日記-3
メイは孝太郎に詰め寄る。孝太郎は目を反らした。
「いや……その……ていうか、顔、近い……」
すると、メイは慌てて孝太郎と一歩距離を置いた。そして彼の目をまっすぐ見て問う。
「その反応、何かあったのですね」
「ん……まぁ。少し長くなるけど……。メイさ、この世界の歴史に詳しい?」
「あ、いえ……私はずっと奴隷の身分でしたから……。そういった知識はあまりないですね。神に関することなら城に仕えていた頃の知識はありますが……」
申し訳なさそうにメイは謝った。
「いや、謝らなくても……」
「あ、すみません。あの……一番手っ取り早いのは、マオウさんに聞くことだと思いますが、お急ぎでしたら資料室で調べてはどうでしょう? 多分、歴史の本もあるかと思います」
「資料室? そんなのがあるのか?」
「はい! よかったら行きませんか? ご案内します」
「うん、頼むよ」
するとメイは歩きだし、こっちこっちと孝太郎に手招きする。
彼女はすいすいと廊下を進んで行く。
「メイ、このややこしい道覚えてるのか?」
「はい!」
「……すげぇ」
孝太郎は、この道を覚えるなんて、と気が遠くなった。
――道は順調に進んでいた。しかし、ふいにメイが急に足を止めた。
「どうした?」
メイは顔面蒼白になって孝太郎を見上げた。
「て、天使です……」
「……わかるのか?」
彼女はこくりと頷く。
「あそこの、赤い扉から……わずかですが、天使の気配が……」
気がつけば彼女は孝太郎の袖をぎゅっと掴んでいた。
「あの扉は誰も開けられない謎の部屋だと聞きました。あれは、天使の部屋なのでしょうか……?」
「メイ……」
孝太郎は静かに、先ほど起こったことを話し始めた。その間、メイは頷くか小さな声で相槌を打つかをして話を聞いていた。
「それじゃあ、この天使の気配は……」
すべてを聞き終わるとメイはじっと扉を見つめる。
「恐らく、そいつらが捕まえた天使がここに閉じ込められてる」
高い確率でそうであろう、と思いながら孝太郎は言う。
「その人達が言っていた、神と手を取り合う時代っていうのも気になりますね……。――――孝太郎さん! 資料室へ行きましょう!!」
メイは孝太郎の手をとって、資料室めがけて走り出した。
「お、おい! そんな走らなくても……」
自分より背の低い彼女に手を引かれ、孝太郎は腰を折り曲げて走りだす。
「いいえ、私、早くこの真相が知りたい! ……マオウさんとマオ・タカヤマの関係も」
最後の所だけ、メイは小さな声で言う。
「……そうだな。さっさと突き止めちまうか!」
ここで、メイが進路を変えた。
「こっちです!」
「うぉっと……」
二人は入口に入っていた。その入口とは、階段の入口である。
「階段……?」
孝太郎はほのかな魔力の光で照らされた階段を見上げる。
「はい。資料室は本のカビ発生を防ぐために、この地にある岩の一つをくり抜いて高い場所に設置したとお聞きしました」
「なるほどねぇ……」
「では、行きましょう!」
メイはさっさと階段を駆け上がって行った。
「あ、おい、ちょっとまて!」
孝太郎も階段を上がり始める。
上りきった先には、鉄の扉があった。重たい扉を孝太郎は開けた。
――――そして現れた光景は、均等に並んだ本棚と、それを照らすべく資料室に舞い込んだ光達。所々に通気孔もあり、そこから夜の冷たい風が吹き込む。
「すげぇ……本だらけ……」
しかし光源が少ない資料室は、探し物をするのには不便だ。
「ライオーザス」
孝太郎は高い天井に光を放ち、部屋全体を照らす光源を作った。一気に部屋が明るくなる。




