気持ちと法律-2
「普通の人間は神や天使、そして魔王の気配がわからない。やっぱり、特殊な存在であるか、クウサのように経験を積んでるかしないとわからないようだ」
「経験?」
孝太郎は岩の上に腰掛けた。
「そうだ! クウサは王女として育ってきた。王家と神の関わりから考えて、クウサは天使の気配を知ってると睨んだ。実際、その通りだったがな!」
「まあ……俺が初めてクウサと会った時、俺は天使に襲われていて……クウサはあの子を天使だと見破った」
「さすがクウサ。……にしても、情けないな。勇者が女の子に助けられるなんて! ハハハ!!」
「うるせぇ!!」
孝太郎は身を乗り出して怒った。
「怒るな怒るな! まあ、クウサのように優秀になれ! そうすれば、お前も立派な勇者になれる!」
「勇者……ねぇ」
孝太郎は岩の上に寝転がった。
「俺、強い勇者になれるのかな……」
空にちりばめられた星を見上げ、孝太郎は呟くように言った。その隣にマオウが座る。
「まあ、なるようになるさ!」
マオウは片手を上げ、呪文を唱える。
「アルル!」
「……呪文? 何を……?」
「言っただろ? お前と飲み交わしたいって」
すると、マオウの両手にビンと二つのグラスが飛び込んできた。
「え、どっから?」
孝太郎は起き上がり、辺りを見回す。
「あらかじめ、こいつに魔法をかけておいた。で、同じ魔法をかけた物を今引き寄せた」
「……なるほど、わかったような……」
マオウは孝太郎にグラスを渡し、ビンの栓を抜いて、赤ワインをグラスに注いでいく。
「難しいことは置いといて、まあ、飲もうじゃないか!」
マオウは手に持ったグラスを、孝太郎のグラスに当てる。
そして、ワインを一気に飲み干す。
「ハハ!! さすが、ソニア共和国産。質が違うな!」
「ソニア共和国?」
孝太郎は首を傾げた。
「ああ、このラナン王国の東にある国だ! 他にも、ここの南にはリリア王国、南東にはカガリア帝国がある」
「へー……よくわかんないけど……」
「まあ、そのうち地理的な知識は必要になるだろう! そんなことより、今は飲め!!」
「あ、ああ……」
マオウは空になった自分のグラスにワインを注ぎ足す。孝太郎はグラスに口を付けた。
「……まあ、美味い……な」
呟くように孝太郎は言う。
「なんだ、その微妙な反応は?」
マオウは眉根を寄せる。
「いや……俺、ワインの味とかよくわかんないし……。ていうか、今初めて飲んだ」
「初めて!? その歳でか!?」
マオウは驚いている。身を乗り出してまで。
「まあ……な。こっちとそっちじゃ、法律が違うんだ。俺ん所は二十歳まで酒は禁止。……それでも飲む奴はいたけど」
「ほーう……。こっちじゃあ、十四で解禁だ。二十までとか、また厳しいなぁ……」
「十四!? 早っ! ……ま、二十歳に関しては、日本は、だけどな」
「ニホン? なんだ、それは。孝太郎の国か?」
「まあな。酒やタバコに関しては、日本は他の国より厳しいかもな。法律の面だけ考えれば」
法律の面だけ? とマオウは問う。
「実際、本来止めるべき大人が黙認してたりとか、最悪勧めてたりとか、そういう面があるわけ。そういう大人に育てられた奴を俺は見てきたから、そう思ってるだけだけど」
孝太郎はじっと遠くを見つめている。その背を、マオウは叩いた。
「いって!! 何すんだよ!!」
孝太郎はマオウを睨むが、マオウは笑っている。




