第十九話 些細なことなんだけど、ルセは許せなかったみたいです
右足を一歩踏み出して俺は気付いた。
ーーこの森全体が、スザクの聖域だということが。
村長を先頭に、ルセと一緒に森に足を踏み入れた瞬間、周囲の空気が一変したからだ。澄みきった空気が、森全体を覆っている。
なるほどな。この澄んだ空気の場所なら、蘇生草は自生するだろうな。森を進みながら、俺は思う。
この世界では蘇生草と呼ばれているが、この種の薬草は、空気が綺麗で水が綺麗な場所。そして何より、大地が穢れていない場所にしか自生しない。
生まれ変わったばかりでも、さすがは五聖獣。
朱の大陸を守護し、聖域を保っている。だから、魔物は一切出現することはなかった。
手付かずの森。
なのに、手入れがされたかのように、陽の光が木々の隙間から大地に降り注いでいる。苔や岩に陽の光が反射して、とても神秘的な光景だった。
一時間程歩いただろうか。突然、拓けた場所に出た。
……遺跡?
そう思わせるような、岩や石を組み合わせ建築された建造物と、その建造物を取り囲むように小川が流れている。
そして、その小川の辺りに白い花、蘇生草が自生していた。
神秘的で美しい光景に、俺は言葉を失う。
「……綺麗ですね。アキラ様」
ルセは感嘆の声を上げる。
「ルセは来たことがあるだろ(ペットだしな)?」
まるで、初めて来たばかりのような言い方をしたルセを不思議に思い、俺は尋ねた。
「来たのは初めてですよ。いつもは、直接スザク様に会いに行ってますから」
はぁ? 直接会いに行ってる?
「ちょっと待て。今回は成り行きでここにいるが、直接会いに行けるのなら、もっと早く、直接行くことも出来たよな」
詰め寄る俺に、ルセは首を傾げ答える。
「それは無理です。そもそも、アキラ様は五聖獣様たちと契約を交わしていませんし」
「契約? 眷族になるということか?」
「まさか! アキラ様が眷族になるわけありません!!」
慌てて、ルセが否定する。
違うのか? まぁ、俺は眷族にはなれないけどな。自分の種族が何なのかを知っている俺は、心の中で答える。
「とにかく、一度も五聖獣たちと会ってないアキラ様が、直接訪れることは不可能なんです! 例え、僕が一緒でもです」
「あ~~なるほど、そういうことか。制約が付いてるのか……」
本来、転移魔法は術者が訪れた事がある場所なら、基本、どこでも飛ぶことが出来る。
その際、正確なイメージが必要になるから、イメージしやすい場所を大概選ぶ。ルークがグリーンメドウを訪れた時、何もない丘を選んだのも、そこが想像しやすかった事て、万が一の事故を防ぎたい面からだった。
通常なら、同行する者がその場所を訪れたことがなくても、術者が一度でも訪れているなら飛ぶことが出来る。
しかし、中には飛べない場所があるのも確かだ。
制約、或いは条件が整わない限り、移動出来ない場所。
おそらく、同行者、俺の事だが、俺が五聖獣たちと何らかの契約を交わさない限り、条件を満たさないのだろう。だから、直接行くことが出来ないのだ。
つまり、地道に一か所ずつ巡らないといけない訳か……
「護りて様は、とても優秀な魔術師様なのですね。精霊獣様の説明だけで、全てを把握されるとは……感服しました」
心から出た素直な言葉で誉められ、俺は少し照れる。が、
「アキラ様が魔術師だと。無礼だぞ、村長」
足下にいたルセが冷たく低い声で、村長を威嚇する。
いや、そこキレるとこかな。っていうか、そういう声出せるんだな、ルセ。
「申し訳ありません!! 護りて様!!」
真っ青な顔色に変わった村長が、萎縮しながら何度も、何度も俺に頭を下げる。
「アキラ様は、最強の魔法使い。この世界で一番の大魔導師だ! 魔術師ではない!!」
ルセが一喝する。
そんな些細なことどうでもいいんだけど。でも、絶対に言えないな。こっちに飛び火しそうだ。それよりも、いい加減頭を上げて下さい、村長。何か、俺が苛めているような気がしてきた。
「……あの、そんなに頭を下げないで下さい。俺は気にしてませんから。それよりも、先に進みませんか?」
俺は丁寧な口調で、見た目黒豆柴に一喝され、頭を下げ続ける中年男性(見た目が)に向かって、そう提案した。
お待たせしました(〃⌒ー⌒〃)ゞ
最後まで読んで頂き、ありがとうございますm(__)m
次回の更新は、12月25日(月)午前0時更新予定です。
明日は「新米神様ですが、魔法使いの修行のために異世界にやって来ました」を更新します。こちらも宜しく(゜∇^d)!!




