第二十七話 シュリナ
「…………それしか方法がないのなら、仕方ない。分かった。契約を交わそう」
俺は契約を交わすことを快く承諾した。
まぁ、それしか方法がないなら仕方ないよな。
「アキラ……我から言い出したことたが、本当にいいのか?」
わりとあっさりと承諾した俺を心配したのか、反対にスザクは尋ねてくる。
ずっと黙って成り行きを見ていたルセも、「アキラ様。契約を交わして欲しいことに間違いはありませんが、もう少し、考えてから決めてもいいのでは……」と、言ってくる始末だ。
何か、見た目五歳児と小型犬(黒豆柴)から心配されてないか、俺。
「いや……それしか方法がないんだったら、交わすしかないだろ」
「それはそうだが……少し、躊躇してもいいのではないか」
「躊躇してもしなくても、同じだろ?」
やることは同じだし。何をそんなに引っ掛かってるんだ? 俺は首を傾げる。
元々、俺がこの世界に来たのは、親友たちが統治する常世を護りたいためだ。
そのためには、この世界が滅ぶのを阻止しなければならない。だから、わざわざ界を渡ってやって来た。
この世界を覆っている結界を再構築するのが、俺の役目で、為すべきことなら、それをやり遂げるために何だって俺はするつもりだ。
確かに、初めてスザクから〈契約〉の話を聞いた時は驚いた。だから、確めた。でも、それしか方法がなくて、スザクたち五聖獣が腹を決めているなら、俺に何が言える? ましてや、言ってどうなる?
それとも、他に方法を探すっていうのかーー。
可能性が0パーセントに近いのに。
タイムリミットがあるのに。
そんなことをして、間に合わなかったらどうする?
そんな危ない橋を渡るメリットはどこにある?
正直言えば、俺だって、魂を繋げる契約に関して躊躇しなかった訳じゃない。戸惑う気持ちも大きい。でも……
「……スザクとルセを見て、俺は構わないと思えたんだ」
微笑みながら、俺は正直に答える。
「…………そうか。分かった」
スザクは俺の気持ちを受け止める。そして、顔を背けるとスザクは、小さな声でポツリと呟いた。耳が赤くなっている。もしかして、照れてるのか。意外に可愛いところがあるな。
「照れてないぞ! 無礼な!」
即座にスザクは否定する。口に出していないのに、否定したよ。これで決まりだな。
「……ところで、スザク。さっきから気になっていたんだが、俺の考えを読んでないか?」
まったく、カンナといい、スザクといい、勝手に俺の考えを読むな!
「カンナという娘のことは知らぬが、考えを読んで何が悪い?」
「はぁ~~悪いに決まってるだろ! プライバシーの侵害だ。絶対に止めろ」
「嫌なのか? では、出来る限り注意しよう。それで、我の名前は決めたのか?」
とりあえず、今回はこれでよしとするか。次は、スザクの名前だな。う~ん。スザクの名前か……。俺はスザクの容姿を、もう一度確認してみる。
それにしても、綺麗な朱色の髪だな。そういえば、ルセが言っていた。巫女長の髪の色は、スザクの体の色と同じだと。色からとるのってアリか? アリだよな。それを少しもじって……
「……シュリナってどうだ?」
「シュリナか……女のような名前だが、良い名だ。名前の由来を聞いてもよいか?」
「色だよ。ルセが言ったことを思い出してな。巫女長の髪の色は、シュリナの体の色と同じだと聞いた。シュリナのシュは、朱色のシュ。俺が生まれた日本には、同じ様な色にも別の名前が付いているんだ」
「ほ~~なるほど」
表情は硬いが、口元の端が僅かに上がる。とりあえず、喜んでもらえてよかった。
「では、契約の儀式を始めようか。アキラ」
「分かった」
「では、膝を付け」
俺は言われた通り、その場に膝を付く。目の前にシュリナが立っている。シュリナの冷たい両手が、俺の両頬にソッと触れた。シュリナが顔を寄せる。俺の額にシュリナの額が合わさる。額が熱を持つ。俺は目を閉じた。
「我の言葉を復唱するのだ。よいな」
そう言われ、俺は頷く。
「我、アキラ=カシキは」
「我、アキラ=カシキは」
一文字の音を紡ぐ毎に、シュリナと繋がっていくのを感じる。
温かい風が、全身を撫でていく。この風は、シュリナの魔力か……。とても心地良いな。俺の魔力も、シュリナに心地良く感じてもらえたらいいんだが……
「汝、聖獣スザクに名を与える」
「汝、聖獣スザクに名を与える」
言葉がスラスラと出てくる。復唱というよりは、前からこの詠唱を知っていたかのようだ。
「その名をもちて、我、アキラ=カシキは魂の契約を交わす」
「その名をもちて、我、アキラ=カシキは魂の契約を交わす」
「「シュリナ!!」」
声を揃えてその名を唱えた瞬間、熱いものが全身を駆け抜けて行った。添えられていた手は、いつしか放れている。
「……目を開けてよいぞ」
その声に促され、俺は目を開けた。
そこにいたのはーー
一頭の赤竜だった。
つぶらな瞳で、赤竜は俺を見ている。
俺は空中に浮かんでいる子竜を、呆然と見詰めた。
「どうかしたのか? どこか、苦しいところでもあるのか? 遠慮なく言え」
「アキラ様、大丈夫ですか!?」
うんともすんとも言わない俺を心配して、シュリナとルセがおろおろしている。
「…………竜……不死鳥じゃない。竜なのか……」
無意識に口から出た言葉に、シュリナは顔をしかめた。
「何を言っておる」
不愉快そうだ。
あれ?
シュリナの感情がはっきりと手に取るように分かる。何でだ? 目の前にいるのは竜なのに。これってもしかして、契約の影響なのか?
やっと、契約までたどり着きました(^o^;)
「新米神様ですが、魔法使いの修行のために異世界にやって来ました」で、どうして、シュリナたち五聖獣が名前に拘るのか。分かって頂けたら嬉しいです("⌒∇⌒")
今回で、神殿編終了です。
次回からは、ざまぁ編です。その前に、別目線の話を二話程投稿予定です。
次の更新は、「新米神様ですが、魔法使いの修行のために異世界にやって来ました」を予定していますm(__)m
不定期更新になってしまい、本当に申し訳ありませんm(__)m




