奴隷少女-3
――――翌日、孝太郎はマオウの元へ向かった。クローゼットに青い服しか入っていなかったので、青い服を着て。
扉を五回叩いて名前を言うと、しばらくしてシラキが出迎えた。
「孝太郎か。まあ、とりあえず入れ」
「あの子は?」
「居る。さっさと入れ」
シラキはやけに孝太郎を急かしている。心なしか表情も固い。マオウの部屋へと下りる階段を下りる最中、孝太郎は尋ねてみた。
「どうした? 何かあったのか?」
シラキは少し黙り込んだ後、こう答えた。
「…………あの少女は目覚めた。けど、魔力をほとんど抜かれていた」
シラキいわく、少女は夜中に目を覚ましたらしい。彼女はここが魔王の城で、助けたのは勇者だと聞かされ驚いていたが、一晩魔法で寝かせ付けて少し冷静になったようだ。彼女はマオウとシラキに自分の境遇と魔力について話した。が、詳しいことは自分を助けた勇者が来てから言いたいということで、二人は孝太郎が来るのを待っていたということだ。
階段を下りきった所にある、大きな書斎のような部屋。そこでマオウが孝太郎を待ち受けていた。椅子から立ち上がり、マオウは孝太郎の元へと近寄った。
「来たか!」
「シラキから聞いた。……あの子は?」
「客間にいる」
こっちに来い、とマオウは廊下へと案内した。思えばここから先は、孝太郎にとって未知の世界だ。昨日料理がでてきた事で台所があることは確実だが、なにせここは魔王の城だ。他に何があるのか、わかったものではない。
進んで行くと暗くて長い廊下。時々十字路があったりと、かなり複雑な作りになっているようだ。
「おい……これ、いつになったら着くんだよ」
「もうすぐだ」
マオウはこの地下の城を知り尽くしているためか、すいすいと右に曲がり左に曲がりと進んで行く。
「おい、なんで客間がこんなに遠いんだよ」
しびれをきらして孝太郎が問う。
「ここは元は悪だった魔王の城だ。今は私が牢獄やら処刑の間を改装したんだ。ちなみに、台所は奥にあったんだが奥まで行くのが面倒だから通路の手前につけた」
「あ、そう……なら客間を手前にしろよ」
「客は丁重にもてなさないとな! お、着いたぞ」
お前の丁重の意味はわからん! と孝太郎が返すのを遮ってマオウは立ち止まった。そこは、神の城で見たような豪華な扉の前だった。
「おい、奥に客間を作るのが丁重なもてなしに繋がるのか?」
孝太郎は疑問に思いながらも、目の前に広がった光景によってその疑問は払われた。
助けた時にはボロボロの服を着ていた少女。それが今、美しい白のドレスで着飾って、ソファーに腰掛け本を読んでいる。昨日の少女とはイメージがまるっきり違っていた。
「メイ! おまちかねの勇者を連れてきた!」
マオウが少女――メイに声をかけると、彼女は即座に反応して孝太郎の元に駆け寄った。
「あなたが……勇者様ですか!?」
孝太郎は返答に困る。
「え、まあ……一応……。勇者って言われる程たいした事はできないけど……」
すると、メイは首を振った。
「いいえ……あなたは私を助けてくれました。あの時助けてもらえなかったら、私、抗うこともできずに一生ネレシア神に仕えることになっていました」
メイは深く頭を下げた。
「本当にありがとうございます! 魔力はほとんど抜かれてしまいましたが……私でお役に立てることがあるのなら、なんなりとお申し付けください!!」
「いや……あの……とりあえずさ、頭上げようか」
メイは頭をあげた。そして彼女の目に映ったのは、勇者としての扱いをうけて困惑している孝太郎の姿だった。




