第三話 最初の町、グリーンメドウ
魔犬の群れを倒した俺は、ルセと一緒にグリーンメドウに向かっていた。
ゆっくり歩きながら、ルセの説明を聞いている。
「アキラ様。〈グリーンメドウ〉ですが、最近出来たばかりの新興途中の町です。朱の大陸の最南端に位置するこの町は、ハンターの拠点地として造られました。総人口は二百人足らずで、その大半がハンター関係者です」
ハンターの拠点地?
なるほど、そうか。魔物に対抗するために造られた町、ってことか。
とりあえず、グリーンメドウに着いたら、ギルドに顔をだしてみよう。戦利品を換金したいし。
そんなことを考えていると、不意にルセの足が止まった。自然と俺の足も止まる。
「アキラ様、間もなくグリーンメドウに到着しますが、ここから先は申し訳ありませんが、無言の案内になります。
犬の容姿をしている僕が喋ると、魔物だと勘違いされる危険性があるので……」
確かに、魔物だと勘違いされると厄介だ。ましてや、グリーンメドウはハンターの拠点地。
ルセが言いたいことは分かる。分かるが、
「……ハンターの仕事の中に、テイマーとか存在しないのか?」
【テイマー】
簡単に言うと、〈魔物使い〉の総称だ。
魔物と契約を交わし、従魔にすることで、主に代わって戦わせる職種である。従魔にする方法は様々あるが、一般的なのは、戦い屈伏させる方法だ。
もし、テイマーが存在するなら、そこまでルセが神経質になる必要はないだろう。嫌な顔ぐらいはされるかもしれないが、そんなのは無視したらいい。
「……テイマーですか。……テイマーを生業としたハンターがいることは聞いてますが、なかなか、認められていないのが現状らしいです」
ルセの声は暗い。その暗さに、俺は眉をしかめる。
それだけ、この世界の魔物は脅威の存在だという訳か……厄介だな。溜め息が出る。
魔物に大切な存在を殺された人たちにとって、魔物を狩るハンターでも、テイマーは裏切り者でしか映らないようだ。
なら、ルセの心配は納得出来る。
魔物に神経を尖らせてる場所で、犬が言葉を発するなんて、魔物と疑われても仕方ない。
テイマーの仕事が定着しているならまだしも、していない中で、ルセが魔物と勘違いされたら、町を追い出されるだけですめばいいが、最悪、首が胴体から離れる危険性も大いにあるということか……。
そう考えてしまうほど、ルセの声は暗かった。
「……分かった。これから、ルセは俺のペットな。で、ルセ、念話使える?」
ルセが念話を使えたら、声を出さずに意思の疎通が出来る。
「念話ですか? はい。一応使えますが」
「やってみろ」
『…………わ……わか……分かりました。聞こえますか? アキラ様』
チューニングし易かったのか、すぐに、直接ルセの声が頭に響く。ルセの声は、フィルターが掛かったようで少し低いが、はっきりと聞き取れる。
これなら、十分に意思疏通が可能だ。さすが、精霊犬ってことか。
『上手いもんだな』
『はい。よく、五聖獣様たちと会話していましたから』
誉められて、すごく嬉しそうだ。
尻尾をフリフリして、スッゴク可愛いぞ!! 撫で撫でしていいか? いいよな!
『何してるんですか!? アキラ様。……ワフゥ~~』
しゃがみ込んで、フサフサした毛触りを思う存分味わう。
ルセは腹を見せてされるがままだ。可愛い奴め。
「魔物がいつ現れるか分からない所で、余裕だな、兄ちゃん」
突然、頭上から野太い声が降ってきた。
その声に顔を上げると、大きな斧を担いだ大男がノソッと立っていた。その影に隠れるように、おずおずと俺に視線を向けてくる小柄な少年。
なんとも、ちぐはぐなコンビだな。
「すぐそこが、もうグリーンメドウだろ」
「その油断が命取りだぜ、兄ちゃん」
「そうだな。気を付けるよ」
仕方ない。また夜にでも撫でるか。
渋々立ち上がった俺に、大男は「じゃあな」と声を掛けてから、門の方へと歩いて行った。
小柄な少年も、慌ててその後を追い掛ける。何度か、俺の方をチラチラと振り返りながら。
「俺たちも行くか」
『はい!!』
俺とルセは門に向かって歩きだした。
俺たちの旅は始まったばかりだ。
グリーンメドウに入る門には、兵士が二人立っていた。門番だ。
「身分証明書は持っているか?」
兵士の一人が尋ねる。
「いいや、持ってない」
「なら、この水晶に触れてみろ」
言われた通り触れてみる。すると、淡い光りを放った。
「よし。罪人ではないな。結構いるんだよ、お前みたいな身分証明書を持ってない奴。そういう奴らには、受けてもらってるんだ。罪人は町には入れねーからな」
砕けた口調で話し掛けてくる。
なるほど。つまり、あの水晶は罪人かどうかを調べるためのものか。
毎回並んで調べられるのって、面倒だよな。
「身分証明書があれば、自由に出入りが出来るのか?」
「全く自由じゃねーぞ。時間が短縮出来る程度だ。で、お前、ハンター希望か?」
「そうだ」
「それなら、ギルドに行ってみな。そこで貰えるハンターカードが、身分証明書の代わりになるぜ。あっ、でも、簡単になれないから、落ちても気落ちするなよ。そんときは、俺が慰めてやるぜ」
簡単になれない? 試験とかあるのか?
「行ってみたら分かるって。それじゃ、改めて、ようこそ、グリーンメドウへ!!」
首を傾げる俺に向かって、兵士は明るい声で歓迎してくれた。
最後まで読んで頂き、ありがとうございますm(__)m
兵士1「さっきの、黒髪の奴、
超~~可愛かったよな!!」
兵士2「まぁ、可愛かったけどな……
(若干引き気味)
で、落ちたらどうするんだ?」
兵士1「勿論、朝まで慰める!!」
兵士2「まぁ、頑張れ(俺は女がいい)」
あの後の、兵士たちの会話でした(^o^;)
それでは、次回をお楽しみに(*^▽^)/★*☆♪