オッサンは宿屋に行った
意気消沈したオッサンは受付嬢に聞いたお勧めの宿屋へと足を進めた。
だが、その足取りは遅くオッサンの意気消沈ぶりを表すようであった。子供か。
受付嬢が進めてくれた宿屋は宿泊料金が安く、それなりに美味しい食事を提供してくれる良心的な宿屋である。
宿の主人は元Sランク冒険者でそれなりに名前が知れた人物だという。
冒険者時代に貯めた金を使い、新人冒険者や若手冒険者へ何かできないかと考え、宿を始めたと言う。男っ前か。
しかし、そんな主人ガッツ40歳もいくら新人とはいえ、いい歳したオッサンが来るとは夢にも思わなかっただろう。
「え?おまえさん本当に今日登録した新人なのか?」
「……は、はい……」
宿の主人の目の前には小型犬の様に小刻みに震えるオッサン。これが本当の小型犬なら保護欲が掻き立てられるだろうが、オッサンなので可愛くない。むしろキモい。
宿の主人はそんなオッサンを見て内心で殴り飛ばしたくなる衝動を抑えつつ、オッサンを迎え入れることにした。商売なので。
「わかった、おーい!ピノぉ!お客さんを部屋まで案内してやってくれー!」
宿の主人が奥に声をかけると「はーい」の返事とともに幼女がトテトテと小走りでやって来た。
「これは俺の娘でピノだ。宿の手伝いをしてくれている、何かあったらピノか俺に言ってくれ」
「よろしくお願いしますー」
幼女がペコリとお辞儀をする。それに釣られてオッサンもペコリとお辞儀をする。微笑ましい。
オッサンのお辞儀を見てお辞儀を辞めた幼女がまたお辞儀をする。
お辞儀を辞めたオッサンがまだお辞儀している幼女を見てまたお辞儀し直す。
オッサンのお辞儀を見てお辞儀を辞めた幼女がまたお辞儀をする。
お辞儀を辞めたオッサンがまだお辞儀している幼女を見てまたお辞儀し直す。
オッサンのお辞儀を見てお辞儀を辞めた幼女がまたお辞儀をする。
お辞儀を辞めたオッサンがまだお辞儀している幼女を見てまたお辞儀し直す。
オッサンのお辞儀を見てお辞儀を辞めた幼女がまたお辞儀をする。
お辞儀を辞めたオッサンがまだお辞儀している幼女を見てまたお辞儀し直す。なんだコレ?
最初は微笑ましく見ていた宿屋の主人の顔もだんだんと引きつってくる。
「……おい、もういいだろう?」
たまらなく声をかけた主人のおかげで第一回お辞儀大会は引き分けで幕を閉じるのだった。