ソラ
「ねえ〜、なんで人って生きてるの」
「えっっ、それは……」
「わかんねぇよ」
開始早々に意味深な質問をしてきたこいつは俺の幼なじみの女の子。
俺の部屋で俺の漫画を自分の物の様に読んでる女の子。
名前はミナ。
そして俺の名前はソラ。
「やっぱ分かんないよね〜」
「なんでそんな事急に聞くんだよ」
「急にじゃないよ」
「ず〜っと考えてたんだよ」
そう言いながら、俺をじっと見つめてくる。やめてくれ、俺はお前のその眼に弱いんだよ。
「どうしたの」
今度は笑いながら言ってきた。こいつ、俺で遊んでるな。
はっきり言って俺はこいつが好きだ。 中学入ってからこいつに対してもやもやした感情を持つようになり、姉に相談したら笑いながら、それは恋だよ少年、と言われた。
初めての感情で自分では恋と決めつける事はできなかったが、人からそう特定されたのだからそういう事なのだろう。
「今日のソラ、変だよ」
「っっ」
「いきなり顔を近づけてくるなよ」
「びっくりするだろ」
「いつもの事でしょ」
「やっぱり変」
お前のせいだよ。
「あっ、もうこんな時間」
そう言いながら読んでた漫画を俺に渡してきた。おい、自分で片付けろよ。
「それじゃあ、また明日ね」 そう言いながらドアノブに手を掛けて俺に笑顔を残して行った。
あいつのいない俺の空間にほっとしつつも、どこか寂しさが漂っていた。
あいつは自分でそこそこ可愛いと自覚もせず、教室でも俺とあと二人くらいの女子としか話さない。
何回か他の男子からミナの事を聞かれたが、そいつらもミナに対して好意を持ってるのだろう。
たまに俺とミナの事で茶化される事はあったが、不思議と嫌ではなかった。
ミナは俺に対してどう思ってるのだろうと疑問に思った事があったが、なんか怖くなって考えるのを止めた。
今の距離感でいい。そう自分に言い聞かした。
今はこのまま。