挿話『ヒジリの独白』
更新ミス(重複投稿)したのが悔しくて。
ぼくは夢見がちな少年――ではなかった。
小説を読むのは単純に面白いからなのだけど、読書を始めるきっかけとなった出来事についてはよく覚えていない。ぼくのことだから退屈しのぎ、というのが一番ありそうな線だと思う。
この異世界に召喚されてしまう前、ぼくは馬鹿みたいに本を読んでいた。小説だけじゃなくて、いろんなジャンルを読んだ。それがこの世界で役立っているかと聞かれれば、ほんのちょっとは役立っているものの、ほとんど役に立ってはいない。結局、知識というものはその世界の中だけで適応され、役に立つものだということだ。
ここに、一本の日本刀――のような剣がある。ぼくはそれを意識的に刀と呼んでいるけれど、それはぼくの意識的なもので、あまり意味がない。問題なのは、ぼくがこの刀を武器にして戦っているという驚くべき事実なんだ。
一介の高校生。
ぼくは誇張なく、ただの高校生だ。
剣道の有段者であるはずがなく、打ち明けてしまうと、剣道部に体験入部をしただけのド素人だ。体験入部前にルールブックや入門書を読んだが、結局それだけのことで、実践に耐えうる能力を持っていたわけではない。
それでも――ぼくは生きている。
生きている。
ぼくにはその事実が恐ろしい。
素直に喜ぶことは、なかなかできそうにはない。最弱だからこそ最強である――そんな理屈では説明できない何かが、ぼくの周りを取り巻いているような気がしてならないんだ。
この世界には――秘密がある。
ぼくにはその秘密が、ぼくたちの旅にとって、大きな意味があるものに思えて仕方がない。