プロローグ
新連載開始しました!!
「新米神様ですが、魔法使いの修行のために異世界にやって来ました」の主人公、千葉睦月の過去世のお話です。
世界観は似てますが、全く違う物語です。
常世に渡って百年近くーー。
短い夏が終わり、秋が深まって来た頃だった。
俺、樫木彰は、縁側で熱燗を、秋刀魚の梅干し煮を酒のあてにちびちびと飲んでいた。
すると、親友の五聖獣の一角、玄武の黒武が供を連れずにやって来た。
たまに一人、フラッと来ることがあるが、今回は少し様子が変だった。
俺は気付いていたが、敢えて問うことはしない。
言いたくなったら、言うだろう。
そう思いながら、しばらくの間、俺は黒武と無言で飲んでいた。すると、
「頼みたいことがあるんたが……」
黒武はボソッと切り出した。
「いいぜ。何でも言ってみろよ。俺が叶えてやる」
「せめて、内容を聞いてから、返答すべきだろうが」
俺の即答に、黒武は呆れながらも、どこかホッとしたような顔をした。
「始めから答えが決まってるのに、考える余地なんてないだろ」
「……彰、お前は、我々に優し過ぎる」
ポツリと呟くように発せられた声は、とても小さい。
泣きそうだと感じるのは、俺だけだろうか。
「当然だ。……お前たちは、俺に居場所をくれた。永住出来る場所を与えてくれた。そして、友になってくれた。
俺は与えられてばかりだ。だから、少しでも返すことが出来るなら、何だってするさ」
そう言いながら、友の杯に酒を注ぐ。
嘘偽りのない、正直な気持ちだった。
「…………逆だろ。我らが彰に助けられてばっかりだった。今も……」
感情を表に出すことを嫌う親友が、顔を歪める。
それだけで、俺は十分だった。俺は黒武から視線を外し、外の景色に目を移す。
満月に近い月が煌々と照らし、鈴虫が鳴いている。穏やかな景色だった。
「出発はいつがいい?」
「……十日後だ」
「分かった」
静かな声で、俺は了承する。
その夜は、二人で明け方まで飲み明かした。
ーー十日後。
約束の日。
リュック一つを肩に掛け、俺は五人の親友たちと向かい合っていた。
「俺の役目は、生まれ変わったばかりの五聖獣たちのフォローだったよな」
「ああ、そうだ。最悪にも、数百年に一度くる大殺界と、生まれ変わる時期が重なってしまった。今の五聖獣たちでは、この大殺界を越えることは出来ないだろう」
白髪の親友、麒麟の白金が厳しい表情で答える。
他の四人も、白金と同様厳しい表情をしていた。
事は深刻だ。
大殺界を越えられない世界は、消滅する。
世界を覆っている結界が薄れ、崩壊するのだ。
結果、呑まれる。
界と界の狭間の、何もない空間にーー。
その影響は、隣接した世界にも大きな影響を与える。
消滅しなくても、死の世界に成りかねない程のダメージだ。
故に、親友たちは俺を頼った。
俺が界と界を自由に渡ることが出来る、魔法使いだからだ。
何よりも、俺は彼らが頼ってくれたことが嬉しかった。
「分かった。猶予は?」
「約、三年だ」
「OK!」
三年なら、何とか間に合うだろう。
大きな影響が出だす前に終わらせないとな……
「彰。お前の魔法は、そのまま使えるようにしてある。向こうに着いたら、【ステータス】画面で確認してくれ。
それから、向こうの五聖獣とは連絡済みだ。案内人を手配していると言っていた」
背を向けた俺に、黒武が教えてくれた。
「分かった。それじゃ、行って来る!!」
俺は頷き、親友たちに手を振ると、界を渡った。
最後まで読んで頂き、本当にありがとうございましたm(__)m
「新米神様ですが、魔法使いの修行のために異世界にやって来ました」共々、可愛がって下さると嬉しいです("⌒∇⌒")
これからも、宜しくお願い致しますm(__)m