手紙
エビルワールド 手紙
孝太郎とメイは急いで階段を下って行った。メイに連れられ複雑な廊下を抜けたその先では、マオウ達が朝食の用意を終えようとしていた。
「お、メイ! 孝太郎! 探したんだぞ。どこに行ってたんだ?」
「マオウ!! 凄いものが見つかった!! ちょ、ちょっとこれ読んで!!」
孝太郎は手紙の表面をマオウに見せつけ、読め読めとせがむ。それをバンダナで隠されている目は読み進め、最後に眉をひそめた。
「これは……先代の……。シラキ、クウサとルーナを呼んできてくれ」
今は魔法の特訓をしているのだというクウサとルーナをシラキは命令通り呼びに言った。
「——はぁー、クウサ強いなぁ」
「こう見えても鍛えてるの。ルーナも相当な魔力よ」
何も知らない二人が戻ってきた。ドアを開けると、皆が一斉に二人を見つめるので彼らは戸惑った。
「どうしたの? 何か大事な話?」
「そうだルーナ。クウサも、皆もこっちに来てくれ」
一同はマオウの机の前に集まった。何事か? と、何も知らされていないクウサ、ルーナ、マリア、シラキは顔を見合わせる。
「皆、孝太郎とメイが凄いものを見つけたぞ! これは先代マオウからの手紙だ! ……ところでこんな物どこで見つけた?」
「話すと長くなるんだけど……赤い扉の部屋に入ったらそこで変な声を聞いて……メイと一緒に何か調べようと資料室に行ったんだ」
「何!? あの部屋に入ったのか!? ていうか入れたのか!?」
普段からひょうひょうとしているマオウだが、開かずの赤い扉の中に入ったと聞いてその表情と声音は一変した。心の底から驚いたと言わんばかりに孝太郎とメイに詰め寄り、どうやって入ったのか、何を見たのかと問い詰める。
孝太郎は赤の扉の部屋で聞いた事、メイが天使の気配を感じたこと、そこから資料室に行き日記を見つけた事を話した。とても長い話だが皆真剣に聞いていた。
「そしてこの手紙を見つけた。マオ・タカヤマへの手紙だ」
手紙の内容はこうだ。
『私の余命ももう僅かだろう。だからこの手紙をマオ・タカヤマに託す。おそらくこの手紙を見つける頃にはネレシア神が世界を裏切っているかもしれない。もしそうなったら読んで欲しい。
私は神の事を信用していない。だからクラリオン・ヴェアヌに神の城を調査させた。するとどうやら神は天使に毎夜ワインを振舞っているとの事だ。
しかもワインには薬を仕込んでおり、調べさせた所その薬は天使の心を穢し、下僕として悪行を働かせるためのものだったのだ。
つまり天使は穢れた心を持ち、神の悪行に何も疑問を持たず従う道具にされている。
これは我々魔王一族が使っていた物で、飲ませた本人の下僕となる薬だ。
薬の効果が切れれば天使達も元に戻るだろう。
マオ、神から薬を取り上げて天使達を解放しろ。
天使達に正常な思考を取り戻させ、神の中に味方を作りネレシアの悪行をやめさせるのだ』
「ふーむ……あの恐ろしい薬が天使を動かしていたのか……しかし、神はどうやって入手したんだ?」
「あの、私、心当たりがあります!」
マオウが言う恐ろしい薬の入手元をメイは知っているようだ。
「本当か!? メイ、それはどこで作られてどこから城に持ち込まれているんだ?」
「私たち奴隷の中には温室の世話をする者がいました。温室で育てられた植物は何かの粉薬に加工し神に捧げます。奴隷は毎日、なんのために使うのかわからない薬を作り続けています。調合を間違えれば他の奴隷より百倍は厳しいと言われる仕置きが待っているので、みんな、温室行きにはなりたがりませんでした」
メイの言う薬が天使に飲ませる物であれば、厳しい仕置きも納得が行く。万が一調合を間違えたものを飲ませれば天使が正気に戻ってしまうからだ。
神々はネレシア神に逆らえば追放される。そのような事があれば代わりの神が見つからない以上世界のバランスは崩れてしまう。仮に見つかったとしてもネレシアの息がかかった者が新しい神となれば世界はまたひとつ驚異に晒されてしまう。
しかし天使は違う。背負っている責任が違うため、神に逆らった所で堕天使となり城を追放されるだけだ。だからこそ堕天のリスクを背負ってでもネレシアに逆らおうとする天使が現れるかもしれない。ネレシアはそれを恐れたのかもしれない。
と、ここまでが手紙とメイの情報によって導き出されたマオウ達の推測だ。
つまり薬を作るのを止めさせれば天使はネレシアの兵士ではなくなり、戦いをやめるかもしれない。それによって堕天の道を選ぶ不幸な天使を生んでしまうことになるが……ネレシアの戦力を減らすにはこれが最速だろう。
「では、当面の目標は神から薬を奪う事としよう。どうやって奪うかは……朝食を食べてから考えるとしよう」
マオウの提案に一同賛成だった。あまりにも長い話だった為、皆空腹だったのだ。




