日記-2
水晶玉は、孝太郎が眺めようとした途端、青く光りだした。
「うっ……。こいつか!?」
眩しさに孝太郎は目をつむる。
『タカヤマ家の息子が次期魔王だと!? あんな落ちこぼれを魔王にする気か!? 魔王一族の恥だ!』
どこかから聞こえる声が部屋に響き渡る。
『しかし、次の神の長は魔王一族に対して友好的な関わりを求めている。もう、我らと神が争う時代は終わったのだ。次に魔王となるのはマオ・タカヤマが相応しい』
『だが……やはり俺は納得行かない。昔は脅威と恐れられたタカヤマ家の子孫が『あれ』だと世に知られたら……』
『確かに、マオは歴代の魔王達……我ら魔王一族の中でも、最も魔王らしくない。だがな、攻撃的なヴェアヌ家には今の時代の魔王は任せられない』
『我がヴェアヌ家を侮辱するか!』
『誰も侮辱などしてはいないではないか。これは魔王の決断だ。逆らう事は許されんぞ。……それに……今、捕らえてある天使の存在を神に知られてはまずい。魔王としての仕事はマオに任せ、我らはこの天使の存在を誰にも知られないようにしなければならない。この天使のことは、我ら以外知ってはならない。……元々、歩み寄ってくる神を無視して天使を捕まえたのはお前なのだからな』
『……ちっ』
『行くぞ、我らがこの城に住めるのも後わずかだ。魔王がここをマオだけの城にすると決めたのだから、マオがこの部屋に立ち入らないよう準備を進めなければならん』
ここで光は消え、暗さを感じた孝太郎は目をゆっくり開けた。
「なんだ……? 今の……」
孝太郎はじっと水晶玉を見つめる。
「神と争う時代の終わり? 天使? マオ・タカヤマ……?」
彼は、その名前に聞き覚えがある気がしてならなかった。
「マオ・タカヤマ……マオ……マオ……ウ? マオウ・タカヤマ!?」
孝太郎は茶色いドアに目を向けた。
「今、この城に住んでるのはマオウとシラキとメイだけ……と、なると、この城が過去に魔王一族の住家だったなら……さっきの話し声が魔王一族の誰かのものだったら……――――この城に……いや、もしかしたらこの部屋に天使が!?」
彼はドアノブに手をかけた。が、その手がそれ以上動くことはなかった。
「いや待て、ここで勝手な行動を起こして大変なことになったら……」
ドアノブから手を離し、彼は水晶玉を床にそっと置いた。そして、一目散に部屋から出ていく。
壊れていない方の扉を閉め、壊れてしまった扉を無理矢理元の位置にはめこんで、孝太郎はいつもの団らんの間めがけて駆けていく。
「それと気になるのは神と魔王が手を取り合う時代……そんな時代があったのか?」
足音が五月蝿く響く廊下。それに気がついて、誰かが部屋の扉を開けた。
「孝太郎さん……?」
彼女は去っていく孝太郎を追いかけた。
「待って下さい! 孝太郎さん!」
その声に反応して、孝太郎は足を止める。振り向くと、そこにはメイがいた。
「メイ……?」
メイは孝太郎の元に駆け寄る。
「どうしたんだ?」
「孝太郎さんこそ……そんなに慌てて……。まだ四時半ですよ? 何かあったのですか!?」
ネグリジェ姿でメイは言う。
「四時半!? ……わるいな、なんか起こしたみたいで。足音、五月蝿いよな……」
メイは首を横に振る。
「いいえ、私は慣れない環境で、あまり眠れなかったものですから……。――――それより、何かあったのですか?」




