気持ちと法律-1
――――晩餐は終わり、一同はメイを囲んで談笑したりカードゲームをしたりしていたが、それもつかの間。気がつけば、疲れて寝てしまっている者がほとんどの中、シラキはマオウに命じられ寝ている者達に毛布をかける。
その時、孝太郎が目を覚ました。目の前でマリアに毛布をかけようとしているシラキ。そして、自分の肩にかかった毛布。孝太郎が状況を理解するのに、それほど時間はかからなかった。
「これ……シラキが?」
「マオウに命じられてな」
「ああ、そう……」
寝起きの暗い声で孝太郎は言う。そして毛布を手に持ち、シラキが全員に毛布をかけていく様を見ていた。
「マオウは、いい奴だ。オマエは、それを理解する必要がある」
毛布をかけ終えて、シラキが言う。
「そう言われてもな……」
孝太郎は困ったような顔をする。
「やっぱり魔王だし……」
「いい加減、現実を理解しろ」
暗く強い声でシラキが言った。
「確かにマオウは魔王だ。だが、今の世の中は神は悪だ。クウサだってメイだって、あの神のせいで苦しめられた。その神をマオウは倒そうとしてるんだぞ」
「それは……そうだけど……」
「なら、なぜ、マオウのことを疑う? オマエはわかってるんだろう? 神が悪だと」
「まあ……な」
「だったら、先入観を捨てろ」
吐き捨てるように言って、シラキは廊下へと消えていった。孝太郎は頬杖をついて考えこむ。
「先入観……か」
そこへマオウが現れた。彼は小さな声で孝太郎を呼び付ける。
「なんだよ……」
「いいから、来い。お前と一度飲み交わしたかったんだ」
「……わかった」
すると、マオウの様子が少し変わった。何やら驚いているようだ。
「お前……どうした?」
向かってくる孝太郎に対してマオウは言う。
「何が?」
「いや、やけに素直じゃないか……」
「別に……ちょっと考えが変わっただけ……」
そう言って孝太郎はそっぽを向く。
「考えが変わった?」
マオウは首を傾げる。
「いいから、どっか他の所に行こうぜ。起こしてしまう前に」
「……そうだな。じゃあ、屋上にでも行くか」
「屋上? そんなものがあるのか?」
「まあな。じゃあ、行くか!」
白いマントを翻してマオウは外への階段を上がっていく。孝太郎は後を追った。
先に外に出たマオウは、いつの間にか宙に浮いていた。
「おい、予感はしてたけど……屋上って、岩の上?」
孝太郎は天を指差して言う。
「そうだ。他に何がある?」
当たり前のようにマオウは言った。
「待て待て待て!! お前っ……もしここに神や天使が来たらどうするんだよ!?」
孝太郎は必死にマオウを引きずり降ろそうとする。しかし、それに反発してマオウは上昇を始めた。
「うわっ!! な、急に飛ぶな!!」
足が宙に浮いた孝太郎は、呪文を唱える余裕もなくマオウの腕にしがみつく。
「ハハハ! 心配するな、ここには神も天使も来ない!」
「……どういう事だよ」
マオウは沢山あるキノコ岩の中から、適当な所を選んで着地した。孝太郎も体制を崩しながらも岩の上に立つ。
「こんな所に魔王がいるなんて、誰も思わないだろう。違うか?」
「そりゃ……違わないけど……」
「それに、私は生まれてこの方民衆の前に姿を現したことがない。つまりは、気配を感じ取れる者でないと私が魔王だとわからないだろう。もちろん、神や天使も私の気配を知らない」
人差し指を突き立ててマオウは言う。
「気配、ねぇ……。俺はさっぱりわからないけどな」




