メイの正体-1
休憩も終わり、ティーセットの後片付けを終え、マリアとクウサは家を出た。そして、ロザリオで空を飛べるかを早速試すことにした。
「どうすれば飛べるのかしら?」
首からロザリオをぶら下げてマリアが言う。
「しまったわ……使い方を聞いてくるのを忘れてた」
クウサはその事実にたった今気付いたのか、両手で顔を覆った。
「あー……」
「ク、クウサ! 大丈夫よ! きっとなんとかなるわ! 例えばこの薔薇の部分を押すとか!」
適当に思い付いた言い訳をマリアは慌てて言った。そして、十字の交わる部分に付いた薔薇のモチーフを押す。
「え、うそ!?」
刹那、マリアは驚きの表情を見せた。マリアに背を向け後悔しているクウサが何事かと後ろを振り向くと――――。
「――――浮いた!」
マリアが声をあげた。クウサも目を丸くして驚いている。クウサの頭上に、マリアが浮いていた。マリアの白いロングスカートがばたばたと音を起てている。
「わ、私……浮いてる!!」
マリアはどこか嬉しそうな顔を見せた。
「降りるときはまたここを押せばいいのかな?」
マリアは再び薔薇のモチーフを押した。――――すると、急に彼女に重力がかかり、地面へと急落下していった。
「マリア!!」
それに気付いたクウサが慌ててマリアを抱き止める。――間一髪だった。
「あ、危なかった……」
クウサは額に汗を浮かべて言った。
「ほんと……。ごめんなさいね」
マリアは頬が赤くなるくらいに驚いていた。
「とりあえず、飛び方はわかったし、マオウの所へ行きましょ」
マリアを降ろしながらクウサは言う。
「そうね。間違えて薔薇の部分を押さないように気をつけなくっちゃ」
マリアは再び薔薇を押した。
「クウサ、行きましょ!」
空からマリアが声をかける。
「ええ。サーバス!」
クウサはマリアに並び、二人はマオウの城を目指した。
「すごい! 私、飛んでる!!」
嬉しそうにマリアはクウサに言う。
「ルーナに感謝しなくっちゃ!」
よっぽど嬉しいのか、マリアはどんどん先を進んで行く。
「あ、待ってよ!」
クウサは彼女の後を追いかける。
――――その頃、マオウの城では買い出しを命じられた孝太郎が帰ってきていた。入口からすぐの部屋。机には紙袋二つにたっぷりつまった野菜。
「あー……なんで俺が……!」
疲れ切った孝太郎は気だるそうに文句を吐きながらソファーに寝転がった。
「いいじゃないか! シラキはメイの部屋を作るために片付けに忙しいし、私は魔王だ。いくら食料が無くなったからと言って、呑気に買い物なんかできないだろう」
そしてマオウはお決まりの笑いを見せる。
「あっそ……で、さ。一つ質問」
寝転がりながら孝太郎は問う。
「あの、メイって、ここに住まわせるのか?」
「まあな。神の城から抜け出した後だ。今はここにいた方が安全だろう」
マオウは紙袋を二つ持ち上げた。そしてそれを台所に持って行く。孝太郎はその背中を黙って見ていた。
「別の意味で心配だがな……」
孝太郎は呟いた。
「シラキがいるから何とかなる……かな…………やっぱ不安だ」
彼はむくりと起き上がる。
「メイがマオウのおかしさに慣れてしまうのが一番危険だ……」
孝太郎は額に手を当て、再び寝転がる。
その時、玄関へ向かう階段の方から何かを叩く音が聞こえた。音は五回鳴り、聞き覚えのある声がした。
「クウサよ。開けてちょうだい」
しかし、マオウもシラキも出てくる様子はない。




