奴隷少女-1
――――三人は寝たきりの少女を連れて、マオウの城まで戻ってきた。
ソファーに寝かされた少女について、マオウは問い詰めた。
「で、誰だ、この娘は」
マオウは椅子に座って足を組む。
「わからん。ただ、前回侵入したときに見た、魔力を抜き取る儀式……覚えているか?」
変身術の解けたシラキが答えた。
「……そんなこともあったな。まったく、神のすることは私の先祖より恐ろしい」
「その儀式から助け出した娘だ。力が抜かれているかはわからない……」
「そうか。……仕方ない、しばらく様子を見よう」
それより、とマオウは続けた。
「お前達、腹は減ってないか? 今、クウサとマリアが料理を作ってくれている」
と、その時、クウサとマリアがトレイに乗せた料理を運んできた。
「ちょうどいい所に帰ってきたわね」
「あら、お帰りなさい」
二人はテーブルに料理を並べ始めた。
「何か収穫はありましたか?」
穏やかな顔をして問うマリアに、孝太郎とルーナは無言でソファーに寝そべる少女を指差した。
「その子は?」
クウサが少女に近づいた。
「魔力を抜き取る儀式から助けてきた。こいつが起きないことには、こいつについては何もわからないよ」
孝太郎は肩をすくめた。
「ふーん……」
クウサは少女の顔をじっと見た。
「見たところ、十歳前後の少女って感じだけど……この子に抜き取る程の魔力があったのかしら」
「まさか緑の魔法使いってことはないよな……」
孝太郎は、思い付いた嫌な憶測を口にした。本当に緑の魔法使いなら魔力を抜き取られてしまっていては大変だからだ。
「可能性は無くないわね……。神が魔力を抜き取りたい理由がつくもの」
その時、彼らの背後からマオウの呑気な声が聞こえてきた。
「おーい? 食べないのか?」
テーブルにはマリアが並べた料理がある。マオウ、シラキ、マリアは先に席についていた。
「二人共、今の話、マオウには言っちゃ駄目よ」
クウサは小声で孝太郎とルーナに言った。
「今行くわ」
話はひとまず中断して、三人は席についた。
――――そして、孝太郎達が神の城であったことを詳しく説明しながら食事は始まった。
しかし、食事が終わり、マリアとルーナが片付けを買ってでた頃にも少女が目覚める様子はなかった。
「仕方ない、今夜はここで寝かせておこう」
マオウは少女の体に毛布をかけた。
「にしても……この娘に抜き取るほどの魔力があったのか?」
マオウの何気ない一言に、孝太郎とクウサは目を合わせた。
「まあ……なんにせよ、魔力の抜き取りが失敗していればいいがな」
「そ、そうね……」
クウサは相槌を打ったが、まったくその通りである。彼女が緑の魔法使いならば。
――――結局、一同解散となった頃にも少女は起きなかった。今夜はシラキが彼女のそばにいることにするらしい。
「じゃあ、よろしく頼んだ。……かなり不安だけど」
最後に本音を口にして、孝太郎は空へと飛び立った。
「あはははは! 心配するな! シラキがついていてくれる!」
大きな声で笑いながら、マオウは飛び立つ孝太郎達に手を振った。
「そういう事じゃなくて……」
彼の心配事は、あの変人魔王が何かやらかさないか、という点である。孝太郎は額に手を当てた。
時間はすっかり深夜となってしまっていた。クウサがマリアを抱き抱え、一同は帰路に着く。
「今度、何か空を飛ぶ乗り物を作ろうか?」
クウサとマリアに向けてルーナが言った。
「これからマオウの城に行くとき、毎回毎回クウサが抱き抱えるのも大変だし」




