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第二十五話 朱色の髪をした少年



「……アキラ様が、気に病むことではありません」



 案内された部屋のベッドに仰向けに倒れ込む俺に、ルセは静かな声で話し掛けてきた。



「ああ……分かってる」



 ルセにはそう答えたが、頭を過るのは、さっきお子ちゃま巫女長が見せた表情だった。あんな小さな子供が、泣き笑いの表情を浮かべる。それも自分のことではなく、里の、眷族の者たちのためにーー。



 そんな表情を浮かべる原因となった、ルークと騎士や兵士に、そしてそれを命じた者たち全てに、俺は激しい憤りを感じた。と同時に、子供らしい感情を表に出しにくい環境に、やるせなさを感じた。



 他から来た俺が、口を挟むことではない。そんなことを分かってる。だが……子供のあんな顔は見たくない。



「なら、お主がどうにかするか?」

 突然、甲高い子供の声が降って来た。



 俺は咄嗟に、目を隠していた腕を退け飛び起きる。



「おっと、危ない」

 おどけたような声と同時に、ルセの興奮した声が室内に響く。



「スザク様!!!!」



 何!? こいつが、スザクか!!



「ルセ。案内人の役目大義だ。お前を選んで良かった。よもや、この短期間で、ここに連れてくるとは思ってもみなかったぞ」

「お褒めの言葉、ありがとうございます!!」



 スザクに頭を撫でられ、ものすごい勢いで尻尾を振るルセ。



 マジか。

 俺は呆然としながらも、黒豆柴を撫でる少年を見詰める。

 朱色の髪をした少年。完璧な造形美。横顔からも見てとれる。歳は五歳児ぐらいか……。だがそれが、実年齢ではないことは、容易に分かった。



「いつまで呆けている。アキラ」

「いきなりの登場に驚いただけだ」

「何故、我が主に合わせねばならない」



 そう言われれば、まぁ、確かにそうだ。



「悪かった。……それで、早速だが、これからの計画を教えてくれ」

「忙しない男だな。少しは、心に余裕を持った方がいいぞ」



 スザクは敬語を使わない俺に怒ることなく、少し呆れた声で答える。その表情はピクリとも動かないが、声の感じから、僅かな感情の起伏が読み取れる。



「うむ。常世の五聖獣たちは、中々良い奴を遣わせてくれたようだ」

 いきなり顔を近付け、一人(?)納得したように呟く。



「お褒め頂き、ありがとうございます」

 俺は照れから、わざと軽い口調で答える。



「……妙なところは、天の邪鬼だな」



 はぁ? それは、どういう意味だ? 詳しく訊きたいぜ。



「お主は、自分が思っている程、ひねくれておらぬぞ。誰よりも、素直で綺麗な心をもっておる。故に、巫女長も主に心を開いたのであろう。だが、その心は脆い。そのことも、お主はよく分かっている」



「…………」



 この言い方、初めて会ったばかりの人に言うものじゃない。気付かないうちに観察されていた? それが正しいとは別として。しかし、魔法の類いの気配は一切しなかったぞ。だとしたら……



「その通りだ。ルセの目を通して見ておった。お主のことをな。因みに見ていたのは、我だけではないぞ。他の五聖獣たちも見ておる。……当然ではないか、世界の命運を託すのだぞ、その人となりを観察するのは、当たり前ではないか」



 そう言われれば、反論出来ない。代わりに、俺はルセを睨む。ルセはシュンとする。知っていたな。



「ルセをあまり責めるな」

「……分かってる。ルセは悪くない。睨んで悪かった」



 素直に謝る俺に、スザクは苦笑すると、「そういうところが、素直なのだ」と口にする。

 見た目五歳児に、子供扱いされて、さすがに少しムッとした。



「…………」



 黙り込む俺の名を、スザクが呼ぶ。



「アキラ」



 その声の真摯さに、強さに、俺は無意識に佇まいを正す。



「アキラ。我々、五聖獣の力が足りぬ故、主を遠く離れた場所に来させ、危険な目に合わせることになることを、心から謝罪し、感謝する」



 真っ直ぐ俺の目を見詰め、スザクは変わらぬ表情のまま告げた。

 俺は首を横に振ると答える。



「……俺は助けたい者たちがいる。故郷がある。それを護るためだ。だから、気にしなくていい」

「そう言ってもらえると、助かる」

「……それで、これからどうする?」

「アキラ、まず、我と契約を結べ」

「契約を?」

「そうだ。それで、我ら五聖獣の力を使うことが出来る。話はそれからだ。アキラ、我に付いて来い」



 そう言うと、スザクは俺の腕を掴み強引に引っ張った。





 お待たせしました(〃⌒ー⌒〃)ゞ


 最後まで読んで頂き、ありがとうございますm(__)m


 神殿編がもうすぐ終わるので、そこまで、このまま更新続けます("⌒∇⌒")


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