改第21話 指名依頼後
短いです。
翌朝、ギルドマスターに呼び出されるのではないかと内心緊張しながら今日の依頼を受けに冒険者ギルドへ飛鳥は向かう。昨日が特別であっただけで今日は街中依頼を受けるつもりでいた。
「……おはようございます。アスカさん。今日もいつもの依頼でいいですか?」
冒険者ギルドに入るといつも通りマリーが受付を担当してきた。その表情はいつもより少し固く見える。
「いつも通りお願いします。マリーさんなんかありました?」
飛鳥は表情の変化を逃しはしなかった。
マリーは声をひそめて言う。
「いや、特に何も。そ、そ、そういえばアスカさん最近街で困ったことはありませんか? こんな街にいられるもんかとか思うような出来事はありませんでしたか?」
早口でまくしたてるマリーに飛鳥は訝しげな視線をおくるが、自分のことを思いやってくれてるのだろう思い満面の笑みを浮かべ答える。
「そうですね、最近の話ですが森の中で女性に襲われたんですよ。誰とは言いませんが……」
ただの黒い笑みであった。
マリーの顔から目に見えるように血の気がなくなる。
「昨日はすいませんでした。いくらでも謝りますのでどうか街から出て行かないでください」
勢い良く頭を下げるマリーに冗談で言ったつもりの飛鳥まで慌ててしまう。
「マリーさん冗談ですよ! それにこの街から出てくことなんてないですよ。マリーさんはいったい何を心配しているんですか?」
その言葉を聞いてマリーはほっと肩を下ろす。
「アスカさん冗談がきついです。私本当に焦ったんですよ」
口を尖らせるマリー。
「俺が街から出て行くと不都合でもあるんですか?」
そう飛鳥は尋ねる。対するマリーは冷汗を流している。
「別にふ、不都合なんてないですよ! ただ街の皆も寂しがるし、アスカさんも他の街でまた慣れるのも大変でしょう」
今ひとつ釈然としないが、それもそうかと思い飛鳥はマリーに返事をし、冒険者ギルドをあとにした。




