第二十話 弾かれた者
ルーク視線です。
村長の案内で、俺とルセが遺跡前に到着した頃ーー。
我が物顔で、兵士たちがドーン村に入って来た。
だが村に入ってすぐ、彼らはざわつき出し立ち竦んでいる。中には、混乱する者もいた。
兵士とはいえ、戦争などの実体験を経験した者などいない。魔物討伐もハンターがこなす。精々、危ない事といえば、ハンターの後をついて、魔物討伐に関わった雰囲気を味わうくらいだ。そんな彼らが、この状況下で、冷静にいるのは無理があった。
「……どうしたの? さっさと先に進んでくれないかな」
何も知らないルークは、先に進まない兵士に苛立ち、その苛立ちを隠そうともせず、兵士たちに冷たい声を浴びせる。
しかし、兵士たちは一向に前に進もうとはしない。
あのアキラという少年が、何かしたのだろう。ルークはそう思った。王宮魔術師であるルークは、アキラが自分と同じ魔術師だと感じていたからだ。
だとしても、兵士の情けない姿に、ルークはチッと舌打ちすると、兵士たちを押し分けて村に入った。
「…………どういう事?」
村に入ってすぐ、ルークは立ち止まり呟く。目の前の状況に言葉が出ない。
そこには何もなかった。
一時間前までは、確かにあった。それ以前も間違いなく。
しかしーー今は何もない。
そこにあるべきものがなかったのだ。
アキラが何かしたのか!? 隠匿の魔法、それとも認識阻害の魔法でも掛けたのか? でも、そんな高度な魔法を、あんなガキが使えるなど到底思えない。あいつは、王宮魔術師じゃないんだ。ただのハンターだ。だとしたら、これは一体……
混乱しながらも、ルークは我を忘れることはなかった。
「リサ!! どういう事だ!?」
後ろにいる、メイドの制服を着た少女の腕を乱暴に掴み、ルークは怒鳴る。
「…………」
しかし、リサは座り込み答えない。貴族であるルークが訊いたのにだ。呆然とし、自分の故郷を見詰める。その口元は震えていた。
「答えろ!!!!」
ルークはリサの頬を叩く。リサは地面に倒れ込んだ。体を起こしながら、リサは小さな声で、だがはっきりと答える。
「…………私たちは、弾かれたのです」と。
「弾かれた?」
「はい。私たちは咎人。故に、弾かれたのです」
「咎人? まるで、僕たちが罪を犯したような言い方だね。訂正しなよ」
ルークはリサの腹を蹴り、冷たい声で言い放つ。だが、リサは訂正しなかった。兵士たちも、ルークの暴挙を止めようとはしない。
「……白い花。蘇生草は、主が起こした奇跡。
私たち一族は、それを護らなければならない役目を担っていたのに、私はあの方の力になりたくて、その役目を放棄した。
だから、私は一族から追放された。
そして貴方たちは、蘇生草を我が物にしたくて、この村に兵を差し向けた」
「それがどうしたって言うんだい?」
ゴミを見るような蔑んだ目で、倒れているリサを見下ろす。
「貴方は何も分かっていない。自分たちが何をしたのかを。貴方たちが誰を敵に回したのかをーー」
「誰を敵に回したって言うんだい?」
明らかに馬鹿にしたような言い方だった。
「分からないのですか? これほどの事を簡単に出来る方は、あの方しかいません」
そこで一旦言葉を切ると、リサは体を起こし、真っ直ぐルークを見据えた。
「朱の大陸を守護する五聖獣の一角、スザク様です。ドーン村の民は、スザク様の眷族。
貴方たちは、スザク様の眷族に刃を向けたのです」
一瞬、ルークはリサが何を言ったのか、理解出来なかった。
「…………何……を言ってる」
「いずれ分かる時が来ます。それも近いうちに。ここにいる全員に、間違いなく」
そう告げると、リサの姿がその場から掻き消すように消えた。
嘗て、ドーンの森のすぐ側に、薬草栽培に関して有名な村があったという。
今は、その村は何処にも存在しない。
大変お待たせしましたm(__)m
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