奴隷少女-4
「あの……もしかして、迷惑……でしたか?」
不安そうな顔をしてメイは言う。そんなことない、と孝太郎は必死に弁解した。
「そうじゃなくて……俺……まだ、自分が勇者だって……神を倒す存在だって自覚がなくて……」
「そうなんですか? 勇敢な方に見えたから、神との闘いに意気込んでいるのかとばかり……」
「まあ、神は倒すけどね。倒さなきゃいけないんだけどね……」
孝太郎の声が段々と小さくなっていく。彼の本来の目的は、神を倒し元の世界に帰ること。だが今、その思いを不安と人情が邪魔をする。――――神を倒せなければ自分は死んでしまうかもしれない。だが、倒したらこの世界の人とは別れることになる。まだ出会ってから日が短いとはいえ、これからも付き合っていくと考えると、不思議と人情が邪魔をするものだ。
「どうか……されましたか?」
メイが首をかしげる。
「いいや、別に。えっと……メイ、いろいろと教えてほしいことがある。いいか?」
「はい、なんでしょう?」
孝太郎はなぜ奴隷として働いていたのか、また、なぜ魔力を抜かれていたのかを問う。
「はい……少し、長くなりますが……」
メイは話しはじめた。彼女は神の側室となった者が神によって連れ去られる前に生まれた子で、当時五歳だった彼女は神の奴隷となった。父親は、側室となったメイの母親を取り返そうとして殺された。こういう、母親が側室になり、父親が刃向かった結果、奴隷の身分におとしいれられた子供は少なくないらしい。神は気に入った女は次々と側室に迎え入れるのだった。
「まるで暴君だな……」
孝太郎は呟いた。
「まあ、ある意味ネレシアはこの世界の王だ。本来なら人間の行動を見守ったり、天罰を与えるのが仕事なんだがな……」
隣でマオウが言った。欲望にまみれた今の最高神とは違い、それが神という存在の本来の姿なのだと。
メイは話を続けた。次に、彼女が魔力を抜かれていた理由についてだ。彼女の両親は魔法使いだ。彼女にも、その魔力は受け継がれていた。しかし、彼女の魔力は強大だった。両親をもしのぐ魔力を歳を重ねるごとに付けていった。ネレシア神に魔力を悟られないように。
しかし現実は非情だった。ある日、ネレシアは新しい側室にメイを選んだ。偶然見かけた奴隷少女を気に入り、側室にしようとしたのだ。
神の部屋に呼ばれたメイ。そして、告げられた側室という新しい身分。逆らえば、父親のように殺されてしまう――――そう思い、彼女は逆らえなかった。しかし、ネレシアが彼女に触れた瞬間。彼女の魔力が悟られた。強い魔力を感じたネレシアは、メイを側室に迎える前に魔力を抜き取ろうとしていたのだ。
「そういう事か……。しかし神のやつ……こんな子供を側室にしようとするとはな」
孝太郎は呆れたように言った。
「どこまで色欲に溺れりゃ気が済むんだ?」
「ちょ、ちょっと待ってください!!」
突然、メイは叫んだ。何事かと孝太郎は目を丸くする。
「私……もしかして、相当幼く見られてます?」
「え、いや……俺は十代になったばっかかと思ってたんだけど……」
メイは孝太郎の目を直視して言った。
「私、十六歳です!」
「え?」
「ついでだから言っておこう」
ここにシラキが口を挟んだ。
「オマエ……その様子じゃ気付いてないだろうが、ワタシは二十だ」
「ええ!?」
孝太郎は目を丸くしてメイとシラキを交互に見た。
「み、見えねぇ! メイはまあ、童顔程度で済むけど……シラキ! お前は絶対冗談だろ!」
孝太郎はかなり困惑しているようだ。そんな彼の様子を見て、マオウが盛大に笑い始めた。




