日記-1
――――翌朝。目を覚ました孝太郎は、ベッドから跳び起きた。
「……どこだ……ここ」
周りは岩で囲まれていて、白い机と椅子とベッドがある。光源は魔法で作られた光の玉だ。いくつも置かれたガラスの花瓶に詰まっている。
とりあえず、のそのそとベッドから出る孝太郎。辺りを見回して、そっとドアを開けて外を覗き込む。
「……マオウの……城?」
どこに行ったら何があるのか、さっぱりわからない岩の廊下。孝太郎はわけがわからないまま、廊下へ突き進もうとした、が、足に違和感を覚えて部屋に引き返した。
「靴忘れてた……」
ブーツを履きながら、孝太郎は考えに更ける。
「……確か、俺はマオウと酒を飲んでいて……で、飲み過ぎてそのまま寝てたのか?」
どうやら、彼の中に自分が酒を沢山飲んでいた記憶はあるようだ。しかし、潰れる少し前からの記憶は、無い又は不鮮明なようだ。
「とりあえず、マオウを探すか……」
孝太郎はドアを開け、長く複雑な廊下をさまよい始めた。廊下の中にも魔力の光が飛び交っている。
「確か、黄色の扉が普通の部屋で水色の扉が水周り関係だったはず……」
以前、マオウに教えてもらった説明の記憶を頼りに孝太郎は廊下を進んで行く。しかし……。
「いや、わっかんねぇよ!! ほとんど黄色い扉じゃねぇか!! 青い扉も等間隔で設置してる風に見えるし! てか、なんでこの城は風呂や便所が等間隔に並んでいくつもあるんだよ!! つーか、そもそも俺が居た部屋すらもうわかんねぇ! なんなんだよ!!」
怒りに身をまかせ、孝太郎は扉を殴るように叩いた。
すると、ギシリと音を起てて、扉が食い込んだ。
「……え!?」
さっと青ざめる孝太郎。
「え、もしかして、壊した……?」
ゆっくりと扉を引っ張りなおす。しかし、それによって扉は外れてしまった。大きな両開きの扉の片側部分が、孝太郎に迫り来る。
「うわぁ!!」
それを慌てて避ける孝太郎。間一髪、押し潰される事は免れた。大きな音を起てて、大きな扉は廊下にもたれ掛かるように倒れた。
「あぶね…………ん?」
その時、何かに気付いた孝太郎は、倒れた扉とまだ閉まったままの扉に目を近付けた。
「これ……赤色?」
城の中は黄色と水色の扉ばかりだった。しかし、この扉は赤色で、しかもかなり古ぼけている。
「マオウのやつ……城を改造したとか言ってたよな。これは手付かずの部屋か?」
そっと部屋の中を覗き込む。中は真っ暗で何も見えない。――しかし一瞬、部屋の奥が青く強く光った。
「なっ!?」
孝太郎の瞳孔が開く。彼は手に汗を浮かべ、緊張で重くなった足を動かした。
廊下を照らしていた魔力の光が室内に入り込む。そのおかげで室内の様子が少し見えるようになった。中は主に彫刻や金銀財宝が占めていた。
「……宝物庫なのか?」
部屋の幅は狭いが奥行きは長く、孝太郎が目指している青い光の元はずっと先のようだ。宝と思われる物は、コレクションされたように綺麗に飾られている。その中には、骸骨や大きな水晶など、儀式にでも使われそうな物まである。
「何なんだよ……ここ……」
孝太郎は身震いを一つしながら歩みを進める。
――――そして、やっと着いた光のあった場所は、アーチ型の茶色いドアだった。
「ここから……だったよな」
孝太郎がドアに近付いたその時。彼の足が、何かを蹴った。それはドアの前へと転がって、ぶつかり少しの反動を受けて止まった。
「なんだ?」
彼はそれを拾いあげる。それは、片手で持てるサイズの水晶玉だった。




