魔王と元王女-1
――――夕方、ルーナは出かける支度をしていた。
「寝過ぎた……。早くマオウの所に行かないと……」
いつも着ている緑のローブを纏い、ルーナは家のドアを開けた。
「もうすっかり夕方だなぁ……」
空の向こうに消える真っ赤な夕焼けを見てルーナは呟く。
小さな一軒家の鍵を掛けて、ルーナは夕焼けの空へと飛び立った。――――彼がマオウの城に着く頃には、日はほとんど沈んでいた。
ルーナは五回扉を叩いて、自分の名前を言う。しばらくしてシラキが出迎えた。
「遅かったな」
「ごめん、いろいろとあってね」
「マリアから大体聞いた。まあ、入れ。メイが起きた」
「メイ?」
ルーナは首を傾げる。
「あの少女だ」
シラキはルーナを招き入れて、メイについて話す。
「奴隷の子か……。しかも側室になる前に魔力を抜かれたとなると……神は……メイ? が緑の魔法使いだと疑ったわけかな……?」
「さぁな。はっきりしたコトはわからん」
ここで階段を下りきり、見えたのは、四つ向かい合わせに置かれたソファーに座って、二人が来るのを待っていたマオウ達だ。
「やっと来たか!」
マオウは言う。
「紹介しよう、メイ・サラウッドだ」
マオウは立ち上がり、向かい側のソファーに座っていたメイの手をとって立たせた。
「はじめまして、メイ・サラウッドです」
メイはルーナに頭を下げる。
「僕はマシュリク・ルーナ。僕の場合、名字がマシュリク。よろしく」
ルーナは彼の大人しい性格に合った微笑みを見せる。
「こちらこそ。……あ、あと! 助けて下さってありがとうございます!!」
頬を赤くしてメイは言う。そんな彼女の様子を見て、マリアが微笑む。
「どうかしたの?」
隣にいたクウサが問う。
「なんか可愛いなって思って」
楽しそうにマリアは言う。
「まあ……十六歳にしては子供みたいな顔してるわよね」
「そういうことじゃなくて」
相変わらず、マリアは微笑んでいる。
「さて、全員集まったことだし、メイの歓迎会でもするか!」
マオウが大きく両手を広げた。
「今日は私が腕によりを掛けて作った料理を持て成そう!」
その瞬間、シラキとクウサ以外の全員の顔が強張った。マオウはすでに台所へと向かっていたため、彼らの様子に気付いていない。
「みんな、どうかした?」
不思議そうにクウサは問う。
「どうかしたってお前……いくら善と言われてるとはいえ、あいつは魔王だ。それにあの性格からも考えて、いろいろと不安になるだろ……」
青ざめた顔をして孝太郎が言う。ルーナとマリア、そしてメイもそれに頷く。特に、後半部分で。
「何を言ってる。マオウのメシは最高に美味いんだぞ」
自信満々にシラキが言う。
「そうよ。まあ……私も初めて料理を出された時は不安だったけど……けど、マオウは悪い人じゃないんだから変なものは作らないわ」
平然としてクウサも言う。
「だからって……やっぱ、あの性格からしてさ……――――あー、もういいや」
孝太郎は頭を抱えてうずくまった。
「とにかく、安心しなさいよ。変なものは出ないから」
クウサは、不安がっている孝太郎達に言い聞かせる。
「それとルーナ。いつまで突っ立ってるの? そこ、座ったらどう?」
クウサはルーナに、向かい側に座る孝太郎の隣に座るよう促した。
「あ、ああ……」
その後、しばらく経ってもマオウは姿を現さなかった。調理中なのかもしれない。しかし、それが彼らの不安を大きくしていく。静寂だけが、延々と続く。
「そ、そうだ!」




