改第4話 冒険者ギルド
カルノに付いて冒険者ギルドにやってきた飛鳥。
ギルド内は多くの人で賑わっている。受付嬢としきりに話し込んでいる人もいる。
カルノはすでに自分の依頼を探しに別行動をしている。
黒髪の飛鳥は否応なくギルド内の人にジロジロと、もの珍しげに、あるいは値踏みするような視線を向けられている。
さすがに居心地が悪いようで飛鳥は逃げるように2階のギルド登録に向かった。
「本日は新規または支部登録ですか?」
ニコニコとマニュアル通りの質問をする受付嬢に新規と答える。
「新規ですね。では簡単に冒険者ギルドについてご説明します。
冒険者ギルドとは街中の求人募集から街付近に迷い込んだ魔物の討伐まで難易度を問わず依頼主からの依頼を斡旋します。
依頼には依頼主からの雇用者に向けてのランク指定、魔物の討伐にはギルドが独自に定めた討伐可能推定ランクを提示します。
依頼主によって指定されている場合は指定されたランク以下では受けることができません。
また、依頼を達成できなかった場合依頼主に損害が発生することになりますので、その場合報酬として受け取るはずだった半額を支払っていただくことになります。
ここまではよろしいですか?」
受付嬢は飛鳥が頷くとさらに続ける。
「冒険者と名乗ることができるのは危険性が中ランクの魔物を討伐できると認められた場合です。
冒険者の資格を手に入れると国家に縛られることなく国を移動することができるようになります。
もちろんこのフレニア自由都市連邦内は自由に連合民は移動できます。
新規の場合はGランクからになります。
Gランク依頼は街での求人依頼になります。
中ランクの魔物というのは冒険者ランクのC,Dにあたります。
冒険者になった場合強制的にギルド支部のある街が魔物による襲撃を受けた場合防衛義務が発生します。
これは冒険者が束縛されない代わりの義務ですね」
冒険者にならないと国を出ることはできないのかと若干飛鳥は落ち込む。
「最後にギルド証を発行するために銀貨1枚をいただくことになります。
また再発行には同じく銀貨1枚が必要になります」
飛鳥は言われたとおり銀貨を支払う。
「これにてギルド登録は終了となります。ギルド証が発行されるまでしばらくお待ちください」
ギルド証が発行される間しばらく待たされることになった飛鳥は手持ち無沙汰なので本棚にたてかけてある本を手にとってみる。
その本は図鑑のようだ。はじめは豚や羊といった見慣れたものが書いてあるのだが、後ろの方に行くほど見たこともないようなものが目に飛び込んでくる。
思わず異世界なんだなぁ……と思ってしまう。
ギルド証を受け取った飛鳥はさっそくどんな依頼が受けられるのか尋ねてみる。
建設現場の作業、レストランの皿洗い、街の清掃や商店の荷運び。紹介されるのはそんなものだった。
字が読めない、土魔法が使えると受付嬢に申告している飛鳥であるが実際は土魔法も使えないので建設現場は無理だろう。
商店の荷運びをまずは受けることにした。
「今日はかわった奴が来たなぁ。よしお前今日中にこの荷物すべてを指定された店に運んでくれ」
黒髪の飛鳥に一瞬びっくりした店主であるがそんなことはどうでも良いかのように仕事を説明する。
指定された店はレストランや宿が多い。
中には調味料か香辛料が入っているのではないだろうか。
「ふぅ……」
この街の地理に不慣れな飛鳥は夕方になるまでかかってしまった。
さらに届け先には髪の色で毎回ギョッとされてしまった。
店主に依頼達成のサインをもらい、ギルドに戻る。
「確かに依頼達成を確認しました。こちらが報酬になります」
報酬の内容は銅貨5枚。
今日出た泊まっていた宿とはえらい違いだ。
やはり新しい宿を探さなくてはならない、と思い冒険者ギルドをあとにする。
宿を探し回っている飛鳥はある1軒の宿の前にいた。
鼻腔くすぐる料理の匂い。店も繁盛しているようだ。
朝出た宿とは違いこじんまりとした外観でアットホームな感じだ。
「は~い!?な、何泊ですか?
1泊銅貨5枚となっております」
元気が良さそうな看板娘が飛鳥の容姿を見てぎこちなく答える。
そんな看板娘を見て苦笑しながらも1週間くらいは同じ場所にいた方が落ち着くだろうと思い7日間と答える。
「お食事は朝・夜2回、街の鐘がなってから食堂で食べることができます。服の洗濯は追加料金が必要ですが承っております」
部屋でしばらく待ち、そろそろお腹も限界だと感じ始めた頃、夕飯を告げる鐘がなったので飛鳥は食堂に向かう。
夕飯はカウンターに自分で取りに行く形式となっていた。
中から宿屋のおばちゃんがバケットはおかわり自由よ、と声を張り上げている。
飛鳥は自分の分の食事を受け取り空いている隅っこの席に座る。
視界には飛鳥の方を見ては周りの人としきりに顔を寄せてヒソヒソと話し合う人が何人も見受けられる。
結局誰にも話しかけることなく、また話しかけられもせず、飛鳥は寂しく夕食を終えた。