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改第3話 カルノ・ヴェン

いろいろアドバイスありがとうございます。

 翌朝、飛鳥はノックの音に眠い目をこすりながら、ドアに向かう。

「どちらですか?」

「朝ごはんを届けに参りました。もしお食べにならないようでしたらこのままお下げ致します」

 朝食を受け取り、さっそく手を伸ばす。

 柑橘系のジャムやバターが塗られたバケット、燻製肉、フルーツも盛り合わせ、ヨーグルトにカフェオレ。

 日本にいたころとは朝ごはんとしては違うがどれも見たことがあるような食べ物である。

 高級宿ということもありバケットも焼きたてであるし、燻製肉も程よく温められている。舌鼓を打ちながら食べ進める。


 飛鳥は昨日はすぐ寝てしまって宿ではトイレに行かなかった。

 しかし朝食も食べ程よくリラックスした彼はトイレに行きたくなってしまう。

 部屋の中にトイレらしきものを発見する。

 しかし紙など存在しない。

 飛鳥はどうしたら良いかわからない。

(……どうしらいいんだ? もうやばいし……。あれはなんだ?)

 飛鳥の視線の先には便座の蓋に付いているキラリと輝く水晶。思わず手を触れてしまう。

「うわぁ!?」

 体の中から何かが抜けるような奇妙な感覚に思わず声を上げてしまう。

 もう一回、今度は人差し指1本で触ってみる。

 そうすると水晶の中に不思議な模様が浮かんだでいるのが見える。

 その模様は体から何かが抜けるような感覚が終わるとともに消えた。

 水晶について不思議に思いながらも紙はないが飛鳥は仕方なく用を足すことにした。

 やはり用を足したあとやはり紙がなくて途方にくれてしまう。

 なにか関係があるのではないか、と思い飛鳥は頭の中であの不思議な模様を思い浮かばせる。

 するとどうだろう。

 体に爽快感がはしる。

 汗まみれだった体もきれいになっている。

(これが魔法なのか!)


 宿をあとにした飛鳥は取り敢えず街を歩き回ることにした。

 歩き回っていると建物は木造ではなく高圧縮された土でできていることに気付く。

 道の途中にはもちろん自動販売機はなく、計画的に整備されたであろう街の作りが街全体に気品を与えている。


 すれ違う街の人たちは黒髪の少年をうさんくさそうな目で見ている。

 当然だ。

 黒髪なんて聞いたことがない。

 視線にさらされる飛鳥はというと街の様子が不思議なのかときどきホーッと感嘆の声をあげている。

 そんな飛鳥に声をかける者がいた。


「君、この街の人じゃないよね?」

 話かけてきた少年は飛鳥が見たこともない緑色の髪をしている。

 目も緑色である。

 街の中で見かける人は今までみんな茶色い髪、茶色い目をしていた。

「あぁ、この街に昨日来たばかりなんだ」

 飛鳥は困惑の表情を浮かべる。

「そうなんだー!

 君なかなか注目を集めてるよ。

 黒髪なんて見たことないからね」

 そんなことを言われても飛鳥はそうなんだ、としか答えることができない。

「僕の名前はカルノ・ヴェン。カルノだ。

 黒髪の少年君、君はなんて言うんだい?」

 緑髪の少年は手を伸ばしてくる。

「俺はアスカ・ミナトだ」

 飛鳥は伸ばされた手を手に取る。

 どこか気取った感じのカルノであるが人が良さそうなハンサムな笑みを浮かべているので飛鳥に不快感を与えない。

「見てわかると思うんだけど僕は風魔法が使えるんだ」

 誇らしげにカルノは言う。

 理解できず飛鳥は困った表情を浮かべる。

「君は土魔法使いしかいない場所で育ったのか……

 髪の色でその人が使う魔法の系統がわかるんだ」


 カルノの言葉に飛鳥は耳を傾ける。

 魔法系統とは火、水、風、土、光、聖、系統外があるとカルノは続ける。

 その系統に対応するように赤、青、緑、茶色、金、銀、白と髪の色があり、目の色は無系統魔法使いだけは髪の色と一致しないらしく紫色をしているという。

 その説明に飛鳥は自分が凄いイレギュラーなことに気付く。

 最初にカルノが言ったように黒髪なんて見たこともなく、得体の知れない魔法を使うかもしれない相手に気安く話しかけることはできない。

 門番や宿の人に悪かったと思う飛鳥。

 そんな彼に進んで話しかけるカルノはさらにすごいだろう。


「君はどんな魔法を使うんだい?」

 カルノはこれが聞きたかったとばかりに目を輝かしている。

 その勢いに若干身を反らしながら飛鳥はカルノが話した内容に矛盾しないように答える。

「俺は土魔法だな。

 なんせ他の魔法なんて村の人間が使ってるの見たことがないもんでね」

 その答えにカルノは肩を落とす。

 カルノは飛鳥の魔法に興味があったようだ。

 気を取り直したカルノは飛鳥に冒険者ギルドに行くところだったと言う。

 冒険者ギルドは職業斡旋所だそうだ。

 この街で暮らすとなると収入を得なければならないと考え飛鳥はカルノについて行くことにした。



 カルノは自分の隣を歩く少年の黒髪を見ながら考える。

 冒険者ギルドには自分の他にも赤や青といった自分と違う系統を使う髪の色をもつ人が数人いることを知っている。

 ギルドマスターは赤髪の火の魔法使いだし、カルノが気を寄せるギルドマスターの娘のマリーも少し色は薄いが赤い髪をしている。少し年上の昔は気の良かった今では荒くれ者のジョーだって金髪の光の魔法使いだ。

 でも隣を歩くアスカという少年は違う。

 興味本位で話しかけ、冒険者ギルドに連れて行くことになってしまったが、彼は土魔法しか使えないそうだ。


 土魔法使いはこの街の人口のほとんどである。

 カルノやジョーの両親だって土魔法使いだ。

 といっても土魔法は便利だが火や水の魔法と違って見劣りしてしまう。

 カルノは風魔法を使えることを誇りに思っている。

 風魔法の使い手は伝説では空も飛べたそうだ。一度飛んでみたいと思う。

 話がそれたが飛鳥は不思議だ。

 カルノが試しに風魔法で小さい旋風をおこしたところ、彼は旋風というよりカルノを含めその場全体を見ていた。

 もしかして魔眼を持っているのだろうか?

 ますます興味深い。

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