進入-2
「おい!? ……とにかく、首輪を外さないと」
孝太郎は鍵を探した。しかし、鍵らしき物はどこにも見当たらない。シラキとルーナも一緒になって探している。
「あった!」
どうやらルーナが鍵を見つけたようだ。兵士の首にぶら下がっていた。ルーナが首輪を外し、孝太郎は少女を抱きかかえた。
「逃げるぞ!」
シラキが扉を開けた。真っ暗な階段を、シラキの指先から出る灯のみを頼りに彼らは駆け降りた。
外に出ようとドアを開けると、外から声がした。
「またカラスか。今月入って何回目だ?」
「さっさと始末して戻ろうぜ。もう日暮れだ」
「そうだなぁ。今日の飯、なんだっけ?」
などと会話が繰り返され、やがて声は小さくなっていった。
声が完全に聞こえなくなると同時に、彼らは外へ飛び出した。少女の黄緑色の髪が光る。
「もうすっかり夕方だね……。早く城の中を嗅ぎ回らないとだけど、その子……」
ルーナは少女をちらりと見た。
「しかたない、ルーナ、ここでこの娘を見ていろ。孝太郎はワタシと一緒に城に入るぞ」
「え!?」
「はぁ!?」
「もし危険を感じたら先にここから逃げ出せ! 孝太郎、行くぞ!」
シラキは少女をルーナの元に押し付け、孝太郎の腕をひっぱって城へ走り出した。
「フードはしっかりと被っておけ!」
シラキは孝太郎のフードをひっぱった。
「うあ! ひっぱりすぎだ! 前が見えねぇ!」
二人は城の中へと侵入した。なるべく人と会わないよう、人気を避けて歩いて、城の三階まで上り詰めた。
「この辺りが神々の住む場所だ。談話室に行くぞ」
二人は長い廊下の奥に見える、豪華な両開きのドアめがけて走り出した。
「おいこら!」
その時、背後から声がした。
「お前ら……外部の人間だな。……廊下は走るんじゃない」
声の主は黒髪長髪の美青年だった。
「誰に会うかは知らんが……用が済んだら早急に立ち去れ。ここはネレシアの城。騒ぎを起こそうものなら命はないぞ」
そう言って男は階段へと向かって言った。
「もう騒ぎは起こしちゃいましたがね……」
小声で孝太郎は言う。
「ルミスか……」
シラキは腕を組んだ。
「ルミス? 知り合いか?」
「アイツは月の神だ。ちなみに姉は太陽神だ」
「ふーん……」
「ほら、アイツのことなんかほっといて行くぞ」
シラキは歩きだす。
「あいつは味方に付けなくていいのか!?」
「話しても無駄だ。アイツは姉から言われなきゃ動かない」
「……シスコンかよ。残念なイケメンだな」
「だからアイツのことは放っておいて行くぞ」
シラキは取っ手に手をかけた。扉を開けると、そこにはこれぞ神に相応しいと言える、白を基調とした美しい世界が広がっていた。先程の禍々しい空間とは正反対だ。
「どちらさまで?」
シラキ達の姿を確認した一人の神が、こちらに近づいてきた。
「エステルを呼んでくれないか? シラキと言えばわかる」
「はい、わかりました。こちらでお待ちください」
その神はエステルと呼ばれた神を探しに行った。しばらくして、一人の女神が歩いてきた。長い青色の髪をなびかせた美しい女神だ。
「あなた……シラキ?」
エステルは首をかしげた。
「今は変身術を使っている」
「なるほどね。久しぶり」
「久しぶりだな」
「後ろの方は?」
「コイツか?」
シラキは孝太郎の被っているフードを剥ぎ取った。
「青の勇者の、飛騨孝太郎だ」
それまで微笑みを浮かべていたエステルは表情を一変させ、声を失った。
「青の…………!?」




