、さっき大男と一緒にいた少年が立っていた。



 女だったのか。

 う~ん。どう贔屓目に見ても、女に見えねぇな。ローブを抜きにしても、出るところ出てねぇし。十二、三歳か? いって、十五歳かな。



「……君、今、ものすごく失礼なことを考えてたでしょ」



 少年、いや少女は、俺を下から睨み付ける。



 こいつも魔術師か。周囲に、俺と同じ様に浄化魔法を掛けている。

 まぁ、掛けてないと息も話しも出来ねーか。

 少女の全身が、薄い白い膜に覆われているのが見えた。体に密着するように張られている。それだけで、かなりの使い手だと確信した。



「…………で、俺に何か用か?」

「いや~。見事な浄化魔法だと思ってね。それに君、僕たちに会う前に、魔物倒したでしょ。魔力を感知したんだよね。僕も魔術師だから。人族で、魔法を使えるのは少ないから、興味持ったんだよね」



 僕?

 一人称間違ってないか? それとも流行りのアレか。……確か、男の娘とか言ってたよな。



「また、失礼なことを考えてたね。新人君」

「……悪い」



 素直に謝っておこう。で、男、女どっちだ?



「そこで、素直に謝られると、文句を言っていいのか悩んじゃうよ。それから、僕、一応女だから」



 女か。にしても、表情がコロコロと変わる奴だ。まぁ、よく見れば、特別美人じゃないが、そこそこの美人だ。でも、キャラが勝ってて残念なパターンだな。悪い奴ではなさそうだ。とりあえず、こいつに訊いてみるか。



「一つ訊きたいんだが」

「何?」

「ハンターになりたいんだが、どこで受付をしたらいいんだ?」

「君、ハンターになりたいの?」

「じゃなければ、こんなとこ来ねーぞ」

「まぁ、こんな臭い所に自ら来る理由なんて、依頼じゃなければ、それしかないよね。付いて来て」



 そう言うと、少女は俺のローブを引っ張る。俺はルセを抱いたまま、少女の後を付いて行く。

 人が一人すれ違うことが出来る程の廊下を進む。二回角を曲がった突き当たりで、少女は立ち止まる。ノックもせずに、少女はドアを開けて中に入った。



「適当に座ってて。お茶でも淹れて来るから」



 機嫌がいいのか、鼻歌を歌いながらお茶を用意している。すぐに、甘ったるいココアの香りがした。



「カコアでよかったよね」



 少女はテーブルに淹れたてのカコアを置く。



「座って」



 少女に促され、俺はソファーに腰を下ろし、ルセを床に下ろした。

 この部屋はおそらく、ギルドマスターの部屋だ。



 ってことは、もしかして、目の前にいるこの少女がこのギルドのギルマスか? それとも、ギルマス関係者か?

 どの世界でも、冒険者やハンターは実力主義だ。それも、究極のな。

 だとすると、この少女がギルマスに就いてもおかしくはない。ただ……若過ぎる。いや、これだけの魔力があるんだ。俺と同じ様に、見た目と実年齢が違っていてもおかしくないな。



「冷めないうちにどうぞ」

「頂きます」

「話し方が変わったね。そういう所、好きだよ。で、君、僕がギルマスだと思ってるね」

「違うんですか?」

「いや、違わないよ。君の推測通り、僕がこのギルドのギルマスを務めている、カンナ=ユリアス。君の名は?」

「アキラ=カシキと言います」

「アキラ君か、宜しくね」



 俺は淹れてくれたカコアを一口飲む。味は予想通りココアだった。



「……美味しい」

「それはよかった。でも、君、もうちょっと警戒心持とうよ。素性の分からない者が淹れたお茶を、警戒心もなく飲むなんて、駄目だよ」



 別に言う必要がないが、俺は毒に対する耐性がある。正確にいうと、毒を無毒化するスキルがある。



 にしても、この女、俺のことを年下だと思ってるな、完全に。



「ギルマスが一介の魔術師に毒を盛ってどうするんですか?」

「…………それも、そうだけどさ。ところでアキラ君、そろそろその喋り方止めない。君に敬語を使われると、何か寒くなってくるんだけど」



 そう言って腕を擦るギルマスに、俺は苦笑する。さっきの間が少し気になるが、訊き返したりはしなかった。



「そういう訳には……」

「僕がいいって言ってるんだよ!!」



 何だ、この我が儘娘は。



『アキラ様、さすがです。モテますね~』



 会話を黙って聞いていたルセが、頓珍漢トンチンカンことを言ってきた。俺は思わず、吹き出しそうになった。代わりに咳き込む。



『アキラ様、大丈夫ですか!?』

「大丈夫かい!?」

「…………大丈夫。……さっきも言いまし……たが、ハンターになるにはどうしたらいい?」



 睨まれて、言い直す。

 カンナはにっこりと微笑むと立ち上がり、机の引き出しから一枚のカードを持って来た。それをテーブルの上に置く。



 何も書かれていない。ただの真っ白なカードだった。



「手を出して、アキラ君」



 言われるままに出した俺の手を掴むと、カンナは指先に針を刺す。そして、指先から出た血をカードに垂らした。



 血はスーとカードに吸い込まれ、次の瞬間ーー光りだした。



 


 最後まで読んで頂き、ありがとうございますm(__)m

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