気持ちと法律-3
「ハハハ! 孝太郎は真面目だなぁ!」
「真面目? 俺が?」
孝太郎は眉をひそめる。
「ああ、真面目だ。現にそういう環境の中で、孝太郎は法律を守って酒を飲まなかったんだろ? たいしたもんだ!」
「……お前に褒められると……なんかムカつく」
ぼそりと孝太郎は言う。そして、なぜかマオウは大笑いを始めた。
「なんなんだよ……」
「孝太郎は真面目だが、素直じゃないな!」
孝太郎は何も言わず、ワインを飲み干した。
「もう一杯!」
そして強い口調で、マオウにワインを要求する。
「おうおう、何杯でも飲め!」
上機嫌なマオウは孝太郎のグラスにワインを注ぎ込みながら笑う。
――――次第にビンの数は増えていき……ついに孝太郎が潰れてしまった。マオウは空になったビンとグラスを浮かせ、孝太郎を持ち上げる。
「スヴィア!」
さらに呪文を唱え、彼は宙を舞いながらゆっくりと地上へ降りて行く。ビンとグラスを浮かせ、孝太郎を脇に抱えながら彼は城の入口を開いた。そんな状態のマオウを、下でシラキが待ち受けていた。テーブルで寝ていた者達の代わりに、彼女がテーブルの席に着いている。
「いつまで経っても起きる様子がなかったからな。夜も遅いし、無理矢理起こしてオマエの言う通りに今夜は城に泊まるよう言っておいた」
シラキが言っている対象は、紛れも無く、テーブルで寝ていた者達のことだ。
「そうか、わかった。今から孝太郎を部屋に運びに行くから、これを片付けておいてくれないか?」
マオウはテーブルに空になったビンとグラスを置いた。
「こんなに飲んだのか!? オマエ、また二日酔いになっても知らないぞ」
目を丸くして、シラキが言った。
「私じゃない、ほとんど孝太郎だ。なんかよくわからんが、拗ねてしまってな。無言で酒を飲み続けて……」
「……マオウも孝太郎も、どっちもどっちだな」
シラキはため息をついた。
「ん? それはどういう……」
「早く孝太郎を部屋に連れていけ」
マオウに質問させる隙を与えずに、シラキはビンを抱えながら言った。
「シラキ? なんか怒ってるのか?」
「怒ってない。呆れてるんだ」
「呆れてる?」
マオウは首を傾げて問うが、シラキはそれを無視してビンの片付けに入った。
「なんだぁ?」
マオウは孝太郎を脇に抱えながらぽかんとして、その場に立ち尽くしている。
――――台所に向かったシラキは、独り言をぶつくさと言いながらビンを水で洗っている。
「マオウは人の気持ちを考えない所が悪い癖だ」
台所の横をマオウが通り過ぎるが、水の音でシラキの小さな声は届いていないようだ。廊下を渡りながらマオウは呟く。
「やっぱ、怒ってるのか……?」




