先生は意外と
「さあ〜、準備体操はしっかりとね〜」
「佐藤君っ、手を抜かないっ」
なんで今日の担任はこんなにテンションが高いんだ。
「カズ、先生のテンションが高い理由分かるか」
「さあ、一学期最後のプールだから気合い入ってんじゃないか」
「さあ〜、もっとほぐしてね〜」
「いっちに、さんしっっ」
プールなんて泳げる奴以外楽しめねぇよ。
「さぁ〜、自由時間よ」「好きに戯れなさい」
やっと準備体操終わった。適当に浮かんで時間つぶそう。
「ソラ、今日も浮かんでるだけなの」
ミナとユリカがぺたぺたと近づいてきた。
「そうだよ」
「泳げなくても、浮かべればなんとかなるんだよ」
「ちょっとは覚えようよ〜」
にしても、今まで意識して見た事無かったから気付かなかったけど、ユリカって結構主張してる体してるんだな。
「はっ」
「ユリカ、気をつけて」 「ソラが変な目で見てる」
「えっ」
「ソラ君ってそういう人だったの」
「いやいや、そうじゃないよ」
女の身体なんて、姉が家の中下着でうろつくから見慣れてるんだが。
「そ、そういえば」
「なんで先生、今日はいつにも増してテンション高いの」
「あっ、話変えたな」
「そんなんじゃないよ」
「ふーん」
「多分ねぇ」
ちょっとミナがなにかをためらっている。
「多分、なんだよ」
「胸、小さいの気にしてるんだよ」
「えっ」
「いや、先生結構でかいと思うけど」
「あれね」
ミナが辺りを確認する。
「あれ、パット入れてるよ」
「偽もんかよ」
「バカ、声がでかい」
「さっき、からかって触ったら胸の感触じゃなかった」
同じ女性として申し訳なく感じたのか、珍しくミナがしゅんとしている。
「だからテンションでごまかしてるんじゃないかな」
ユリカが余裕の分析をしている。
「へぇ」
「先生も大変なんだな」
ミナはこの先、成長するんだろうか。
なぜか心配になってくる。
「あっ」
「あたしのは見るな」
「これからなんだから……多分」
「ソラっ」
「ま〜た泳がねぇのか」 カズが早くも一泳ぎしたのか、ゴーグルを外しながら近づいてくる。
ユリカが恥ずかしそうに、ミナのちょこんと後ろに隠れる。
「俺はいいんだよ、カズ」
「おっ、ミナちゃんとユリカちゃん」
「二人も泳がないのか」
「あたしは今日は焼きに来たから」
ミナが年齢に合わない冗談を言う。
「泳ぎたいんだけど、皆の、邪魔になるから」
ユリカが控えめにミナの後ろから顔を出しながら答える。
ユリカも俺の仲間かな。皆、カズの様に泳げるわけじゃないんだよ。
「そしたら、俺が教えようか」
「えっ」
「いや、泳げないわけじゃないんだ」
ん、どういうことだ。
「皆が邪魔でまともに泳げないの」 んっっ。
あの控えめ代表のユリカがなんか凄い事言ってる。
「もしかしてユリカちゃん、結構泳げるの」
カズの目の色が変わった。何を考えてるんだ。
「多分、カズ君より速いよ」
「よっっし、ユリカちゃん勝負しようぜ」
なんでそうなるの。カズよ。
「負けた方が罰ゲームな」
今度はユリカの目の色が変わった。勝つ気でいるな。
「ちょっとミナ、二人を止め……」
「あれ、いない」
「先生の許可取ってきたよ」
ミナがはしゃぎながら報告してきた。仕事がお早いようで。
「よしっ、ユリカちゃん」
「手加減はしないからな」
「あたしだって」
「カズ君、罰ゲーム覚悟しておいてね」
あぁ、ユリカまでキャラ変わっちゃって。
どうなるの、この勝負。